ドラえもんクイズ(短編小説)
「ドラえもんの最終回って知ってる?」
「あれでしょ。ドラえもんを開発したのが実はのび太だったってやつ。」
「それデマだよ。本当はさ、のび太がアリを奴隷にしようとして大騒動になるって話なんだけど…。」
「それのどこが最終回?」
「作者はまだ終わらせる気がなかったって事さ。ドラえもんをね。」
「なるほど。死ぬまで描いてたから、最終回なんてないって事か。」
「…。」
「…。」
「ドラえもんの助けがいるのは、のび太じゃなくて俺たちじゃないか?」
「間違いないね。」
無人島に流れつく、なんて発想は子供の頃の俺にはなかった。ドラえもんでのび太が無人島に家出する話を見て、無人島って何?と母親に聞いた記憶がある。そんな人間が無人島に居ていいのか?そんな訳がない。けど、実際いるんだから仕方がない。
「あの船、あんなにあっさり沈むなんてな。」
「高い金払って参加したクルーズだったのに。まあ命があるだけマシだけど。」
俺ともう1人の漂流者、ヤマネは暇を塗り潰すようにずっと話していた。沈黙に身を委ねると、不安に飲み込まれていくような感覚に襲われる。
ヤマネはそんな俺に気を遣って、いつも話題を提供してくれた。俺たちはどんなくだらない話題でも、壊れたスピーカーのように話し続けた。幸い、湧き水が近くでとれたので、喉が渇く心配はなかった。
「今1番欲しいドラえもんの道具は?」
「この状況でどこでもドア以外を挙げる奴がいたらお目にかかりたいね。」
「それもそうか。…じゃあ2番目は?」」
「んー、グルメテーブルかけ。」
「いいね。何が食べたい?」
「あっつあつのラーメン。」
「最高。何ラーメン?」
「醤油豚骨。ニンニクがたっぷり入ったやつ。」
「ライスは?」
「もちろん欲しいね。大盛りで。」
俺はヤマネと喋る事で気を紛らわせていた。ああ、早く助けが来ないものか。
…。
「全銀河の皆様、お待たせいたしました!本日もタイムワープクイズのお時間がやってきました!本日のクイズは、無人島に漂流した地球人クイズ!それでは特派員のヤマネを呼びましょう!ヤマネ!ヤマネ!」
「はい!ヤマネです!無人島に来ていただいたのはいわゆる普通の地球人!今日のクイズテーマは銀河中に愛されている物語、ドラえもんです!私の誘導で質問に答えていただき、クイズを作成しますのでよろしく!」
「地球人が作った最高傑作!そんなドラえもんにまつわる、無人島に漂流した地球人クイズ!
第一問!地球人がこの状況で1番欲しいドラえもんの道具はどこでもドアですが、2番目は何?①タケコプター②タイムマシン③ころばし屋④グルメテーブルかけ さあどれ?」
「うーん、難しいなあ…。」
「ゲスト回答者の皆さん、頑張って!さあそろそろシンキングタイムも終わりだぞ!果たしてどうなる!続きはCMの後で!
「…はい、CM入ります!」
「ADさんありがとうございます。一点お願いなんですけど、今ヤマネに繋いでもらっていいですか?」
「ああ、はい。どうぞ。」
「あ?ヤマネ?クイズ、いい感じだったよ。これからも地球人相手によろしくね。」
「もちろんですよ。この地球人の老人ホームクイズを作るまで、僕はこの地球人を追い続けますよ!」
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