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楽園の蛇は禁断の果実の夢を見るか

ガンダム・シュバルゼッテ製造の経緯を探りながらその先に何が待っているのかを妄想する。

ということで、この機体を作ったのはジェターク社と推測されます。
ただし、彼らには実作のための情報がありません。
ではどこからもたらされるのかというと、高確率でシャディク・ゼネリが情報源と予想されます。

シャディクはどうやって情報を手に入れたかと言うと

2期PVで流されたニカの叫び「この学園から出ていって!」の直前のこのシーンに纏わる部分と予想されます。

ナイフを向けられたのは(履いている靴から)ニカ、向けているのはおそらく(同じく靴から推測)ノレアです。
ミオリネは8話でプロスペラから(役に立つかどうかはともかく)エアリアルのデータを受け取っています。
ミオリネが持っていてもデータ解析はできませんので、ニカに渡すのが得策です。ということで、例のデータはニカが保有しています。

ナイフを突きつけられてようやく渡した(彼女自身だけではなく、他者の殺害もほのめかされているでしょう)なら、ニカは積極的にスパイ活動を行っていません。彼女は組織にとって本当にただの連絡係止まりだったようです。

シャディクが以前よりガンダムを欲しがっているのは、8話でのミオ
リネとの会話「ガンダムを欲しがっている顧客がいる(だから俺と手を組もう)」の提案で明らかです。当のミオリネに断られましたが、シャディクはあきらめていません。彼は団体戦の決闘で地球寮に負け、「株式会社ガンダム"には"手を出さない」と誓約書にサインをしていますが、それ以外の手段なら問題がない、ということになります。

シャディクがガンダムを手に入れる上で最大の障壁となるのが彼の養父、サリウス・ゼネリです。10話でカテドラルに対しエアリアルのGUNDフォーマット使用嫌疑の審理申請を出し(不受理となりましたが)、9話のグラスレー寮対地球寮の団体戦では対ガンダム兵器"アンチドート"を積んだミカエリス&ベギルペンデを送り込み、8話ではミオリネに「ガンダムアレルギー」と評されるほど、とにかくガンダムを(物理的に)排除しようとする意思が強いです。

ガンダムを作るにはそれなりに技術と設備のある会社が必要です。
しかしサリウスの目からそれを隠すには、4話で経営状況の悪化が発覚したジェターク社に話を持ちかけるのが一番早いのです。
「資金援助と引き換えに作ってよ」、と。
2期PVでジェターク社のCEOの座に着いたラウダは、つい最近まで学生でした。若干17~18歳の彼に、傾いた会社をどうにかできるほどのコネクションはありません。
そこにシャディクの付け入る隙があります。
彼は経営状況がよろしくなかった株式会社ガンダムに対しても、8話で金と人を送る用意があると宣言しています。
彼は学生でありながら、既にそれだけの力を持っていることを示しています。
ラウダとしては、いかに様々な思惑があろうともジェターク社を沈めないためにはこの提案に乗るしかありません。彼が経営を、会社を乗っ取られるかもしれないという予感を抱いたとしても。
シャディクがグラスレー社のロゴマーク通り「蛇」だったとしても、ラウダには選択の余地も猶予もありません。

水星の魔女は、作品中でしばしばリフレイン(=過去に起きた事象を別の誰かで再現する)演出を取り入れています。わかりやすいところではプロローグでルブリスが左腕を切り落とされる→9話でエアリアルが左腕を切り落とされる、プロローグでカルドがエルノラに「あんたでダメなら誰にもクリアはできないさ」と声をかける→小説版オリジナルストーリーでミオリネがスレッタに「あんたが避けられないなら、誰も避けられない!」と声をかける、などです。

9話のリフレインをシャディクとラウダで行います。
対象が変わるので、前回は失敗でしたが今回は成功、となります。

ところで、小説版にも書かれている言葉「ガンダムは命を奪う」。
ラウダはこれを知っているのでしょうか。
7話冒頭で御三家CEOが秘密会合を持った際、ガンダムに対しての反応が

サリウス:知っていてガンダムを排除しようとする。ガンダムは協約違反の機体
ニューゲン:知りながらガンダムを作ろうとする。協約違反?それが何?
ヴィム:知らない、興味ない。ガンダムは協約違反の機体。魔女めが

三者の反応はおおむねこうだと思うのですが、いかがでしょう。

その中でもヴィムは失言が多い、作戦は他人任せ、満足に情報収集していない(多分部下に丸投げ)、息子のことは駒としてしか考えていない面がある、おまけに情報ダダ漏れ(高確率でヴィムの近くにプロスペラの内通者がいます)に気づいていない……と、彼はちょっとこう、経営者としてはどんぶり勘定どころかどんぶりの底が抜けているんじゃないかと思われます。
ジェターク社ってヴィムの周りに優秀な人材が揃っているからどうにかなっているんじゃないかという変な心配をしています。
12話では「俺はライバルの頭を直接ぶったたくことで勝ち上がってきた男だ」と宣っていますが、これは多分周囲の人材による尻拭いが大変だったんだろうな……と想像できる、まさに脳筋一直線の発言です。
清々しいほどに「力 is Power」を体現する人物です。

こんな人物ですから息子と情報共有なんてまずしていません。3話における決闘妨害指示も小説版によると「手段を選ぶな」と一方的なメッセージをラウダに送り付けたくらいです。

反対にシャディクは「養父さんからだいたいは」聞いています。
聞いたうえでガンダムを手に入れようとしています。
その彼が素直にラウダに「ガンダムは危険だから気をつけてね」と素直に教えるでしょうか。……彼が蛇なら、その選択肢はありません。
ジェターク社を手駒の一つに加えるつもりなら、ラウダにはここで退場を願う方が彼としては都合がよいでしょう。死亡ではなくとも、身動きが取れない状態なら構わない。
プラント・クエタのテロ事件ではヴィムが死亡しました。あの事件はデリングを狙ったものですが、シャディクにとってはデリングが死んでも死ななくても構わない。ヴィムが死んでも死ななくても構わない。
計画の道筋が分かれるだけで、ゴールに辿り着ければそれで良い。
分岐ルートの一つ、「ヴィム死亡」に入ったからそれを利用するだけ、です。

そして思うのです。
いかにも良いこと、助けに来た、手を貸すよ、のように見せかけて相手を騙し、破滅へと導く。しかも自分の手は汚さない。
大変狡猾な手口です。実に蛇らしいやり方です。
でもこれ、どこかで見たことがあります。
もしかしてこれは、機動戦士ガンダム第10話「ガルマ散る」の再演を意識していませんか?

シャディク「君は良い友人だったが(俺を養子呼ばわりした)君のお父上が行けないのだよ」
ラウダ「謀ったな、シャディク(シャア)!」

水星の魔女EXPOの画像から、天秤からりんごを選び取ってかじるシャディクと
背中合わせで描かれるラウダ

天秤(※正確には天秤状の剣)はラウダのパーソナルマーク、その天秤から奪われたのはりんご(ジェターク社)、りんごを自分のものに(=食い物)にするシャディク。そして背景色で描かれる(=存在が薄くなる)ラウダ。

余談ですが、「天秤と剣」はギリシャ神話の女神、テミスの持ち物です。
テミスは正義と平等、掟の象徴としてしばしば描かれます。彼が天秤状の剣をパーソナルマークに使うのは「我こそが掟で正義である」とという自己表現とも読み取れます。彼の世界を、掟を壊した魔女ことスレッタ・マーキュリーは是が非でも自らの手で裁きたい相手でしょう。

「ガンダムは命を奪う」をもしもラウダが理解していないなら、GUNDフォーマットを使って危険性を知らずパーメットスコアをあげてデータストームに飲み込まれる可能性は十分にあります。
この方法ならパイロットだけが再起不能になり、機体はそのまま残ります。ラウダCEOは重傷、ジェターク社を支援していたシャディクが急遽経営指揮を執る……筋書きとしては面白味に欠けますが、グラスレーという囲いの中から外に出て支配する側に回ろうと画策するシャディクなら十分あり得る手法です。

ラウダのパーソナルマークの由来、そしてシュバルゼッテの基本兵器が「処刑人の剣(仮称)」のため、パイロットはラウダだと予想されます。
彼は専用ディランザの基本兵器に大型ヒートアックスを用いています。突き刺す、という動作がなければ大剣も大斧も振るい方は同じですので、スムーズに使えるでしょうが……彼、CEOなんですよ?それをどこかに置き去りにしてしまうほど怒りに我を忘れて搭乗するんですか?
彼はおそらく休学して(しぶしぶ)CEO職に邁進していますよね?
どうやってシュバルゼッテに乗って、そしてどこで、誰と(そうなるなら相手はスレッタしかいませんが)戦う気なんですか?そして大剣のみ、補助兵装はどこに?まさか未完成品に乗っている?

「ガルマ散る」の時は、シャアがガルマに偽情報を与えて釣り出しましたが、水星の魔女ですとモビルスーツが活躍するシーンは限られて、しかもその相手がおそらくスレッタだとすると場面も絞られます。
その条件はどうやって作り出すんだい、シャディク?

……と、つらつらと妄想を並べてみました。

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