ふたりは稲妻
寒北斗 可憐な乙女 雷神に 恵雲
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「セーターを脱ぐ時ってバチバチ言うよな」
静電気がバチバチして痛い季節。自分から脱いでも彼に脱がされでもバチバチ、バチバチ。
あたしたちはコレを「アリスごっこ」と呼んでいる。
ウサギが出てくるあのアリスじゃない。あたしたちの親世代ならきっと知っている歌とそのグループからキミがつけた。
昔の人は雷が稲を実らせるんだと思っていた…だから「稲の妻」「稲妻」って名前になったんだって……意識を飛ばされないように授業で習ったことをバカみたいに繰り返してみるけど、キミの身体の重みと熱さに結局はバラバラになってしまう。
キミの背中にまわした両手はいつの間にかはずされていて、キミの大きな手に押さえつけられて、そして指を絡ませてくるから、あたしもギュッ!と握り返す。
あたしの名前を呼ぶ声、「かわいい」「大好き」 の囁き……学校ではそんな素振りは全く見せないで「本当にアンタたち、付き合ってるの?」ってきかれるくらいなのに……。
でも「さみぃ~!!」と言って「もう仕方ないなぁ、よし、腕組んであたためてあげよう」とあたしにベタベタするのを許してくれる。そういう時はちょっと耳が赤くなっていたりする。
普通に歩いていても歩幅をあわせてくれて、ひとりだけ先に行かない。
自転車のふたり乗りはしないし、遅刻はたまにするけど休んだりしない。へんなところは真面目。
降水確率30%だと折りたたみ傘を持ってきて、一緒の傘に入ったら必ず自分の肩に雨粒をおとしてる。他にもたくさんあるけど……どれもこれも、あたしだけが知っていたら良いことだから、親友にだって教えてあげない。
今だって、どんなキミの言葉も息づかいも稲妻になってあたしを駆け抜けていく。何度も 何度も。
「雷が鳴ってるね」
「春にも雷は鳴るよ……春雷って言うの」
自分の名前が入っていることに気がついたのか、駿 は笑った。
冬が過ぎて春が来て卒業しても……ずっとふたりは稲妻。
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お読みいただきありがとうございますm(_ _)m
季節がズレていますが、フキノトウの素敵なイラストを拝見したのと、前の記事でカミナリさまのことを書いたこともあり……ふきのとうの歌を思い出したので、以前某サイトに書いたものを少し手直ししました(‾.‾“)
【春雷】
https://www.uta-net.com/song/11540/