サラリーマンのパパ、お医者さんのパパ
昨日、ネットで興味深い悩み相談を読んだ。
育休明けを控えた三十代のお母さんの悩みだった。
母親から「経済力をつけて独身で悠々自適に過ごすのが幸せ」と言われ続けた影響で、結婚・出産に興味がなく、二十代のときに子供を強く望む高収入の彼氏に振られた過去があるという。
ところが三十代で結婚して出産すると、想像以上に子供がかわいくて家事育児に専念したくなったらしい。
でも、旦那さんの年収を考えると仕事を辞めるわけにはいかない。二十代のとき、判断を誤って結婚相手が違う人になってしまったせいで大切な子供をしっかり育てることができない状況になった、と彼女は自分を責める日々だという。
気になる回答はごくごく当たり障りのないもの。そして、コメント欄は相談者への非難でいっぱいだった。
でも、私は相談者を責める気持ちになれなかった。
むしろ相談者さんに「あなた、私と同じ!」と言いたくなった。
そう、私も妊娠中、彼女と全く同じ悩みを抱いたことがあるのだ。
夫の前に付き合った男性は、父親と病院を経営している医者でそれまでの彼氏の中で最も高年収な男性だった。
結局、私が彼を好きになれないという理由でプロポーズは断り、かつ別れることになった。(これで母と大喧嘩になりました)
その後、私は夫と出会い、いつしか彼のことは忘れてしまった。
ところが妊娠中、それまで沈んでいた彼との記憶が急浮上する。そして、私は不安に襲われる。
これでよかったのか? と。
サラリーマンの父親じゃなくて、医者の父親のほうが子供は喜んだのでは?医者の子供として生まれてくるほうが、子供にとって幸せなのでは?
この子は、ただ私が彼を好きだという気持ちに付き合って父親を決められたのだと思うと、なんだか子供に申し訳なくなったのだ。
子供は親を選べないんだから、母親である私が子供に代わって父親をしっかり選ばなければいけないのに、その選んだ理由が「私の好きな人」って、それでは私の母と同じではないか。
夫は真面目で優しく聡明な人だ。
しっかり働いてお金を持って帰ってきてくれるから、私は専業主婦として家事と子育てに専念できる。
その私でさえ悩むのだ。
育休明けを控え、子供を預け仕事に戻らなければならない相談者が「これでよかったのか?」と悩むのは当然だと思う。
コメント欄を読むと勘違いされてる方(特に男性)が多いのだが、彼女は旦那さんではなく、元彼と結婚したかったと言ってるわけではない(と思う)
愛しているのはやっぱり旦那さんで、結婚相手は旦那さんじゃないと嫌なのだ。
もちろん私もそうだ。元彼の医者なんてすでに顔も忘れているし、今では名前さえ忘れてる(すみません)
でも男性陣には、この複雑な母親の心情が理解できないし許せなかったのだろう。「旦那さんが気の毒すぎる」とか「元彼と年収を比較されるなんてかわいそう。俺なら立ち直れない」ともあった。その気持ちもよくわかる。私だって元カノと比較されたらショックだもの。
彼女はただ「子供に代わって立派な父親を選ぶ」という母親の使命感から不安に襲われているだけにすぎない。
彼女はとても責任感の強いお母さんなんだと思う。
そのことを回答者もコメント欄の人々も理解していない印象を受けた。
さて、私はこの悩みにどう向き合い、解決したか。
まず友人らに相談した。
友人たちはびっくりしていたが、優しい先輩ママでもある彼女たちは「そうよね。子供ができたら旦那の経済力ってひときわ気になるよね」と私の気持ちに寄り添ってくれた。
「出産で働けない時期はお金の不安が大きくなるよね。これは仕方のないこと」という結論に至り、最後は先輩ママの「子供が生まれたら忙しすぎて、そんな不安に悩むどころじゃなくなる」で締められた(笑)
さて、これで一件落着になればいいものを自分でも信じられないのだが、この不安を夫にぶつけてしまった。
しかも大泣きしながら。
いやぁ、黒歴史なんで昨日まで忘れてましたよ(笑)
「あなたの前に付き合った人が開業医だって話はしたよね?彼が父親の方が子供は幸せだったんじゃないかしら。私、あなたのこと好きだけど、そんな理由で子供の父親を選んじゃってよかったのかな。子供にしてみれば医者のパパのほうが幸せよね。子供に申し訳ないわ。せっかく医者の子供に生まれることができたっていうのに」
サイテーです。
よく夫、怒らなかったなぁと思います。
でもショックだっただろうな。本当に申し訳ない。
夫に「凛子さんの好きな人は誰?」ときかれました。
「あなたです」と答えたら「それが子供にとって一番だと思う」と言ってくれて本当に感謝してます。
夫の心の大きさが、私のつまらない不安を取り除いてくれました。
あっ、でも。
「ちょっと待ってて。その医者より稼ぐようになるから」とも言ってました。あのときは私は笑わせるための冗談だと思ってましたが、数年後、夫は本当にその医者の年収を越していました。
もしかして、夫は怒っていたのかもしれません。ちーーーん。
夫、あのときは本当にごめんなさい。
忘れてくれていたら嬉しいです。