2020年7月10日 三才山先輩は生きづらい
中野でいちの『三才山先輩は生きづらい』を読んだ。自意識過剰な三才山先輩の「悩乱」エピソードを冷静な鬼怒川後輩が聞く、という問答形式の作品。文科系放課後モノ。
まず三才山先輩の悩乱エピソードがディテール細かくてそれが面白い。例えば「伊達メガネをしてるってバレちゃったらオシャレをしてると思われそう」とかそういう感じ。
漫画を読んでいる自分も「シャツをブラウジングするのはオシャレをしてると思われそう」で出来ないので、三才山先輩の生きづらさはある程度現役でわかる。
とはいえ流石に十代の自意識はもう無いので、100共感できるかというと、ちょっとそれはできない。基本的には鬼怒川と同じリアクションをしてしまう。
この作品の中では三才山先輩と鬼怒川後輩は別の人として描かれているわけだけど、現実世界の多くの人の心の中には三才山先輩(自意識過剰で不安定な自分)と鬼怒川後輩(冷静な自分)が存在していて、それらが協調してバランスを取りながら情緒を決定していると思う。そういう意味でこの作品世界は人ひとりの心のシステムを表現している。
ただその観点に立つと三才山先輩と鬼怒川後輩が恋愛的に仲良くなっていく様子がなんかキモく感じられてしまった。どっちも自分に思えるので…。
ちなみに作中では「悩乱」はほぼ必ずカッコ書きで表記されるんだけど、悩乱は本当にある言葉らしい。