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【あおぎりメモリアル】エピソード“大代真白”

2年生4月
放課後、外で風景デッサンをしていた。近くをロードワーク中のバスケ部が走り抜けていく。突然後ろから、「素敵な絵ですね。私も時々絵を描くんですけど、そういう線が描けないので羨ましいです。」と声をかけられる。振り向くと髪も肌も白く、紫の瞳が印象的な女の子がこちらを見て立っていた。
バスケ部の先輩から「大代!早くしろー!」と呼び戻されてしまったため、「邪魔しちゃってすみません。それじゃ!」と言って女の子は走り去ってしまった。
大代って言うのか。
予感めいた何かを感じる子だった。

2年生6月
「部活で誕生会するんだが、欠席が1名出ちゃって。予約したお店にお金払い済みだし、返金なくて勿体ないしメンツ足りないから来てくれないか?この通り!頼む!気のいい奴ばっかりだし退屈させないから!!お前に断られたら、あとが無いんだ!」

同級生の男Aから誘いを受ける。彼はバスケ部のイケメン君だ。そして、散々他のやつに誘いをかけ断られた結果、こちらに頼みに来たことを追記しておく。

頼まれたら断れない性格が災いし、仕方なく参加するが、やっぱり部外者は浮いてしまう。部屋の隅っこでジュースをチビチビ飲みながら、こんな退屈な時間は早く過ぎないものかとぼんやり考えていた。
今月が誕生日の奴らを祝福して、部活のメンバーからプレゼントが渡される。その中には4月に声をかけてきた大代もいた。
その後、なんとなく眺めていると、どうも男Aによく絡んでいる。好きなのか?さすがに安直すぎるか。そんなことを考えてしまった。
大代と視線が合い、こっちへトコトコと寄ってくる。

「今日は来てくれてありがとうございます。なんだか無理に誘われたみたいで、退屈ですよね。すみません。」

大代が謝るのは筋違いな気もするが、責任感が強くて律儀な子なのだろう。
気にしなくていいと伝える。

「4月に絵を描いてた先輩ですよね。男Aさんと友達だって聞きました。」

いやいや、友達と言うほどよく遊ぶわけでもないんだけど。まぁ、たまにこうしてグループで遊ぶ時に参加するくらいだよ。

「へぇー、そうなんですね。あ、名前教えてもらっていいですか?」

自己紹介をする。

「そんな名前だったんですね。大代は大代真白って言います。」

いい名前じゃないか。と返す。

「先輩も大代のファンになっちゃいました?」
遠くでチリンチリンチリンと鈴の音が聞こえた気がする。

離れた席から、「大代ー!ちょっとこっち来いよ!」と男Aが呼ぶ声が聞こえる。

「あ、呼ばれたので行きますね。」
離れていく大代。

向こうの席で大声で笑いながら、男Aの背中をバシバシ叩く大代。
いいぞもっとやれ。と思いながら、解散まで部屋の隅で座り続けた。

2年生7月
中庭の大きな木の陰で風景画のデッサン中

水道に顔を洗いにきた大代と遭遇した。見ていると、向こうもこちらに気づき、そのままこちらに歩いて寄ってくる。
「先輩こんにちは!また絵を描いてるんですか?」
そういう大代は?

練習試合が一戦終わって休憩中だと言う。
勝敗は負けたそうだ。

まぁ、うちの女子バスケ部はそんなに強くは無いしな。
「うぐっ…。勝ち負けだけじゃないんです!練習試合なんで、中身で勝負してますから。いつか先輩も驚くようなプレーで驚かしてやりますからね!」
そもそもなんでバスケやってるの?疲れない?
「追いつきたい人がいるんです。」眩しいものを見るような瞳だった。
それって男A?
「ふぇ?あ、いや、いやだなーそんなわけないじゃないですか〜」
声が裏返ってるぞ。図星なんだろう。
「えぇ、えぇ、そうですよー。大代は男Aさんに憧れて、追いつきたくてバスケ部に入ったんです。すみませんねーわかりやすくて。」不貞腐れてる。
別に悪くはない。
好きな人を追いかけて、同じ高校に来て、同じ部活に入るとか、かなり情熱的だとは思うけど。
「そりゃそうです。この際言っちゃいますけど、小学校の頃から憧れてましたから。」
素直に好きって言ったらどうだ。

言うと同時に何故か胸の奥がチクンと痛んだ。

大代は顔を真っ赤にして、「す、好きとか、そんなレベルの話じゃないんですー!!」明らかに強がりだった。「先輩思ったより意地悪ですね!!そんな先輩なんてうんちですうんち!」

発言の内容より、あまりの慌てぶりに思わず笑いがこぼれた。

「わ、笑われた…。ふん、暇そうですからこのあと試合に来て応援してくださいね。大代のこと散々いじめたんですから。」そう言って駆けだす。
「絶対来てくださいよー!じゃないと、先輩の無いこと無いこと言いふらしますからねー!!」
いや、それ完全に冤罪…。

言いふらされたら困るので、道具を片付け体育館に向かう。
人目につかないよう、扉の外から中の様子をうかがう。
ちょうど試合が始まったところだった。

しばらく見ていると、大代のチームが劣勢のようだ。大代は2人にディフェンスされていた。
残ったチームメイトがゴールに攻め込むが、得点に繋がらない。大代もディフェンスの隙をついてゴールを狙うが、思うように点数が取れないようだ。

奮戦虚しく、試合には負けてしまった。
ただ、試合内容は悪くなく、点数も僅差で終えていた。
おそらく、チームの中で大代が一番点を稼げるのだろう。そのためディフェンスが厚くなり、攻めあぐねてしまったように思える。
そんなことを考えていると、下から「あんたがディフェンスかわせないから負けたんじゃない!スモールフォワードのあんたが攻めなくて誰が点を取るのよ!」そんな声が聞こえてきた。気まずく思いながらも覗いてみると、大代が先輩から責められているところだった。

いや、あんたらも点取れてなかったし、大代にはディフェンスが2枚もついてたじゃないか。

何故か腹立たしく思いながら、成り行きを見守る。所詮は部外者なので口を挟めるはずもない。
大代は俯いてユニフォームの裾を掴みながら、「すみません。次は勝てるように頑張ります。ちょっと、頭冷やしてきます。」震える声でそう言い外へと飛び出して行った。
少し早歩きで大代の後を追う。
姿を見失ってしまったので、探しながらさ迷っていると、時計塔の近くにあぐらをかいて座り込んでいる大代を見つける。

そんなとこに座ったら、尻が汚れるぞ。
「ズビッ…先輩、まるでお母さんみたいですね。」

大代の声は少し掠れていた。なんなら鼻をすする音まで聞こえた。
大代の横に同じように座り込むと、スっとハンカチを差し出す。

「あざっす。」そう言ってハンカチを受け取ると、ズビィィっと勢いよく鼻をかんでハンカチを返してきた。
端を摘んで受け取ると、手近なところにそっと置いておいた。あとで洗ってこよう。

試合見てたよ。
「そっすか。」
確かに試合内容で勝負してたな。
「…大代のせいで負けちゃいましたけどね。」
常にディフェンス2人にマークされてたら難しいものじゃないの?
「でも、大代のポジション的に点取らなきゃなんで。それができなきゃ意味無いんですよ。先輩たちの邪魔にならないようにしなきゃいけないのに、上手くいかなかったんですよねー。」

はぁーーと深いため息を吐き出していた。

バスケのことはよくわからないけど、スリーポイント決めたところはかっこよかったと思う。
「慰めの言葉ありがとうございます。ちなみにスリーポイントって、3Pって表記することあるじゃないですか。」
突然何を言い出すのか。
「3Pってなんか、やらs」
言わせねーからな。とりあえず元気になったみたいだし行くわ。
「ありがとうございます。次見てもらう時は、絶対勝ちますからね。」

そんな言葉を背に受けて、颯爽と歩き去る。

「先輩」

何も言わずに手をひらひらと振る。

「かっこつけてるとこ悪いんですけど、ハンカチ忘れてますよ。」

このあとダッシュで回収した。

2年生11月
学校は文化祭真っ只中。普段とは違った非日常的な様子に浮かれる学生たち。
そんな中、独り美術室で展示の留守番をしていた。美術部は幽霊部員ばかりで、実質一人のようなものだ。
入口の戸が開くと大代が入ってきた。

「こんにちは。先輩ぼっちなんですか?」

容赦ない言葉のナイフが胸に刺さる。出会って第一声がそれか。

何をしに来た。
「いやー、おひとり様で寂しそうな先輩の所に、大代が遊びに来てあげたんじゃないですか。」
その謎の上から目線はなんなの?
こっちに来る時間があるなら、男Aを誘えば良かったじゃないか。
「まぁまぁ、いいじゃないですかそんなことは」しれっと言う大代だが、額にうっすらと冷や汗をかいているのを見逃しはしない。デートに誘おうとしたが、既に友人グループと出かけてしまい捕まえられなかったと言ったところだろ。
「うぐっ、とにかく!ボッチで可哀想な先輩は大代と出かけるんです!」
いや、展示の留守番しなきゃいけないんだが
「どうせ他に人なんか来ませんよー。」
失礼なやつだな。
「ねー、行きましょうよー。いこーいこーいこいこいくいくいくいくいっg」
それ以上言わせねーよ。大代の情緒はどうなってるんだよ。
わかったから、行くから大人しくしてくれ
「はーい。」

2人で屋台巡り
中庭へ向かう通り道、登り階段で先を歩く大代

そんな両手いっぱいに食べ物持ってると歩きづらくないか?
「そんなことないですよ。平気です平気」そう言って軽快なステップを踏んでいる。
「きゃっ!」

足を踏み外し後ろに倒れ込んでくる。
咄嗟に受け止めるが、力が足りず倒れ込んでしまう。
大代が怪我をしないよう抱きかかえ落ちる。

悲鳴は女の子っぽいのな

そんなことを思いながら、頭を強打して意識を手放した。

目を開けると見慣れぬ景色が映り込む。

知らない天井だ。
「そんなこと言えるくらい元気なら、大丈夫そうですね。」

声のした方向に顔を向けると、大代がいた。

「どこか痛むとかありません?」

ひどく心配そうな顔でこっちを見ている。

ヘマしちゃって悪かった。せっかくの文化祭だったのに。
「何言ってるんですか!大代がバランス崩したから、先輩が庇って…グスッ…気を失ったから、死んじゃったのかと思って。ズビッ」

また泣いてる。泣いてる女の子のなぐさめ方なんて知らないんだが、どうしたらいいのか。
体を起こして、泣いてる大代の頭を撫でてやる。
好きでもない男にされても迷惑かもしれないが、これ以外になぐさめる手段が思いつかなかった。

「…先輩、もう少し頭撫でてください。」
お気に召してくれたならなにより。

それから彼女の涙声が止むまで、しばらく頭を撫で続けた。

2年生12月
時計塔を描くため、体育館近くに陣取りデッサンを始める。
ふと、声が聞こえる。男Aと男子バスケ部員の声だった。
ちょうど木が1本立ってて死角になってたみたいだ。

「もうすぐクリスマスだけど、彼女ほしいわぁー。」
「いや、男Aならすぐ彼女出来そうじゃん。ほら、女バスの大代。あいつお前のこと絶対好きだろ。」
「いや、大代はない。昔から一緒にいるけど、言動がガサツだし、正直女に見えないんだわ。えらく懐かれてるけどむしろ迷惑みたいな?」

笑い声が聞こえる。
腹がたったが、部外者の俺が口を挟むことでもない。気分が悪いので、場所を変えようと思った時。

「あー!もう、うっさいなぁ!女に見えなくてすみませんー!どうせガサツですよー!ヴァーカ!!!」

そんな大代の叫び声が聞こえた。
振り返ると、物凄いスピードで近くを走り抜けていく姿が見えた。
荷物をまとめ木の影から出る。
男Aは近くの男子バスケ部員に「訳わかんねぇ。」としきりに言っていた。

おい、男A。さすがに女の子に言うには聞くに堪えない言葉だったんじゃないか?立ち聞きするつもりは無かったんだが聞こえてな。もう少し優しくしてやっても良かったと思うぞ。

それだけ言い残し、駆け足で大代が去った方に行く。
時計塔の方に行くと、いつかと同じように地面にあぐらをかいて座っている大代を発見。

そんなとこに座ったら、尻が汚れるぞ。
「…先輩、まるでお母さんみたいですね。」

いつかとまったく同じ会話をする。
スっと横に座りハンカチを差し出す。

「今回はハンカチいらないです。泣いてないので。」

必要なかったようだ。

そこは前回と同じ流れを繰り返すとこじゃないのか?
「大代は常に成長する女ですから。」
なるほど、前と同じではないと。
「先輩」
なんだ?
「さっきの見てましたよね?」
気づいてたんだな。
「近く通ったから、気付くに決まってるじゃないですか。」
そうか。
「自分でもなんとなくわかってたんです。脈ナシって。今回のでやっとスッキリしましたわー。」

どこか強がっているようにも見える。

「クソデカため息出ちゃうなー。これからどうしようかなー。」

モチベーションの根源が崩れたんだ。その上、好きな男にあんなことを言われて、悲しく無いはずがない。前回から頭を撫でれば解決すると学んだので、黙って頭をなでる。

「先輩それはダメですよ。今はズルいですって。」

声がうるうるしている。

見ないでおくから、好きなだけ泣いたらいいよ。
「大代は泣かないですよ。泣くわけ…グスッ…ないじゃないですか…グスッ」
近くにいて泣けないなら席を外そうか。

そう言って離れようとすると頭に置いていた手を掴まれる。

「…ズビッ、そのままでお願いします。」

姿勢を戻し、頭を撫で続ける。
しばらくグズグズと鼻を鳴らしていたが、割と早く落ち着いてきた。

「先輩、ありがとうございました。いつも助かってます。」
後輩を助けるのは先輩の務めだ。
「なんだかんだ、優しいですよね。大代のこと好きなんですか?」

唐突な発言に顔が熱くなるのを自覚した。また遠くで、チリンチリンチリンと鈴の音が聞こえた気がする。
そっぽを向きながら

元気になったみたいだから行くわ。

そう告げて、荷物を抱えて退散するのだった。

翌日
「昨日は変なこと聞かせて悪かったな。」そう言って男Aが現れた。
そう思うなら、大代に謝ってやれよ。
「もう行ってきた。スッキリした顔で、もう未練もないし気にしてないって言われたわ。」
そうか、ならこれで手打ちってことでいいだろ。大代が気にしてないなら、こちらも気にしない。
「ああ、すまなかったな。それと、こんなこと言えた義理じゃないが、大代のこと頼む。」
本当に言えた義理じゃないな。だが、目が離せないし、頼まれなくても見ておくよ。
「それともう1つ」
まだあるのか。
「大代、部活辞めるってよ。」
それ、なんて映画のタイトル?

放課後美術部部室。石膏彫刻のデッサンをしていたら、戸が開き大代が入ってきた。

「先輩、またボッチで描いてたんですか?」

言葉のナイフが胸に刺さる。

喧嘩を売りに来たのか?言い値で買うぞ?
「ごめんなさい。違います。」
大代は一見ふざけているようで、根が真面目だな。
「はい?大代が真面目とか、営業妨害やめてもらえますか?」
いつから働き始めたんだよ。
「母親から生まれた瞬間から大代真白という仕事をしてます。」
そうか。
「先輩、冷たい。あんなことがあったんだし、もう少し大代を構ってくれていいと思うんですけど。」
今、デッサン中で手が離せないんだ。
「そうですかー。なら大代はこっちで本でも読んでます。」

置いてあった画集を手に取る。

そういえば、部活辞めたんだって?
「あ、もう知ってたんですね。」
まぁな、良かったのか?戦力として優秀だったと思うんだけど。
「いいんですよ。もともと不純な目的で入ってた部活ですし。今は他にやってみたいこともできたんで。」
やりたいことって何?
「せっかく時間ができたんで絵を描こうかなって。先輩覚えてます?初めて会った時に大代も絵を描くって話したんですけど。」
そんな話もされたな。たしか、思ったような線が描けないみたいなこと言ってたよな。
「先輩みたいな線が描けないから、うらやましいって話しましたね。元々絵を描くのは好きだったんです。先輩みたいに芸術的な絵じゃなくて、イラストとかばかりですけど。」
どんな絵でもいいじゃないか。描きたい気持ちがあって、実際に描くならそこに違いはないよ。
「先輩って、時々カッコつけますよね。」
お帰りはあちらです。茶化すなら帰ってどうぞ。
「わぁー!ごめんなさい!カッコつけてるんじゃなくてカッコいいぞー!ひゅーひゅー!」
そんな必死に言われると、かえって嘘くさくなるもんだな。
「本気ですって!先輩はカッコいいです。」
こんなもっさりした男に言うことじゃないって。
「そうですかね。飾れば案外いけるんじゃないかと思うんですけど。それに第一印象は見た目が大事ですけど、付き合いが長くなれば中身が重要なんですよ。そう意味でいくと、先輩は雰囲気イケメンじゃないですか。」
なんだそのふわっとして風が吹けば消え去りそうなイケメンは。
「性格がイケメンってことです。」
褒めても何も出ないんで、帰ってもろて。
「うわ、先輩がツンデレだ。」
いつデレたよ。
「え?だって先輩は大代のこと好きですよね。」

その質問は前回で学習済みである

そうだな。なんだか乙女なチンパンジーが全力でふざけてるみたいで好きだぞ。
「扱いが動物なんだけど。え?大代バカにされてます?ここで暴れてやりますよ?」
悪かったよ。お詫びに今度どっか遊びに連れて行くから許してくれ。
「ほんとですか!ならクリスマスの日に出かけましょうよ。どうせ先輩予定ないですよね。」
なんか腹立つ言い方だけど、その通りだから何にも言えない。
「せっかくなんで、その日に先輩のイメチェンもしちゃいましょうよ。お詫びって言うなら大代に先輩を改造させてください。カッコよくプロデュースしちゃいますから。」
それくらいで満足してくれるなら構わないが。
「なら、クリスマスは先輩とデートってことで!」

こうして大代とのデートが決まった。

クリスマス当日
駅前にて大代と待ち合わせなのだが、時間になったのに大代が現れない。SNSで連絡を入れたのだが、そちらにも反応がない。どうしたものかと思案していたところで、「先輩、お待たせしました。」と大代の声が聞こえた。

そちらを振り返ると、大人っぽく着飾った綺麗な女性が立っていた。

どちら様?

思わずそう尋ねてしまうくらいには、動揺していたんだと思う。普段はツインのシニヨンにまとめてアップにしている髪がおろされ、サラサラと流れる様子に見とれてしまった。

「やだなぁ、大代ですよ。っていうか、先輩はデートなのにそんな恰好で来たんですか?」
パーカーにジーンズという至って普通の格好だと思うのだが。
「デートなんですけど。」

大代はジト目だ。

デートなんてしたことないからな。どんな格好が正解なのかわからなかったのと、こんな服しか持ってないんだ。
「まぁいいですけどね。今日はそんな先輩を改造するためのデートなんですから。実は美容院の予約がしてあるんです。早く行きましょう!」

本来はリードしなければいけないはずなのだが、大代に連れられるままお店をまわることになった。
最初は美容院

「この髪型でお願いします。特にこのもっさり感を出してる前髪はバッサリいっちゃって、ガッと上げちゃってください。」

本人を置いてきぼりにして、店員に注文を伝える大代。
カットが終わると、ワックスで髪型をセットされ、鏡を見るとさっぱりと清潔感のある髪型の自分がいた。前髪のカーテンがないと、妙に落ち着かない。

「いいじゃないですか。それじゃあ次のお店に行きますよ!」

大代の勢いは止まらない。
次は、リーズナブルでそこそこのデザインの服がそろう、ウニクロへ来た。

「学生ですからね。お財布に優しくおしゃれしなきゃ。」

案外その辺は現実的で、何となく良いお嫁さんになりそうだなと思った。
大代が選んだ服は、セーター、膝上丈のコート、チノパン、ローファーと今まで自分が試したことのない組み合わせのコーデだった。

「無難ですけど、これくらいシンプルなほうが先輩に似合うと思うんですよね。試着してみてくださいよ。」

そう言って試着室に連れていかれる。着用して大代の前に出る。

「うん、良いじゃないですか。今日はそれでいきましょう。すいません、お会計お願いします。着ていくんで脱いだ服を入れる袋もください。」

大代が非常に頼もしい件について。年上としてなんとも情けないが、どうすればいいかもわからないため、素直に大代に任せることにした。

「さて、一通り先輩の改造は済みましたけど、なんか散々引っ張りまわしちゃってすみません。」
いや、情けない話、こういったことには不慣れだったから助かった。
「そう言ってもらえるなら、ありがたいです。」

今日の目的は終わったのだが、お互いに離れがたく、様子をうかがうような時間が過ぎる。

そうだな。せっかくだし、今日のお礼というわけじゃないが他のお店にも行こうか。大代のおかげで予算もずいぶん余ったしな。奢らせてもらうよ。
「いいんですか?じゃあお言葉に甘えて。」

適当な喫茶店で軽食を楽しみ、その後二人で向かったのは画材のお店。クリスマスデートにしては色気のない場所だが、目的があってここに来た。

「先輩は自分の画材買うんですか?」
それは別日でいいんだ。

そう、大代に伝えて絵具のコーナーにたどり着く。
とあるメーカーの絵筆と、発色が美しいと話題の油絵具のインクを手に取り会計に行く。

「先輩それすごくいい奴じゃないですか。」

大代も画材の良さに気づいたようだ。
お金を支払い、外に出てそのまま大代に突き出す。

デートっぽくないもので悪いが、これはお礼だ。受け取ってほしい。
「いやこんな高いの受け取れませんよ。」

そういう大代の手に買った画材を押し付ける。

どうせなら、この絵具持って美術部に入ってみないか?

なけなしの勇気をふり絞って大代を誘う。

「いいんですか?」
他は幽霊部員ばかりだし、どうせ絵を描くつもりなら、一人でやるより部活としてやったほうがいいだろう。
それに、大代と過ごす時間が嫌いじゃないんだ。来てくれれば嬉しい。
「そっか、そう思っててくれたんですね。先輩がそう言ってくれるなら、美術部に入ります。中途半端な時期だし、入るのは申し訳ないなって思ってたので、ありがたいです。」

そう言いながら、大代の目はうるんでいた。

それから時は過ぎ、3年生になった。大代が美術部に入ったことで、一緒に過ごす時間は飛躍的に増え、プライベートでも遊ぶ機会が増えた。周りからは、2人セットで見られており、大代が何かやらかすと呼び出されるようになった。
ある時には、大代が友人たちとカラオケに行った時に、調子に乗って浣腸を注入し、トイレを我慢して歌い切った後倒れたため、助けてほしいとその友人たちから連絡が来た。そんなエピソードに事欠かない程、面白い時間を過ごしている。ちなみに漏らしたかどうかは、大代の名誉のために秘密にさせてもらう。

3年生8月
美大の推薦入試を受けるため、試験の課題である絵のモチーフが見つからず、部室でひたすらデッサンを繰り返していたある夏休みの日。一緒に絵を描いていた大代から、「息抜きに今日の夏祭りに行きませんか。」と誘われた。
行き詰まっていたので、気分転換に丁度いいかと思い、誘いを快諾した。
夜になり、祭り会場の待ち合わせ場所に行くと、浴衣姿の大代がいた。
近づいて声をかける。

良く似合っているじゃないか。馬子にも衣裳とはよく言ったものだな。
「あ、先輩。開口一番にそれですか?絶対褒めてないですよね。」
いや、似合ってると思うぞ。その、綺麗だと思う。

素直に褒めようとすると、しどろもどろになってしまった。

「うわ、先輩が普通に褒めてる。明日は槍が降るかな。」
お疲れさま。それじゃ解散で。
「いやー!ごめんなさい!許して!照れ隠しだから、大代の照れ隠しだから!」

そう言って縋りついてくる大代に、普段と違う雰囲気も相まって、ドキリとさせられた。
一通り祭り会場を巡り、いつかの文化祭の時のように両手にいっぱいの食料を持った大代が隣を歩いていた。

そんな両手いっぱいに食べ物を持ったら、歩きにくくないか。

あの時と同じ問いかけをする。

「今回は階段歩いてませんし、大丈夫ですよ。」
確かに今回は、足場が悪いこともないから大丈夫なのか。

そう油断したところで、大代がつまづいた。

「きゃっ!」かわいらしい悲鳴と共に倒れそうになる大代をとっさにつかまえる。
今回は共倒れすることもなく、無事に支えられた。

「あ、ありがとうございます。先輩、文化部のわりに力ありますよね。」
去年の文化祭以来、悔しくて多少は体を鍛えてきたからな。大代一人くらいなら支えられるようになって良かったよ。
「そうだったんですか。それでですね、あのーそろそろ大代の胸に置いた手を離してもらってもいいですか?名残惜しいとは思いますけど。」

そういわれて、大代を支えている手を見ると、大代の胸の片側を鷲掴みにしていたことに気づく。

す、すまん。わざとじゃないんだ。
「わかってます・・・。たださすがに大代も女なんで、ちょっと恥ずかしかっただけです。」

慌てて手を離し、気恥ずかしさから目をそらす。
いまだに手から感触が消えない。
照れてしまって会話ができない。どうしようかと思っていたところで花火が上がった。

「先輩、花火が始まりましたよ!早く行きましょう。」

そう言って、手をとって引っ張ってくる大代。
花火を背景に、少し照れた表情を浮かべる彼女の姿が目に焼き付いて、この瞬間が永遠に続けばいいのにと強く願うのだった。

その日から、あの瞬間を切り取って残したいと思うようになり、受験用の絵のモデルが決まった。

3年生12月
あれから、絵の作成に時間をつぎ込み、大代と過ごす時間は減っていた。ただ、そのことに不安を感じることはなかったが、少し寂しそうな大代に罪悪感は感じていた。
そしてついに絵が完成した。提出期限のギリギリになってしまったが、何とか間に合わせることができた。学校から受験校へ郵送してくれるとのことで、冬休み中だったが絵を持って学校へと足を運ぶ。部室にたどり着くと、大代が窓の外をぼんやりと眺めていた。

休日なのに、部室にいるとは何してるんだ?
「いやー、最近先輩が構ってくれないのでぼんやりしてたんです。大代は、放置プレーもわりといけるんですけど、あまりに長すぎて少し落ち込んでます。クリスマスも遊べませんでしたし。」
うぐっ、それは悪かった。でも、受験の絵を描いてて時間が取れなくて。
「いいんです。わかってます。大代は聞き分けのいい、都合のいい女なんで。」

やさぐれてる大代を見て、ただ甘えたかっただけなのだと何となく察した。
作品を壁に立てかけると、大代に近づき頭をなでる。

そう言ってくれるなよ。これでもかなり急いで頑張ったんだ。
「まだ、頭なでてくれるなら許してあげます。で、絵は完成したんですか?」
おかげさまで、納得のいく作品ができたんだ。
「見てもいいですか?」
そうだな。せっかくなら大代に一番に見てほしい。

そう伝えると、大代は作品の近くまで行き、絵にかけたカバーを外す。

「先輩、これってあの時の」

あの夏祭りの花火が上がった瞬間。目に焼き付いて離れなくなった大代の姿を、そのまま自分の思いをありったけ詰め込んで描きあげた。

「うわ、こんな絵見せられたら。我慢できるわけないじゃん。」

独り言をつぶやいているが丸聞こえだ。

今持てるすべてを注ぎ込んで描いたつもりだよ。勝手にモデルにして悪かったけど、どうしても描きたかったんだ。
「先輩は、大代のこと・・・。いえ、やっぱり今はまだいいです。」

何かを言いかけたが、結局言わなかった。
この日は、作品を預けた後、久しぶりに大代と一緒に寄り道をしながら帰宅をした。

3年生2月
今日は2月14日。すでに受験も終わり、かといって自由登校にはなっていないので、学校へ来ている。無事に美大の推薦合格をもらうことができたため、いまいち勉学に身が入らない。放課後になり部室へ行くと、大代がすでに部室の中にいた。夕日に照らされた彼女は、どこかいつもと違う雰囲気を漂わせていた。

「先輩、お疲れ様です。」

どことなく深刻そうな空気を感じ、こちらも緊張してしまう。

なんだかいつもより変な感じだけど。
「今日何の日か知ってますか?」
バレンタインデーだろ。なんだ日頃の感謝を込めてチョコでもくれるのか?
「そうですね、先輩のためにバレンタインのチョコは用意しましたよ。」

そう言って大代が差し出してきたのは、某有名メーカーのチョコアイスだった。

「それとこれもかけると美味しくなると思います。大代の気持ち受け取ってくれますか?」

追加で出してきたのは銀色のパウチだった。商品名も何も書いていない。何となく嫌な予感がする。
大代の気持ちはわかった。そのパウチは遠慮して気持ちだけ受け取らせてもらおうかな。

「え?受け取ってくれないんですか?」

泣きそうな声を出す大代。この時点で確信した。これは罠であると。
しかし、泣きそうな様子の大代を見ていると、罪悪感に責め立てられてる気分になる。
はぁとため息をつき、わかった、それももらうよと返事をする。
「先輩、ありがとうございます!」満面の笑みでお礼を言われると、まぁたまにはこんな罠に引っかかってやってもいいかと思った。
アイスとパウチを受け取り、それぞれを開封していく。アイスは普通のチョコレートアイスだが、パウチのほうは開けた途端に異様な香りを発し始めた。
あまりの悪臭に絶望を感じ、大代の顔を見ると涙目でプルプルしていた。
どうした大代、震えているが。

「い、いや〜ウプッ、なんでもないですよ〜。オェ」
えずいてるんだが。

こちらよりダメージの大きそうな大代に、さらに追い打ちをかける出来事がおきた。なんと、パウチが落ちて粉がぶちまかれてしまったのだ。

「ちょ、先輩!!ウッ」

ここからは大代の名誉のために非公開とさせてもらおう。
とりあえず、その後の掃除はいろんな意味で大変だった。

で、なんでこんな“う〇この素”なんて渡してきたのか、説明してもらえるんだろうな。
掃除も終わり、換気もして一通り片付いた後、大代を問い詰める。

「いや〜、友達がいつだかのパーティーグッズで余ったっていうから、使ってみようと思って。ほら、先輩ならきっと受け止めてくれるって信じてますから。」

嫌な信頼だった。
せめて自分へのダメージを計算に入れて行動してくれ。

「だって興味あったんですもん。」

そういいながらチョコアイスをパクついている。
結局バレンタインのチョコはもらえなかったが、普段できない経験をさせてもらえたという意味ではいい思い出になるのだろうか。
名前のわからない銀パウチは受け取ってはいけないと魂に深く刻まれた出来事だった。

3年生卒業式
今日は卒業式。式典も終わり、級友たちとの別れも済ませ、最後に部室を覗いてみようと足を運んだところだった。
部室は無人で、カバーをかけられた1枚のイーゼルが中心に置かれていた。
そんなことをする人物は一人しか思いつかず、イーゼルのカバーを外す。そこには1枚の絵が描かれていた。
絵を見た瞬間、胸がギュッと締め付けられた。すぐさま部室の外へと駆け出す。
遠くでチリンチリンチリンと鈴の音が鳴り、“マーシロチャンヲースクウカイヘヨウコソー”という言葉が聞こえた気がした。
大代への気持ちを自覚した音だったのかもしれない。

学校中を探して駆け回り、ようやく時計塔のところで胡坐をかいて座っている大代を見つける。

そん、なとこに、座ったら、尻が、汚れるぞ!

息が切れてまともにしゃべることができなかった。

「先輩、まるでお母さんみたいですね。」

今までと同じように返してくれる。
大代の横に腰をおろし、乱れた呼吸を整える。

「ずいぶんかかりましたね。もっと早く来ると思ってました。」
仕方ないだろう、学校中を探してたんだ。
「そうでしたか。なかなかドラマみたいにスマートにはいかないですね。」
そうだな。

そこでふいに会話が途切れる。

「大代の絵はどうでしたか。」
部室に置いてあった絵のことだろう。ああ、心に刺さるいい絵だったよ。
「あざっす。」
ただ、男のほうはもう少し普通の顔だと思うんだ。
「仕方ないですよ。描いた人間にはああ見えているんですから。」
それにしたって美化し過ぎじゃないか?
「そんなことありませんよ。見た通りに描きましたから。」
あと、女のほうはあれの100倍美人だからな。
「それこそ先輩の目が腐ってませんか?眼科行ってきたらいいですよ。」
余計なお世話だ。
「・・・先輩、卒業しちゃうんですよね。」
そうだな。
「大学楽しみですか?」
そうだな。
「大学行ったら、きっと可愛くて美人な女の人もいっぱいいるでしょ?うらやましいなぁ」
そうだな。
「彼女もできちゃったり。」
そうだな。
「で、いろいろ大人の階段登っちゃうんでしょ?」
そうだな。
「しかも、失敗しちゃって子どもができちゃって、そのまま学生結婚しちゃって、それでそれで。」
大代、泣くぐらいなら言わなくていいぞ?
「・・・。グスッ」
なんだかんだ泣き虫だよな。
「誰が泣かせたんですか。ズビッ」
そうだな。責任とらなきゃな。

そう言って頭を撫でる。いろいろと消化できない思いがあるのだろう。

「先輩はズルいです。いつもひょうひょうとして、なのに大代が困ってるときにはすぐに助けてくれちゃって。なんでそんなに雰囲気イケメンなんですか。」
相変わらず風が吹いたら飛んでいきそうなイケメンだな。少なくともそんな風に思ってるのはお前だけだよ。
「そんなことないですよ。去年のイメチェン以後、大代の周りでも先輩の評価は高いですもん。先輩が卒業した後が心配です。きっとモテて彼女ができて、大代のことなんて忘れてしまうんですよ。」

ずいぶんと卑屈になってしまったようだ。まぁ、原因はわからなくもないが。

それは心配しすぎだ。大代よりいい女は現れないよ。
「大代みたいながさつ女は、女として見られないんです。だから先輩だって手を出してこないんですよね。」
普通、付き合ってもいない男女はそんなことはしないものだ。
「お堅いですね。まぁ先輩らしいですけど。」
それに、こちらの気持ちだって本当はわかっているんだろ?
「・・・はい。先輩が受験の課題で描きあげた絵を見た時に確信しました。」
なら、なんでそんなことを聞くんだよ。
「だって、不安じゃないですか。先輩は卒業して遠くに行ってしまうし、年も違うから接点が少なくなるし、どうにもできないことってあるんです。いっそ先輩が留年してくれたらいいのに。」
まぁ、卒業してしまったからもうその選択肢は選べないんだがな。
「そういうとこですよ先輩。」

ジト目でにらまれた。

「そうやって冷静にひょうひょうとしてるから、こっちも自信が持てないんです。」
悪かったな。そういう性格なんだ。
「ほら、またそうやって。」
どうしろと?
「先輩、あおぎり高校の伝説って知ってますか?」

唐突な話題転換に面食らう。

あぁ、知ってる。確か伝説の木の下で女の子から告白して成立した恋人はずっと結ばれるとかいうやつだろ。
「それもなんですけど、実はもう一つあるんです。」
「もう一つの伝説は、この時計塔なんです。卒業式に告白して恋人になったカップルが、この時計塔の鐘に祝福されると永遠に幸せになれる。そんな伝説です。もっともこの鐘が鳴らなくなってずいぶん経つみたいですけど。」
「大代としては、鐘は鳴らなくてもいいんです。きっかけさえもらえれば。」
「そういえば初めて先輩に慰められたのもここでしたっけ。」
「叱られてみっともなく泣いてた大代を慰めてくれましたよね。」
「文化祭では、先輩が大代をかばって気絶するし。」
「その年の12月には。まぁ、あそこが先輩を意識するきっかけでしたね。」
「それまで優しい先輩くらいの認識でしたけど、あれがあってこの人は大代のことをちゃんとわかってくれてる。そう思ったら、なんだか素敵に見えてきちゃって。フラれたばかりなのに現金な女でしたよね。」
「こんなことじゃダメだって、一線引こうとしましたけど、先輩いっつも肝心な時に近くにいるんですもん。先輩に助けられて、優しくされて、女の子扱いされて、好きにならないはずないじゃないですか。」


「大代は先輩のことが好きです。こんな女ですけど彼女にしてください!」
ひたむきな好意を伝える大代の告白は良く伝わったよ。でも、彼女だけではダメだ。
「!・・・やっぱりそうですよね。大代なんかじゃ先輩の彼女になれませんよね。」
いや、話は最後まで聞いてくれ。
「いいんです。先輩はさっさと彼女でも作って、(ピー)してさっさとハニトラに引っかかって結婚すればいいんです。」
大代、まだ話は終わってない。
「・・・。」
言っただろ?彼女“だけ”ではダメだって。
「どういうことですか。」
空気読むのは得意なのに、自分のことになると途端にダメになるな。
「どうせガサツですから。」
卑屈になるなよ。恋人だけじゃダメなんだからその先はわからないか?
「え?もしかして。」
結婚を前提に付き合ってほしい。
「・・・うえぇぇぇぇ。先輩、それはズルいし、気が早いですよ~。」

大代の堤防が決壊しボロ泣きしている。

気が早いなんてことはない。付き合うなら最後まで付き合ってもらうからな。
「グス、わかりました。これからよろしくお願いします。」

そう大代が言った後。
ガラーン、ガラーン
時計塔の鐘が鳴った。

「うそ・・・。鳴らないはずなのに。」
まぁ良いじゃないか。鐘が祝福してくれたんだろ?なら永遠に幸せになれるんだから。

鐘の音を聞きながら、大代を抱き寄せる。彼女もそっともたれかかってくる。二人で支えあってる感じがして、これからの未来を暗示しているようで、この幸せをずっと守っていきたいと心に誓った。

「先輩も覚悟してくださいね。大代はかなりめんどくさい女なんで。」
知ってる。そんなところも惚れたんだ。

「大代に惚れたこと、後悔しないでくださいよ!」
fin

挿絵MMD提供
たまちゃん@たまっ子💜☪️様(@otamahan3010)

ありがとうございます!





アフターストーリー(大嘘)www余韻ぶっ壊れるのでネタに走る覚悟のある人だけ見るといいよwww
↓大代ちゃんのアーカイブに飛びます。
https://youtu.be/r6r3MXpd0j4 

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