名探偵ポヨンチョポンポンの事件簿6 第10話
名探偵ポヨンチョポンポンの事件簿6
第10話「名探偵と吾輩は猫である」
名探偵ポヨンチョポンポンの事務所に、近所に住むモッモッモッ・ヌパヌパが駆け込んできた。
「うちの猫が!うちのヌパ井が何者かに殺されたんです!!」
ポヨンチョは3か月ほど前に、そのヌパ井が行方不明になってモッモッモッから捜索を依頼されたことがある。それを見事に解決した時に愛猫家であるモッモッモッが用意した謝礼は法外といっていい額だった。それを頭金にしてヘリコプターへの変形機構を自身に組み込むことができたのだから、ポヨンチョにとってその恩は計り知れないといえた。
あの時の恩に報いるのは今だ、とポヨンチョは助手のガルンチョルンルンを伴い、モッモッモッに案内されて現場に急行した。
現場はモッモッモッの自宅だった。
毛布の上に、ぐっしょりと濡れて息絶えたヌパ井が横たわっていた。
手を合わせしばし黙祷したのち、ポヨンチョはモッモッモッに訊ねた。
「溺死…ですか?」
「ええ。今朝、水瓶の中に浮かんでいました。猫は元来、水を嫌います。実際、ヌパ井が水瓶に近づくのを見たことがありません。飲み水は専用の皿が決まった場所、ここからそう遠くないところに常に置いてあります。今もそうです。皿には水が十分に残っていました。そしてまだ春先、暑くはありません。のどが渇いてやむなく水瓶をのぞき込んだとも考えられません。つまり」
「つまり、何者かが故意にヌパ井を水瓶に沈めた、と?」
「…そうとしか考えられません」
「…なるほど。それでは、家の中を少し調べさせていただきましょう」
ポヨンチョはフリーザの乗り物に乗ったまま調査を開始した。
「おやおや、居間がずいぶんと散らかっていますねぇ(中尾隆聖声)」
「思いつきで入れた一文に引きずられすぎだぞ」
「ごめんなさい(通常声)」
助手のガルンチョによる的確な助言と痛烈なスタンガンで我に返ったポヨンチョ。見なかったことにしてモッモッモッがこたえる。
「お恥ずかしい。昨晩、友人らとここで歓談しまして。無精なものでそのままです。今朝はヌパ井のこともあり、片付けどころではありませんでしたし」
転がっていた空のビール瓶の一つを拾い上げ眺めながらポヨンチョが訊ねた。
「ずいぶんと飲まれましたね。たしか、アルコールはお得意でなかったのでは?」
「いや、ほとんどは友人らです。私は本当に舐める程度で」
「その友人らはお泊りになられた?」
ビール瓶を置き、手刀で瓶の首を切り飛ばすポヨンチョ。特に意味はない。
「いや、昨晩のうちに解散しました」
「玄関まで見送られた?」
「どうだったか…。少しでも酒が入ると記憶が曖昧になっていけません…。いや、たしか、この場で別れの挨拶をして見送りまではしませんでした。集まっていたのはそれなりに付き合いの長い連中でしたから無礼にも当たるまいと」
「ご友人らも酔われていた?」
「ええ、それはまあ」
「そのご友人らのお名前は?」
「名前ですか?
ポッパピョ・ピョウピョウピョウ。
フェンヌポな夢’89。
はすすんはすすん・すすんは・すん。
ガスパール・ザンザン。
ナッティー・ババリアン。
あ、すみません。
はすすんはすすん・すすんは・すんではなく
すはすはすんすん・ははすん・すんでした。よく似た双子なので、つい。
それと、すんすんまん。
酒乱マン。
トテモTheネコギライ。
にゃんにゃんぶくぶく丸」
「複数犯か……」
ポヨンチョは呻いた。
第11話「名探偵と吾輩は猫である(解決編)」に続く。
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