見出し画像

私のソウルメイトへ

夫に「同窓会、やっぱり欠席するの?」ときかれた。

同窓会の出欠連絡の〆切日が近づいている。
夫はすでに出席する旨を伝えているようだが、娘を一人残して夫と二人で出かけることに気がすすまないので、私は欠席するつもりだった。
同窓会へ行くより、娘と二人で何か美味しいものでも食べに行きたいな。
娘もお友達と遊ぶことがだんだん多くなって、私とはなかなか出かけてくれなくなるだろうから、今のうちにいっぱい遊んでおきたい。
そう言ったら、夫と娘に「そんなことはない。いくつになっても二人で遊んでる」と言われました。えー、そうかなぁ。

「本当に行かないの?」と夫。
同窓会で夫は講演するのだ。忘れていた(笑)
う~ん、ここは夫の凛々しい姿を見ておくべきだろうか。
ちなみに娘は「どっちでもいいよ。ママの好きにしなよ」とのこと。
もうどっちが大人かわからん。

キョウは出席するのかなと思ってlineする。
「出席するよ」と返信がきた。

「私は欠席しようと思うの」
「そうか。でも、あれだな。前にレーザーでシミをとった話をしたけど、とったところ以外にもシミがあるから、会って『レーザーって効果ないのかな』って思われたら施術者たちに申し訳ないしな」

あら、不思議。なぜか会いたくなってきた。
別にシミのあるキョウの顔が見たくなったわけではなく、その物言いに昔のことがいろいろ思い出されてすごく懐かしくなったのだ。
キョウは本当に変わらないね。

昔、新入生の自己紹介表で「特技」の欄に「折る」と書いている子がいた。

「折る……?」と首を傾げる私。
「『祈る』を書き間違えたんじゃない?」とキョウ。

祈る……。そうか、なるほど。
いやいや、やっぱりわからん。

首を傾げたままの私に、キョウは「この人、ミッション系の高校出身みたいだし」と出身校の欄を指差す。
あのときのキョウの面白がってる顔は、今も覚えてる。
キョウが私のことを「天然」と言うのは、昔から彼の冗談をいつもまともに受けとっていたからかもしれない。

その子の特技は「折り紙」だった。
そしてキョウもまた折り紙の達人だということを、私は後々になって知る。
ある日、大学のグラウンドで彼らが屈んで砂に何かを書きながらあーだこーだと話しているのを見かけた。
「この形を作るためにどう折ればいいか」と、砂の上に木の枝で折り線を書いているのを見て、それまで折り紙は子供の遊びだと思っていたけれど、実は数学、幾何学の世界なのだと気がついた。

キョウは昔からとても優しい。
その優しさは、例えば悩みを打ち明けたときなどに大半の人が示す「元気出して」とか「何でも相談して」という類の優しさではない。
知的で、斜めからで、ちょっとニヒル。
だから優しくされていることに最初は気がつかないこともある。後々になって「あっ、キョウに助けられたな」って気がつく。

先日、noteでトラブルがあって落ち込んでいる私に「中二譚の話を一つしようか」とキョウが提案してくれた。
「中ニ譚」というのは、彼の中学時代のエピソードで本当か嘘かわからないけど小説みたいに面白い。でもキョウを知ってる私は、その話にいつも彼らしさを見つける。
普段は「痛い話だから」となかなかしてくれないけど、私が落ち込んだときは、そんな話で私を何度も笑わせる。
これが彼流の慰め方なのだ。

先日、キョウが久々に小説を書いたらしく読ませてもらった。
難解で、いかにも理系の人が書いたと思わせるような純文なのかSFなのかジャンルに悩むような小説だった。
他の読者さんから「理解力を試されてるみたいで心理的安全性が低い」と感想をもらったようだが……そうね、キョウは頭がよすぎるのよ。
でも、私は彼のいい意味でペダンチックな文体がたまらなく好きだ。

普段、私は自分が女性であることが嬉しいと思っている人間だが、彼と話しているとき何度か「男だったらよかったな」と思ったことがある。
男になって、もっと頑張って勉強してエリートになって、彼のマニアックな話に付き合って、彼と一緒に仕事ができるような助けることができるような人になりたかったな、彼の仲間になりたかったな、と思うのだ。

そんなふうに思った男性は、後にも先にもキョウだけだ。

仲間になるのに男も女も関係ないのに、どうしてそんなことを考えてしまうのか、今もよくわからない。
キョウの彼女になりたいと思ったことはないのに、不思議だなと思う。

でも、それってキョウがすごい魅力の持ち主ってことなんじゃないかと思うのだ。
でも彼は、きっとそんな自分の魅力に気がついていない。