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[ひとことお題]#5 風

かぜ【風】
空気の流れ。気流。特に、肌で感じるもの。
                                                          広辞苑より

風は日々の生活に密接してる。それは風向きによって感じる気温が変わってくるという影響だけでなく、風景の見え方や思い出にも関わってくる存在だと思う。

風は場所や季節によって表情を変える。

潮風が好きだ。
苦手な人も多いだろうが、あの潮の独特のもったりと重たい風は基本的に浜辺でしか感じることができない。私は海が好きなのでその風を感じると嬉しい気持ちになる。

秋口の夜に吹く涼しい風が好きだ。
部屋の電気を消し、窓を開けて風を感じる。そうやってゆったりと過ごす時間はリラックスができてとても心地がよい。

強風は苦手だ。
吹けば髪が乱れるし、スカートをはいていたら押さえなければならないし。目に砂なども入りやすくなるし。向かい風で吹けばそれを逆らいながら進むのは大変だ。

なぜ「苦手」という表現を使うのかというと
大学生のときに嫌いとは言い切れなくなったからだ。

私は緑が多い大学に通っていた。
その日は新緑が綺麗な春と夏の境目で、
外では風が強く吹いていた。
授業では教養の必須科目で特に興味のない内容が繰り広げられ、
私は集中する気も起きずに窓の外の強風に揺られるたくさんの木々をぼうっと眺めていた。

そのときに私の頭のなかにジブリ映画の「となりのトトロ」にでてくるネコバスが思い浮かんだのだ。
ネコバスが通るとその場には風が吹く。
年齢的には大人になりかけている自分にはきっとネコバスは見えないはず。
「ああ、もしかしたらネコバスがそこを通っているのかもしれない。」と思った瞬間、
こういう日も案外悪くないかもしれないなと思った。

そのまま強風揺られ続ける木を眺めていると、ふと疑問がわく。
長い時間、強風が吹いているときは、
大きなネコバスが一匹通っているのか、
もしくは、
小さいネコバスが群れとなって通っているのか、
ということだ。
あるいは大きなネコバスと小さなネコバスの両方ともが通っているのかもしれない。

なんてどうでもいいこと考えているんだろうなと嘲笑しつつ、授業に耳を傾ける。
こころなしか気持ちが明るくなった気がした。

私はその想像が結構お気に入りでそれ以来、強風が吹くと「ああ、ネコバスかなぁ」と空を見上げている。

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