別冊ベトナム右往左往 弐 ツムツム?家、積む積む
関ケ原はどこか?
ベトナムのレンガを間近に見たのは2016年、Đồng Nai 省 Biên Hòa の住宅建築現場でした。ベトナムらしく歩道を塞ぐようにレンガが置かれていました。レンガと言えば羊羹のような全ての面が長方形のものを思い浮かべるのではないかと思いますが、Biên Hòa でみたレンガは正四角柱で、長手方向に穴があいたレンガでした。のちに Sài Gòn や Vũng Tàuで見たレンガも同様のレンガでしたので、ベトナムの住宅建築ではこのようなレンガが一般的なんだろうと思っていました。
3年半後に Hà Nội に引っ越したのですが、住宅建築現場に積み上げられたレンガを見て北部と南部でレンガが違うことを知りました。Hà Nội のレンガは穴が無く全ての面が長方形で、モルタルとの付着強度を高めるための溝の形も異なっていました。
南北に長いベトナムでは、気候に応じて2種類のレンガを使い分けていて、四季がある北部はレンガの持つ断熱性と蓄熱性を活用するために通常のレンガを使い、年間通して暑い南部は、断熱性を最優先に四つ穴レンガを使っているようです。
そうなると気になるのが、穴ありと穴なしレンガの関ケ原(境界線)は、どこだろうかということです。ベトナムの中央に位置し南北を隔てている Hải Vân 峠、その南北にある Đà Nẵng と Hué の気候に違いはなかったように思います。もう少し北に寄った北中部辺りではないかと推測し、Google Mapを見ると Hà Tĩnh省とQuảng Bình省の省境が、高くはありませんがHải Vân峠同様に海岸近くまで伸びた山で隔てられています。このあたりがベトナムレンガの関ケ原、穴ありレンガと穴なしレンガの境界になるのではないかと考えています。ベトナム北中部へはこれまでも行ったことが無く、行く機会があれば推測が合っているか建築現場を覗いて確認してみたいと思います。
南部にも関がある?
最近、2種類の新種レンガを発見(自分が気が付いていなかっただけなのですが)しました。一つ目は、先ほど北部のレンガには穴がないと書いたのですが、Hà Nội で二つ穴レンガを見つけました。建築現場や資材置き場に置いてある量が通常レンガの1/10以下と少なく、壁や柱で使用している形跡もないことから特殊用途に使われているのだろうと思います。
二つ目は、Sóc Trăngで見つけた四つ穴レンガです。建築中の家の前の道路脇に積んであり、いつも見る四つ穴レンガだなと思ったのですが、よく見ると穴が四角いことに気付きました。角穴は丸穴に比べて僅かですが穴が大きいようにみえ、材料は少なく内部の空気量が増えるので、断熱性向上、軽量化、原価低減と、究極の南部レンガなのかもしれません。次に南部に行くときは、荷物にノギスを加えようと思います。
ベトナム東南部の Biên Hòa や Sài Gòn は丸い四つ穴、西南部メコンデルタは四角の四つ穴で、南部のレンガにも"関"があるのかと思ったのですが、後日、Biên Hòaを歩いていた時に、角四つ穴レンガが積んであるのを見つけました。四つ穴レンガに"関"は無く、混在していると考えて良さそうです。
ちなみに、ベトナム語でレンガは gạch 、日本語では煉瓦。語源は同じような気がします。
ところで Đà Lạt 見たいな高原地帯はどっち使うんでしょうね?
あなた、そんな事考えた事ない?
考えると、また寝れなくなっちゃう・・・。
2024年11月3日 増補
2024年10月28日
早めの昼食にしようと通りを歩いていたところ、内装店の店先に丸穴レンガが置いてありました。穴の大きさを測ろうと近づいてよくみると、角穴レンガも混ざっているではありませんか。早速、カメラとスケールをカバンから取り出して計測を開始します。ベトナム人ぽっくない恰好(ジャパニーズビジネスマン)の輩が店頭で写真を撮りながらゴソゴソしているわけで、店の奥から見ていると不審者にしか見えません。店主と思われる男性が奥から出てきて、兄さん、何か?と聞いてきたので、直定規を見せながらレンガを少し見せてねと答えると、そのまま店の奥に引っ込んで行ったので測定と撮影を続けました。まあ、頭上に防犯カメラはありましたが。
測定結果は、角穴と丸穴どちらも最大寸法は25㎜でした。角穴の方が大きく感じられたのは最大寸法が同じだったからという事で納得しました。
数値で示すと以下のようになります。
穴の面積
角穴:2.5㎝^2=6.250㎤
丸穴: (π/4)×2.5㎝^2=4.908㎤
レンガ1個の内空容積
角穴:2.5㎝^2×16㎝×4穴=400㎤
丸穴: (π/4)×2.5㎝^2)×16㎝×4穴=315㎤
重量(レンガの比重=2.0 g/㎤ )
角穴:(8㎝×8㎝×16㎝-400㎤)×2.0 g/㎤=1,248g/個
丸穴:(8㎝×8㎝×16㎝-315㎤)×2.0 g/㎤=1,420g/個
重量はスマホ1個分の差になりました。
ベトナムの都市部に多くみられる、間口5m奥行き20m、4階建ての戸建て住宅でどのくらいの差が生じるのかを計算してみます。
条件は以下の通りです。
- 各階2部屋として、各階に仕切り壁1か所(本来は仕切り壁は2箇所になると思われるが、ドアや窓の開口を考慮し減じた)
- 壁厚はレンガの長辺160mm(0.16m)とする
壁の容積
長辺20m×高さ3m×左右壁2×階数4=480㎡
短辺5m×高さ3m×前後,仕切り壁3×階数4=180㎡
(480㎡+180㎡)×0.16m=105.6㎥
レンガ使用数量
105.6㎥/(0.08×0.08×0.16)=103,125個
レンガの総重量及び角穴レンガと丸穴レンガの重量差
角穴レンガ:103,125個×1,248g/個=128,700kg≒128.5t
丸穴レンガ:103,125個×1,420g/個=146,438kg≒146.5t
重量差:146.5t-128.5t=18t
ちなみに、北部は穴なしなので同程度の家だと200トンを超えます。トヨタハイエースを比較対象とすると、ハイエースが約2トンなので、北部の家は100台分に相当します。南部だと丸穴レンガでは73台分、角穴レンガにすると9台分が軽くなり64台分で良いことになります。
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ないない。
今後も調査継続しますので、適宜増補改訂いたします。
では。