名探偵ポヨンチョポンポンの事件簿6<第3話>
名探偵ポヨンチョポンポンの事件簿6
第3話『今回はテレビドラマとか よく観る人向けかなぁ?』
我らが名探偵、ポヨンチョポンポンが高らかに宣言した。
「ポヨンチョポンポンさんの足元には死体が埋まっている!!」
助手のガルンチョルンルンは冷静だった。
「はい、出落ちね。満足でしょ?帰るよ」
ポヨンチョは気にせず、スコップを突きだして言う。
「さあ、ガルンチョ君!私の足元を掘ってみたまえ!さあ!!」
言った通りにしないとコイツは泣く。
ガルンチョは、しぶしぶスコップを受け取り、地面に突きたてた。その途端、ガツッとスコップの先に何か硬いものが当たった。
「おやぁ?おやおやぁ、なにか当たったねぇ?なにかあるねぇ?こりゃ、本当に死体なんじゃないのお?」
と、すっごいニヤニヤしてるポヨンチョ。
「うわコイツ、わざわざ仕込んでやがった……。あと、埋めるの浅すぎ……」
「あ!今の『私の年収低すぎ』のパクリでしょ?この泥棒猫!!」
げんなりしながら土をどけると、埋まっていたのはクーラーボックスだった。
開けてみれば中には何匹かの魚が。
ポヨンチョがニヤニヤしたままのぞき込んで、
「これは鯛だねえ。
鯛が1、2、3、4。4匹だ。
4匹入ってるねえ。
4匹の鯛、4鯛、シタイ、死体!!」
「チッ」
ガルンチョが舌打ちするのと同時に
「ふははははは!愚かだなぁポヨンチョ!!」
突如、謎の揺れと地鳴りが一帯を襲った。
クーラーボックスが宙を舞う。下から突き上げられたのだ。土砂を巻き上げ、土中から現れたのは『棺』だった。
しかも、ツタンカーメンなヤツ(直立)。
そしてもう一度、
「愚かだなポヨンチョ!!」
ファラオの棺が爆散し、中から現れたのは、ポヨンチョの永遠のライバル、サロンゾバイバイ教授だった。全身 包帯グルグル巻きだ。それだけでは不安だったらしく、胸のところに包帯の上からマジックで『木乃伊(ミイラ)』と書いてあった。
「かっこで書くぐらいなら始めから漢字で書くなよ…」
ガルンチョに指摘されても、サロンゾは聞こえないふりだ。
そんなサロンゾが喝破する。
「ポヨンチョ!その鯛4匹とも死んでるでしょ!
鯛の死体が4体だから『4×4=16(シシジュウロク)たい』でしょ!!」
「叙述トリックかぁぁああ!!」
名探偵ポヨンチョポンポンは膝から崩れ落ちた。
『叙述トリック』
それは宇宙の真理である。
なぜ気づけなかったのか。
己の至らなさに悔し涙が止まらない。
悲嘆にくれるポヨンチョの傍らに腰をかがめ、肩に手をまわし、サロンゾが語りかけた。
「ポヨンチョ、私はちゃんと、お前が『死体が埋まってる宣言』するであろう場所を推定し、一昨日の深夜から、その地中深くで、ファラオ風の死んだふりして、待機してたんだ。
なあ、ポヨンチョ。
なんでも自分一人で無理をして準備しようとするなよ。もっと私を信用してくれ……」
「あ、あ……ありがとうサロンゾ……」
流す涙は、熱い友情に感謝するものに変わっていた。
「本当にありがとうサロンゾ…。
じゃあ次は『貴族探偵』やりたい」
名探偵のリクエストに永遠のライバルは頼もしく応える。
「まかせろ。大納言でも関白でも思いのままだ」
「貴族って平安の?」
「嫌か?」
「大好き、藤原薬子の変」
「私もだ。エロい」
「チッ」
ガルンチョの舌打ちは、さっきより大きかったが、ポヨンチョとサロンゾは気づかない。
「じゃあ貴族探偵ネタの打ち合わせがてら飯でも食うかサロンゾ?」
「そうだなポヨンチョ。どこ行く?さくら水産?」
「お前、さくら水産は一昨日も行ったろ?2人で。
なに?魚がいいの?健康診断でひっかかったんだっけ?
あ、じゃあこの鯛を家で焼いて食べるか」
「いいの?こんな立派な鯛?」
「いいのいいの。これねタダだったから。
…では、ガルンチョ君!
帰るぞ!!タクシーを呼んでくれたまえ!!」
「チッ」
「待て、ポヨンチョ!ここで呼ぶべきはタクシーではないぞ!!」
サロンゾが言わんとしていることを推理するポヨンチョ。探偵だから推理は、する。すっかり忘れていたが、するのだ。
「……ハッ!!わかったぞ!!
ガルンチョ君!タクシーではない!パトカーだ!警察を呼んでくれたまえ!!
パトカーで家まで送ってもらい、そのまま若手刑事のウードッホ・ホッホ君にも鯛をご馳走するのだ!!鯛は4匹!この場には私とサロンゾ、そして君!もう1人加えれば1人1尾で、ちょうど!」
「そういうことだポヨンチョ!みんなで食べるとおいしいからね!!」
「ねっ!」
「チッ」
舌打ちと同時に数台のパトカーが到着した。
無論、ガルンチョが呼んだわけではない。
さっき爆散した棺の破片が、周辺に深刻な被害を与えていたため、付近の住人に通報されていたのだ。さらに言えば、鯛も棺も盗品であった。
ポヨンチョとサロンゾは手錠をかけられ、パトカーに押し込まれた。
それを見ているガルンチョは全くの無表情だ。
そして、若手落語家がしたり顔で「鯛だけに、おかしな(尾頭=おかしら)おはなしでございます」とサゲ(落ち)を言って、ゆっくりと緞帳が下りてゆくのだった。
以上、本文ここまで。
馬鹿にゼニをぶつける趣味がある人は以下をご利用ください。
以降に文章などはありません。
あとがきとかありません。登場人物と作者が会話する、ふた昔前のライトノベルみたいなあとがきとかありません。代わりに、すっかり忘れていた、本来ノルマの変な固有名詞は載せます。
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