【LEAPS戦略③】プットオプションを用いた戦略
みなさん、こんにちは!いつも、こちらのnoteをご覧いただきましてありがとうございます。
前回はLEAPSコールオプションを使った取引についてご紹介させていただきました。今回は、LEAPSプットオプションを利用した取引について説明させていただきたいと思います。
1)LEAPSプット売り
まず、プットオプションを使った戦略としてすぐに思いつくのは、キャッシュ・セキュアード・プット(CSP)ですよね。こちらの講座でもおなじみの戦略です。CSPはもちろんLEAPSプットオプションでも利用が可能です。
CSPは株を購入するのに必要な現金を確保して、自分が「この株価であれば株を買ってもよいな」と考える権利行使価格で仕掛けるのが鉄則です。ただ、配当貴族銘柄なんかを見てみるとボラティリティが総じて低いため、獲得するプレミアムも少額であることも少なくありません。
LEAPSにより高いプレミアムを獲得
実際の例で確認してみましょう。現在のファイザーの株価は40.62ドルであり、35ドルの権利行使価格(13.8%OTM)でCSPを仕掛けたいと考えたとしましょう。下記が、35Pの満期毎のプレミアムになります。
当然、満期が長い方が時間的価値が大きくなりますので、プレミアムは大きくなります。権利行使に備えて35ドルの現金(実際は100倍)を準備しないといけませんので、35ドルに対しての損益率も表示しました。
年利(単利)で計算すると、満期が短いものをグルグルと廻して行った方が利益は高くなることがわかります。
ただ、注意が必要なのは、ここには証券会社の手数料が考慮されてません。実際、サクソバンク証券では、1lotの売り、買いで最低6ドル必要になりますので、1か月後の満期の0.1ドル(100倍で10ドル)をCSPして、OTMになっても4ドルしか利益ありません。
また、複数回トレードすれば、ITMになる可能性も高まるので、必ず、この年利が確保できるというものではありません。
LEAPSでCSPを仕掛ける際の注意点
LEAPSでCSPを仕掛ければ多くのプレミアムを獲得することはできますが、セータ(Θ)によるタイムディケイが小さいことは不利となります。つまり、なかなかプレミアムが減価しませんので、とても気を長く持つ必要がありますw
このくらいの気持ちでCSPを仕掛けるイメージかなと思います。すぐに、株を取得することもないし、OTMとなりプレミアムを獲得できるわけでもありませんので、かなりの長期投資になります。
また、LEAPSの特徴としては、タイムディケイが小さい他に、ベガ(V)の数値が大きいという特徴があり、これもCSPには不利になります。
例えば、2年後のPFEを35ドルでCSPしたとします。PFEはグローバル企業で、製薬業界でもトップ企業ですが、この先2年間の間に、会社が倒産するリスクはゼロではありません。倒産までいかなくても、何かの不祥事により、大きく株価が下落するリスクもあります。その場合は、2.60ドルというプレミアムを受け取ったとしても、35ドルを大きく下回る株価になっている可能性が否めません。
つまり、個別銘柄のリスクを負うことになるということです。これは、かなりのリスクなんですよね。日本でも不祥事で経営が傾いている一流企業はありますよね。
ですので、あまり長期でCSPを仕掛ける場合は、個別リスクを避けた方が賢明かもしれません。個別リスクを避ける一番の方法は、上場投資信託(ETF)を銘柄に選定することです。
例えば、サクソバンク証券では、ステートストリート社が発行している米国セクターETFのオプション取引が可能です。ETFであれば、個別銘柄のリスクは避けられますし、権利行使された場合は配当も得られるETFもありますので銘柄として検討されてもよいかなと思います。(ただ、セクターETFの場合は、業界リスクを負うことになりますが…)
2)LEAPSプット買い
プロテクティブ・プット戦略
LEAPSプット買いは、結構使い道があるのですが、一番最初に思いつくのはプロテクティブ・プットと呼ばれる戦略です。
プロテクティブ・プット戦略とは、現物株とプットオプションの買いを組合わせることにより、原資産の下落による損失を限定する戦略になります。
実際の例を用いて説明してみましょう。今、ある株を取得価格40ドルで100株を所有しているとします。
ここで、プットオプションを買ってみましょう。取得価格より10ドルした権利行使価格30ドルのプット(30P)のプレミアムが5ドルで売買されておりましたので、こちらを買ってみましょう。
現物株と30P買いのグラフを合成すると、下記のようなグラフ(青線)となります。
このグラフのとおり、現物株だけでは最大で40ドルの損失(株価0ドル)の可能性があったのですが、30Pを購入することにより、最大損失を15ドルまで改善することができました。これがプロテクティブ・プット戦略になります。
最大損失額は下記の公式により計算することが可能です。
今回の例では、40ドル(現物株の取得価格)-30ドル(権利行使価格)-5ドル(プレミアム)で▲15ドルとなります。要するに、プット買いの権利行使価格までの下落のリスクを負う(そのメリットの為にプレミアムを支払う)ということです。
プロテクティブ・プットのポイントとしては、カバード・コール同様に、現物株100株に対して、プットオプション1枚(100株相当)のように数量を合わせておく必要があります。
プロテクティブ・プットはLEAPSオプションを使用せずとも利用可能ですが、LEAPSプットを利用することにより、長期において現物株のヘッジが可能となるわけです。
ただし、LEAPSを利用した場合、当然、プレミアム価格は高くなります。つまり、下落のための保険料(プレミアム)が高くなるデメリットがあります。
このLEAPSプットの支払いを軽減する方法は色々と考えられますが、一番簡単なのは、この現物株のコールを売ることです。つまり、カバード・コール戦略を取ることになります。要するに、LEAPSプット買いに必要なプレミアムをLEAPSコールを売ったプレミアムで補うわけです。このような取引をカラー取引と呼んでます。
カバード・プット戦略
カバード・コールは現物株買いにコール売りを組合わせる戦略でした。反対に、株の売りにプットの売りを組合わせる戦略をカバード・プット戦略と呼びます。
現状(2023年3月)において、米国株オプション取引を国内証券会社で行うためには、サクソバンク証券しか利用できない状況です。また、サクソバンク証券は現物株の売りのポジションを所有できない仕様となっておりますので、現状ではカバード・プット戦略を利用することはできません。
そこで、LEAPSを利用するわけです。DITMのLEAPSロング・コールを買うことにより、疑似的な現物株を作る方法について説明をしました。それであれば、DITMのLEAPSロング・プットを利用すれば、疑似的な株の売りポジションを作ることは可能ではないでしょうか?
そして、LEAPSロング・プットよりさらにOTMのプット売りを組合わせることにより、疑似的なカバード・プット戦略を取ることが可能となるわけです。
カバード・コールもカバード・プットも本質的な意味は同じ(効果が反対)であるので、今回、詳細については説明しませんが、カバード・プットを持つメリットについて説明しておきますね。
カバード・コールの本質は「現物株の上昇益(の一部)をあきらめることにより、ある程度の下落をヘッジする」というものでした。ある程度とは、コール売りにより獲得したプレミアムの価格分ということになります。つまり、完全に下落をヘッジできるわけではないのです。
その為、2022年の米国市場のような、1年間を通じて、ずっと下落をするような相場ではある程度の下落はヘッジできても、結果として資産を減らすリスクが大きくなるわけです。
もちろん、現物株だけを所有しているケースに比べれば、カバード・コールの方が損失は小さくなるのですが、それでも下落には弱いのがカバード・コールのデメリットになります。
一方、カバード・プットの本質は、カバード・コールと完全に逆になりますので、カバード・コールのデメリットをカバーできるわけです。要するに、建玉内にカバード・コールとカバード・プットを持つことで、それぞれの弱みを相殺することができるわけです。(まあ、強みも相殺されるわけですが…)
3)まとめ
今回はLEAPSプットオプションを使った戦略についてご紹介しました。CSP、ヘッジとしても使えるので、ぜひ、皆さんも、色々と検討してみてくださいね。
今回は3回に分けて、LEAPS戦略について説明させていただきました。私も実際、資金効率が高いことからよくLEAPSを利用しております。ぜひ、皆さんも色々な利用方法を検討していただければと思います。
本日も最後まで御覧いただきましてありがとうございました。次回の記事も御覧いただければ幸いでございます!
ありがとうございました!