テストリーダーに必要な要件まとめ
基本的にテスターは決められたテストを実行するだけで良いが、テストリーダーになると、テスト以外のスキルが求められる。
今回は、そんなテストリーダーに必要な要件をまとめてみる。
テストリーダーに求める要件
1.テスターとしての基本知識
大前提として、テストを設計したりツールなどを用意するにあたり、基本的なテストスキルは必須になる。
▼具体的に必要なこと
・テスト技法(JSTQB FLレベル)
・テスト計画書(QAPlan)や見積もりの作成経験
・テストケースや自動化ツールの作成経験
・Excelの基本知識(数式、VBA)
・テストレポートやその他資料の作成経験
2.スケジュール管理能力
テストを実行するにあたり、いつまでにテストを完了させなければいけないかといった期日が存在する。
その際、「テスト対象に対してどのくらいテストができているか」の進捗を、把握しておく必要があり、この網羅率のことを「テストカバレッジ」と呼ぶ。
テストカバレッジ100%を目指し、品質保証のクオリティを上げるためにも、スケジュール管理能力はリーダーの必須スキルになってくる。
▼具体的に必要なこと
・テスト対象のリリーススケジュールに沿ったQAスケジュールの作成 ※1
・QAに必要な工数の算出
・工数不足時の人員確保(社内人員または外注業者への依頼など)
・使用の把握と検証内容の選定
・QAスケジュールの延長やテスト内容の要望など、ステークホルダーとの折衝 ※2
・QA全体及び各テスターの進捗管理
※1 QA:品質保証(Quality Assurance)
※2 ステークホルダー:取引先などの利害関係者
3.テスト環境の構築
貴重な工数を無駄にしないためにも、テスターが円滑にテストできる作業環境をテスト前に用意しておくのが理想。
テスト設計の段階で正確に仕様を把握し、テストに何が必要かを理解しておくことで、スムーズに準備を進められる。
いざテストを開始したのに、準備が間に合わずにテスターが全員待機状態…なんてことは、工数がもったいないので避けたい。
▼具体的に必要なこと
・テストケースの準備
・必要デバッグツールの準備や依頼
・テストツールの作成
・必要な資料の作成(仕様書やテスト観点など)
・意見や質問がしやすい環境づくり
!注意
先方からの納品や情報共有が遅れて事前に準備ができない、ということはよくある。
そのようなときは、必要最低限のテストしかできないパターンもあるため、状況に応じて必要なテスト策定する判断力も重要。
4.バグの傾向分析
リリース後の保守運用の段階で、どの機能に不具合が多く発生するかといったバグの傾向が見えてくることがある。
JSTQBの「ソフトウェアの7原則」にも記載されている「バグの偏在」である。
この「バグの偏在」を見つけて、不具合の兆候や検証優先度付けなど、対策と分析を実行することも、テストリーダーに必要な資質である。
▼具体的に必要なこと
・バグの偏在箇所を特定する検証スキル
・問題の切り分けを実行し、根本原因を特定する
・バグの傾向を分析し、テストケースの改修や探索的テスト時の機能選定を行う
・分析結果を元に、テストの優先度を付ける(より重要なテストに工数をかけて効率的に品質を高める)
5.人材育成
テストのことだけでなく、人材育成も意識しなければいけない。
将来のテストリーダーを育成することで、アサインできる業務が増え、会社全体のレベルアップになる。
そして、自分の業務を積極的に引継ぐことで、自身は次のステップの業務に時間を充てることができるため、全員のステップアップに繋がる。
▼具体的に必要なこと
・報告、連絡、相談を密に実行し、コミュニケーションの場を積極的に作る
・各作業の完了見込み時間を定め、日々の目標設定を意識させる
・それぞれの得意、不得意な分野を分析し、作業者に合った業務をアサイン
・気軽に提案しやすい雰囲気を作り、自発的に行動できる環境を作る
6.コミュニケーション力
テスターは1人で黙々と作業する仕事に思われがちだが、意外とコミュニケーションが必要な場が多い。
特にテストリーダーになると、取引先との折衝や作業状況のモニタリングなど、テストよりもコミュニケーションをとる作業の方が多くなる。
そのような場合に、自分の意見をしっかりと伝える必要があるため、会話や文章で分かりやすく伝えるコミュニケーションスキルが必要になる。
▼具体的に必要なこと
・相手にわかりやすく伝えるライティングスキル
・ステークホルダーとの折衝力
・プレゼンテーション力(何が必要か、どうしてほしいかを言葉にする力)
・傾聴力(同僚の意見を取り入れ、より良いテストを作成する)
まとめ
以上、テストリーダーに必要な6つのスキルを、僕なりにまとめてみました。
実際にテストリーダーを経験してみて、基本的なサイクルは以下の印象です。
▼テストリーダーの大まかな業務
① テスト対象の仕様書を把握
② テスト計画書を作成
③ 取引先とスケジュールなどを会議
④ テストケースやテストツールなどの準備
⑤ テスト開始(リーダーはテスターのモニタリングや取引先とのやり取りがメイン)
⑥ テスト対象のリリース
⑦ 運用フェーズのテストサイクルを構築(ルーティン化したテストの効率化など)
自分の設計したテストで対象の品質を向上させ、実際にモノが世に出た時はなかなかにやりがいを感じます。
もちろんバグを見逃して、対応に追われることもありますが、すべてのバグを検知することは不可能なので、「次に同じ失敗をしないこと」が重要になります。
IT業界が活性化し、今後もテスターという業種は増えてくると考えているので、これからテスターになりたい方や、現在テスターで必要なスキルを再確認したい方は、良ければ参考にしていただけると幸いです。