親同士が決めた許嫁
私のママ友の一人、Aちゃんには同い年の従兄がいる。
お互いの母親が姉妹で近所に住んでいたこともあり、小さなころからよく行き来していて、今も仲がいい。
昔から、Aちゃんはとてもケーキが好きだった。今も大好きだ。
先日、Aちゃんが大学時代、自分のささやかな野望を叶えたときの話をしてくれた。
Aちゃんのささやかな野望。それは。
「ケーキしか食べない一日を作りたい」
彼女は従兄さんを誘い、神戸で朝から晩まで三食ケーキだけを食べるというなにかの罰ゲームみたいなデートに誘った。
こんな変なデートのお誘いにのってくれる従兄さんは、Aちゃんがとても好きなんだと思う。
ところが。
「あの子、駄目なのよ。朝のケーキにはつき合ってくれたんだけれど、昼は『勘弁して』って、サンドウィッチなんか食べてるの」
いやいや、サンドウィッチを食べながらも、あなたがケーキを食べるのには最後までつき合ってくれてたんでしょ?すごいと思う。
私だったらケーキはもう見たくないって途中で帰ってるわ。
友人たちの話を聞いていると、男性は好きな女性のためなら何でもするんだな、と思う。
例えば、予定を合わせるのも、どんなに忙しかろうと好きな子のためなら「いつでもいいよ」と言って無理やり時間を作って合わせてくる。忙しいことを隠して、少しでも会おうとしてくる。
三食ケーキなんて無茶苦茶なデートプランにも「面白そうだね」とつき合ってしまう。
涙ぐましい。
さて、そんなAちゃんと従兄さんだが、学生時代に従兄さんから面白い提案をされたらしい。それは。
「お互い30歳のとき独身だったら結婚しよう」
従兄さん、Aちゃんが好きなんだね(笑)
でも、従兄って恋愛において難しい立ち位置よね。小さい時からずっと仲がよかったから、Aちゃんが全く彼の気持ちに気がついていない様子なのも気の毒だ。
キョウが私のことを「美人の天然は最強だな」と言っていたことがある。
あのときは「私は美人でも天然でもないわよ」と笑い飛ばしたが、今はキョウの言葉がよくわかる。
Aちゃんは最強だ。
大学卒業後、他の男性とAちゃんはあっさり結婚してしまった。ちなみにその二年後に従兄さんも結婚したらしい。
その話を聞いたとき、ふとAちゃんは従兄さんと結婚してもよかったんじゃないかと思った。
少なくとも、彼女が今抱えている家族の悩みは、従兄さんと結婚していればなかったものだろう。逆に、従兄さんと結婚したことで想像もしていなかった問題が発生する可能性もあるけど、結婚においてAちゃんが最も重要だと考えている「結婚相手のバック(その人の家族)」については、従兄さんは軽々とクリアしている。
親同士が懇意というのは、結婚においてメリットが大きい。
娘のことが頭に浮かんだ。
娘が幼稚園児のとき、キョウが「うちに嫁入り決定だな」と話していたことを突然に思い出したのだ。
キョウには娘より三つ年上の男の子がいる。
あのときは笑い飛ばしたけど、これ、実はなかなかよい話ではないだろうか。
親同士が昔からの知人というのは、結婚において良い方向に働く気がする。
さっそくキョウに連絡した。
「息子さんと娘の話なんだけれど、10年後、二人とも独身だったら結婚させたらどうかしら」
親同士が決めた許嫁。「らんま1/2」みたいだな。
キョウからは「息子にどう切り出すかが重要だな、みたいな気持ちになっている」と返信がきたけど、確かに悩むよね。
それこそ「らんま1/2」のあかねちゃんみたいに「勝手に決めないでよ!」と怒られそうだ。
でも、考えれば考えるほどいい話に思えてくる。
夫が実父でキョウが義父。最強じゃないか。
キョウからは「真面目な話、義父にできることなんて相当少ないと思う」と言われたけれど、長年にわたって「ねぇ、キョウ、ちょっときいて」と私が悩めば、いつも多大な力になってくれた彼のこと。
きっと娘の「ねぇ、お義父さん、ちょっときいて」にも絶大な反応してくれるんだと信じてる。
やっぱり最強じゃないか。