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シュガーベビー
「海砂糖……って、ママ、これなぁに?」
押入れの奥深くに眠らせていた学生時代の思い出箱を娘が見つけてしまった!
「おおっ、懐かしな」
あぁ、パパまでやってきてしまった。ふたりが映画を見に行く日曜日をねらって断捨離しようと始めたのに、これは終わりそうにない。
高校時代(正確には2年から。3年進級時にクラス替えナシ)私は「海砂糖」と呼ばれていた。ウチのクラスには漢字は違うが「サトウ」という生徒が5人もいた。クラスの6分の1が「サトウ」担任は「甘利」なので「学校で一番あまいクラス」と言われていたらしい。
同じ名前の女の子はいなかった。普通に名前で呼んでくれればよかったのに、学校の近くに『海砂糖』というかわった店名のパン屋さんが出来たのがきっかけだった。平仮名で書くとか「うみさとう」。一番人気はサンドイッチ。
奥さまの「みさと」さんと一緒にいられて「う」れしい気持ちを、ぎゅうぎゅうにはさみ込んでるのね♡ なんて素敵♡♡ それが具材のボリュームにあらわれているわよね♡♡♡
当時の文芸部の部長がそんなことを言ったとか言わないとか………その結果、奥さまと同じ名前「美里」の私は「海砂糖」と呼ばれることに。
「あ! パパと同級生だったんだよね? 同じクラスだった?」
そうなのだ。同じクラスで、パパの名前は「佐東理人」。「まさと」ではなく「リヒター」とカッコよく呼ばれていた彼は「山砂糖」になり、高3の文化祭では漫才をさせられることに……その時に着ていたのが、娘が手にしている胸に大きく「海砂糖」とプリントされたTシャツなのだ。
「ヤダ、パパったら〜!」
娘の声に振り向くといつの間にか「山砂糖」のTシャツを着たパパが……当時と違いピチピチなんだけど。
パパのお腹をツンツンしながら娘が言った。
「ママは結婚してもサトウなんだね」
うっ! 今の幼稚園児はそんなことにすぐ気がつくのか。そうなのだ。佐藤から佐東に漢字がかわっただけ。「人生、砂糖漬け!」って漫才した時に言った気がするけど、その通りかも。でもね。
「ダブルサトウから生まれたあなたは文字通りシュガーベビーなのよ」
一緒にしまっておいた大好きな漫画をニッコリ笑って娘に手渡した。
(終)
シロクマ文芸部さまの『海砂糖』に参加させていただきました🥸
『シュガーベビー』はとてもカワイイ漫画です〜懐かしい🥰