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4才の子が教えてくれたこと

貝がら    工藤真弓

波は
高台にある神社の
鳥居の前で
とまって
戻っていった
石階段の途中には
自転車が横たわっている
子がつぶやいた
おかあさん
なみがここでとまったのは
かみさまが
なみさん
ここからは
ひとだけですよ
って
いったからじゃない?
なみ、はいるな!
っていったら
はいってたかもね

そうか
そうね
神さまも
祈ってたんだね
ていねいに向き合ってたんだ
この大いなる自然を前に
わたしたちと一緒なんだ

四才の子がみた
つなみの中には
そんな真実も
貝がらのように残されていて
わたしはもう一度
あの
あおい海をみつめたのです

2011年『詩とファンタジー』秋茜号より