ハリウッド!ブレブレリメイク

日本の作品(映画には限らない)がハリウッドでリメイクされたという体で、その感想を紹介するコーナーでした。読みは鷲崎さん。

以下、作例です。

************

ハリウッド版『坊っちゃん』

冒頭、ハーレーに乗った「坊っちゃん」が荒野を爆走。
BGMは『BORN TO BE WILD』。
「親譲りの無鉄砲で子供の時から損ばかりしている」をアメリカナイズした結果らしい。
地平線が見えるほど広大なところを突っ切った末の目的地に、『Matsuyama(松山)』という字幕。四国は山がちな島なのだが…。

仇役の教頭「赤シャツ」を、赤という一点を理由に、スターリンそっくりの人が演じている。そして原作以上に嫌なやつ。冷戦終わっても、東の共産主義が嫌いか、アメリカ。
今となっては、日本国内でも由来が伝わりにくい「野だいこ」(野良の幇間持ち(たいこもち))は、どうなるか心配だったが、一応意味は伝わっていたらしい。ただ、一応だったため、姿かたちが完全にピエロ。教員なのに。

日本の名作のハリウッド化ということで、随所に日本人向けのアピールとおぼしき点が見られる。
まず、校長の「狸」が、信楽焼きの狸の置物。しかしアメリカサイズのため全高4m強。置物だから動かない。セリフ無い。あと股間がアメリカアレンジ。大人。
また「山嵐」が、CGで作られたソニック・ザ・ヘッジホッグである。おしい、ソニックはヤマアラシでは無く、ハリネズミだ!
そして、主役の「坊っちゃん」。原作で自身が源満仲(みなもとのみつなか)の子孫であることに触れているが、それにハリウッドスタッフが喰いついたようだ。原作中では、源ではなく通称の「多田」、名を音読みの「まんぢゅう」、「多田満仲(ただのまんぢゅう)」と表記していたのが災いした。かつアメリカでも分かりやすくするためのアレンジが加わり、坊っちゃんが「ただのプレッツェル」になってしまっている。このため、冒頭のシーンは、シートにちょこんとプレッツェルが乗った、無人のハーレーが猛スピードで走行していた。
ハリウッドの撮影技術は恐ろしい。

以上のような構成のため、職員室でのシーンでは、木造校舎の天井を突き破って頭が見えない狸の置物の、その巨大な亀頭の前で、スターリンが厳然と「うらなり」の粛清を決定し、そのまわりをピエロが楽しげに跳ね回る。
一方、「山嵐」ことソニックは室内を、まさに縦横微塵に走り回る。
そして、床にプレッツェルが落ちている。しかも、プレッツェルは道後温泉に寄ってから来たため、ちょっと湿っているのだ。
こんだけ無茶しといて、本編のほとんどが、生徒たちの野球の試合に費やされている。「坊っちゃんスタジアム」は、後付けの名前で、物語とは関係ないんだよっ!!

次回作「吾輩は猫である」も、予告映像に「NAMENNAYO(なめんなよ)!!」と叫ぶ猫ひろしが確認でき、失望せずにはいられない。

<2010年8月23日送信>


************

ハリウッド版『キテレツ大百科』

キテレツのご先祖様がエジソンに変更されている。
このためだろうか、発明よりも「それは私の発明だ!!」と訴訟を起こすシーンばかりが目立つ。発明家というより、やっかいな人だ。

ブタゴリラも、トンガリも、ミヨちゃんも、キテレツをサポートする、優秀な弁護士軍団に変更されている。そもそもキテレツ大百科あらためエジソン大百科の中身は、法律書や悪の対話術といった類のものばかり。
コロ助が、サムライロボットの面でアメリカ的に強化され、キテレツに忠実な、日本刀を振り回す殺人マシーンとなっている。どうしても裁判で勝てないライバルを、コロ助が斬り殺した上で主君のキテレツに責任が行かないよう、切腹するシーンが本編のクライマックスとなっている。

エンディング「はじめてのチュウ」が「はじめてのメイクラブ」になっており、お国柄だなあ、と思わずにはいられない。

<2010年8月23日送信>


************

ハリウッド版『古典落語・まんじゅうこわい』

まんじゃうがホットドッグになってる。
「じゃあ、ホットドッグをたくさん集めてきてアイツを怖がらせてやろうじゃねえか」と呼びかける長屋の住人が、アメリカ大統領なのには驚いた。
その大統領の命令で、トムハンクス率いる歴戦のレンジャー部隊が、最前線に送られているホットドッグを救出に向かったり、あるいは、ブルースウィルスが、スペースシャトルに乗って地球に迫る小惑星に埋まっているホットドッグを掘りに行ったり、挙句の果てには、マイケル・J・フォックスがデロリアンで、ビフのホットドッグを取り返しに行ったり、と、ハリウッドらしさが満載。というか悪ふざけですよね?

そして最後のセリフが
「おめえは本当は何が怖いんだ!?」
「夜のベットで俺のホットドッグをねだるワイフが怖い!」
と下世話なアメリカンジョークでげんなり。

前情報で「映画初出演」と宣伝されていたホットドッグ早食いの小林尊が逮捕されてしまって、出番がカットされていたのは、むしろ不幸中の幸いだろう。
とにかく、キャッチコピーに『ハリウッドがお送りする超スケール古典落語第一弾!!』とあるが、第二弾はやめておけ。

ちなみに、日本語吹き替えは、全て柳家小三治がやっている。

<2010年8月16日>


************

ハリウッド版『ドカベン プロ野球編』

原作は、水島先生の『僕の考えた最高の野球選手』たちが、実在のプロ野球選手をシメることでおなじみだが、ハリウッド版は、スピルバーグが考えた『ジェダイの野球選手』が、山田や岩鬼や殿馬をコテンパンにしている。
『フォースの力』って言い張られたらどうしようもないですよねー。

水島キャラにまじって、イチローの足が吹き飛ばされているのを僕は見逃さなかったぞ!

<2010年8月23日送信>


************

ハリウッド版『桃太郎』

冒頭、川から大きなオレンジが流れてきて、早速タイトルが嘘になっている。まあ、アメリカでは桃よりメジャーなのだろう。仕方あるまい。
しかし、おばあさんがそのオレンジに防腐剤をシコタマ噴霧しているのにはドン引き。そのうえで、そのオレンジからとても元気な男の子が飛び出してくるという考え方が、怖い。
成長した桃、ではなくオレンジ太郎が、おばあさんにつくってもらったキビ団子を腰につけずに、マックで注文したクォーターパウンダーを両手いっぱいかかえて鬼退治に行くシーンは「いい加減にしろ」とつぶやかずにはいられなかった。

お供の犬・キジ・サルを変更するにしても、その全部をアメリカバイソンにする必要はないだろう。しかも400頭にまで増やす意味がわからない。アメリカの物量偏重主義が怖い。
それと、アメリカバイソンがおいしそうにクォーターパウンダー食ってるのは大丈夫なのか、牛だろ!?

鬼が島では、CGと特殊メイクによってかなりグロテスクな鬼たちが登場。
それらが、400頭のアメリカバイソンに蹂躙されるクライマックスは圧巻。つーか、もう怖え。
オレンジ太郎、それ見ながらコーラ片手にゲラゲラ笑ってるし。

ところで、黒鬼・赤鬼・黄鬼がバイソンの群れにはね飛ばされる場面で『この鬼は有色人種を擬人化したものではありません』という字幕が入るあたり、アメリカの人種問題は我々の想像以上に根深いようだ。
『有色人種』を『擬人』化…。頼む、誤訳であってくれ!

<2010年8月9日送信>


************

ハリウッド版『美味しんぼ』

海原雄山がジャンクフードをモリモリ食ってる時点でめまいがした。
「このベーコンチーズバーガーを作ったのは誰だ!!」と言われても…。

全ての登場人物が、脈絡なく頻繁に「クジラを食べるな!」と叫ぶのが、非常に印象的。

京極はんの四万十川の鮎は、油で揚げてある。
なにより「なんてものを食わせてくれるんや~」と泣きながら食べてるそれは、鮎ではなく付け合わせのフライドポテト。しかも鮎よりポテトのほうが多い。もっとも一番多いのは全体にぶちまけられ、皿からはみ出しているタルタルソースだが。

山岡がミートローフに手を突っ込んで、肉をえぐりだし
「これがミートローフのミートローフです」
「おお、これはおめでたい!!」
というくだりは、もう意味も何も、全てが失われている。

それと、渡辺謙があの苦い顔をしながら毒色のお菓子をほおばるシーンは、日本人には耐えられません。勘弁してください。

<2010年8月8日送信>


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?