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音楽、IT、クライミング、映画……縁を辿る旅路を生きる下北沢のミニシアター支配人
「Explore Your Life.」を掲げるDUNLOP REFINED。
公式noteでは、人生を旅するように自らの道を拓き、闊歩する人物を紹介していく。
今回登場するのは、システム開発やマーケティング会社の代表やクライミングジムのオーナーでありながら、2022年下北沢に新しく誕生したミニシアター「シモキタ - エキマエ - シネマ『K2』」の支配人でもある北原豪。ビジネスからカルチャーまで、まだ踏んだことのない道を次々と歩んでいく北原氏の足跡を辿った。
20代までの人生を捧げた音楽活動
「私が代表を務めているのは、システム開発会社をメインに、共同代表を務めるマーケティング会社。それとクライミングジム。あとは小豆島のクライミング協会を立ち上げてメンバーになっていますね。それに、映画をはじめとしたアート領域の事業を手掛ける有限責任事業組合の役員を務め、同団体が運営する下北沢のミニシアター『K2』の共同代表で支配人でもあります」
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IT、アウトドア、映画……領域を横断しながらさまざまな事業を手掛ける北原氏。そうした活動の原点は、どこにあるのだろうか。尋ねてみた。
「私の原点は、10代後半から20代まで青春を注いだ音楽にあります。高校入学前に『なんとなくカッコいいから』という単純な理由でギターを買って。弾けるように練習しているうちに知り合いに誘われてロックバンドのメンバーに入りました。
一応高校の軽音部にも入っていたんですけど、コピーバンドにはあまり興味が湧かなくて。オリジナルの曲を演奏する、そのバンド活動の方にのめり込んで、高校生ながらライブハウスを回っていましたね」
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もともと「なんとなくカッコいいから」という理由で始めた音楽活動。当初はメンバーがつくった曲を演奏するだけで満足していたが、活動が本格化するにつれて北原氏の音楽への解像度も高まっていく。
「自我が芽生えはじめたんですよね」
そう話すように、途中で方向性の違いから所属していたバンドから独立。その後、下北沢などのライブハウスを周りながら、着実に実績を積み重ね、人気CDショップのコンピレーションアルバムに入るなどインディーズシーンでは知られる存在となった。
一見、順調そうに見える音楽活動の旅路。しかし、その裏で北原氏は葛藤を抱えていた。
「レーベルも付いてCDも出させてもらって。ブーム的なこともあったのだと思います。ファースト・アルバムを出してからの初期は反応ももらえて。そのままよろしくやっていけばいいと思っていたけど、一方で自分で楽曲をつくり続けるのが苦しくて。というのも、音楽を追求しようと思った時に、私の場合、どんどん内に向いてしまったんですね。わかりにくいものになってしまった。『もっとポップなものを』と思うけど、オリジナリティやアイデンティティを確立したい思いは増してくる。そんな葛藤がありましたね」
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「それと、追求する過程で、日本人としての表現がわからなくなってしまって。ルーツを辿れば、ブルースやロックは外国のもの。私たちのやっていることは借り物でしかない。要は消化し切れなかったんですね。そんな中、集大成としてのアルバムを制作した。やり切った感覚はありました」
フリーランスのエンジニアから、仲間とともに映画製作の領域へ
「その後、バンドの形態も変えてもっと納得できるものをと模索していた頃、東日本大震災が起きて。これが転機でした。もっとわかりやすく人の役に立つことをやろうと決めました。要は挫折したんです(笑)」
そう語る北原氏。まずは音楽と同時並行していたITの領域でキャリアを築いていった。
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「もともと大学時代は、情報系の学部に所属していたからIT領域の知見はあったんです。学生時代からバンド活動費を稼ぐためにも、IT企業でアルバイトをしていましたし、卒業後はフリーランスとしてIT企業のマーケティング支援をしたり、自分でバンドのWebサイトもつくったりしていましたね。30代で音楽活動を辞めたあと、自分を追い込むためにも目一杯ストレッチさせようと思って、2011年にシステム開発を主な事業とするSunbornという会社を設立しました」
そして、立ち上げた会社には、後に映画プロデューサーとなるメンバーがいた。彼をキーマンにして映画の企画・プロデュースも手掛けるように。
「彼ももともとバンド活動をしていた人。相通じるところもあって、設立した会社の社員として参画してくれました。彼はバンド活動の傍ら映画作りにも長らく携わっていて。まだ私が音楽活動をしていたときに、濱口竜介監督をライブハウスに連れてきていて、出会いが生まれたりということもありました。当時はまだみんな20代そこそこ。お互い何者でもなかったから、つながりやすかったんですよね。そんな彼が社内にいることもあり、会社としてもIT事業のほかに映画事業を展開するようになりました」
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2017年には親交のあった経営者仲間とともに、クリエイションからインフラまで映画にまつわるさまざまな事業を手掛ける有限責任事業組合Inclineを設立、世界三大映画祭でアワードを受賞するなど国際的に評価される作品にも携わるようになった。その後、同団体で下北沢のミニシアター『K2』を立ち上げ、北原氏は支配人となる。
「ここでは、映画上映のほか、地域のプレイヤーが出演するマナー動画の製作、上映後のトークイベントの開催、会員コミュニティの運営などを行い、地域や作品、作家と観客をつなぎ、関係性を育んでいます。コンセプトは『コモンズ=文化の共有地』。街の映画館に、消費者ではなく当事者として参加してもらい、“自分ごと”が増えるようにしていきたい。場をつくること、街作りに興味が生まれてきたんです」
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ミュージシャン時代にライブハウスを回っていた下北沢。今では暮らしを営む地域住民として、かつてこの地で表現者として生きていた者として、「あったらいい」という夢を叶える場を自ら育んでいる。
そこにある縁を辿っていく
「行き先はわからないけれど、そこにある縁を辿っていく。それがひとつのテーマなのかもしれない」
そう話す北原氏。
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「かつて全身全霊で音楽をつくっていたように、同じ熱量で目の前のことに向き合いたい。お金を得るためだけの仕事じゃなくて、“自分ごと”にした仕事をしていきたい。だって、人生を捧げているのに変なものをつくっていたら嫌じゃないですか。好奇心に従っていたいんです。その過程で縁が生まれ、つながったり広がったりしながら今に辿り着いていると思います」
縁を辿っていく過程では、さまざまなスキルや職能を持った仲間と一緒になり、いわば“作品”とも言える事業やプロジェクトをかたちにしていく。「さまざまな個性や能力を掛け合わせてセッションする感覚」は、ミュージシャン時代から変わっていないという。
そして、もうひとつ、北原氏のテーマとなっているのが「身体性」だ。
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「どんな営みであれ、社会と関わる意識的な活動は、すべて芸術活動であるという『社会彫刻』という概念に共感していて。いわば、自ら未来のために社会そのものを手触りのあるものとして彫刻していこうという考え方。
たとえば、映画を観た人が異なる人生を追体験できて、結果として視点が変わることもそう。スケートボードやクライミングをすれば街や人工物が違って見えることもそう。自分が信じられる活動を続ける中で、巻き込まれる人が増えて、その人に新たな感覚が生まれていく。自らの身体性を以て、変容を感じられることを大切にしていきたいんです」
心が動く場所へ自らの身体を持って行き、その感覚を味わい、時に仲間と共有する。『K2』が作品を観て消費するだけでなく、関わり合い、学び合うコモンズとしての機能を果たそうとしているのも、そうした考えがあるのかもしれない。
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「最近ではクライミングの傍ら埼玉の秩父の里山で、仲間と「半農(※農業をしつつ、別の自分の生業を両立させるスタイル)」の活動を始めました。この経験でまた視点が変わったし、新たな感覚を得ることができています」
心が動く方へ自ら動き、身体を以て試し、結果的に目の前の社会にポジティブな波紋を起こしていく……北原氏は、そんな探索の旅を続けているのだろう。
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最後に、北原氏にシューズに対するこだわり、そしてDUNLOP REFINEDのアイテムについて語ってもらった。
「『ベアフット(裸足)・ランニング』のムーブメントをつくった『Born to Run』という本に触発されて。裸足感覚を呼び起こすようなフットウェアをよく履いていますね。
ファッションには特定のスタイルはなくて。モノトーンも着るし、色味のある柄物も好き。今回選んだDUNLOP REFINEDのA7011は、シンプルでクラシックなデザインがいい。幅広いスタイルを受けとめてくれる気がします」
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音楽、IT、クライミング、映画……さまざまな道を踏んできた北原氏。身体性を大切にしながら、縁を辿っていく旅路は、これからも続いていくことだろう。
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(Profile)
北原豪 / Gou Kitahara
「シモキタ - エキマエ - シネマ『K2』」共同代表・支配人
『K2』の運営主体であるIncline LLP役員。株式会社Sunborn代表。株式会社weroll共同代表。合同会社ROCKLANDS代表社員。一般社団法人小豆島クライミング協会発起人。在学中からミュージシャン活動を始め、下北沢を中心にライブからパッケージの全国展開など活動。現在はIT領域でSIや制作のコンサルティングやプロジェクトマネジメント、マーケティング領域で企業のCI策定支援などを行う。趣味はロッククライミング。
『K2』Webサイト:https://k2-cinema.com/
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