パーメットとボゾンとデータストームと
注意事項:
この文章はとあるプラモデルの説明書に記載されていたある単語について妄想を炸裂させたものです。取り扱いには十分お気を付けください。
あと、若干ですが最後の方で脳について触れますので、気持ち悪くなるかも知れません。
私は学生時代に人体生理学を、社会人になってネットワーク構築を少しかじっただけの素人ですので、この内容は不正確な表記を多々含みます。むしろコメント、ツッコミ、訂正その他諸々お寄せいただけると幸いです。
エアリアル買ったよ!
先日発売されたプラモデル「FULL MECHANICS 1/100 ガンダムエアリアル」。
カッコイイ!素敵!ということで、私も購入しました。
FULL MECHANICSエアリアルの説明書にこんな記述がありました。
「パーメットによって、人類は宇宙開拓を飛躍的に導くことになる。この鉱石から発見された新元素はボゾンによる情報共有を行うという不可思議な性質を持つ」
……ボゾン?
全文読むの面倒な方のために妄想の結論だけ
"パーメットはどれだけ膨大な情報であってもバケツリレー方式で伝達を行う"
"データストームで最終的にパイロットが死んでしまうのは、脳に直接膨大な情報を送り込まれるから"
以上です。
ボゾンという単語について
ボゾン(Boson)、とはボース粒子のことです。
インドの物理学者、サティエンドラ・ボースの名に因んでつけられました。
何を言っているのか全くわかりませんでした。
もう少しわかりやすい説明はないものか、と思い検索したところ、こちらのページを見つけました。
これによると、比較対象となっているフェルミ粒子は1つの状態で1つしか粒子を運べないが、ボース粒子は1つの状態で複数の粒子を、重複することなく運ぶことができる、ということになります。
"粒子"を情報に置き換えると、意味が伝わると思います。
一文にまとめると
"パーメットはボゾン(ボース粒子)の性質を利用して情報を重複することなく共有できる"
水星の魔女公式サイトではパーメットについて「情報を共有する」と記載がありますが、重複しない=同じ状態は1つしか存在しないので、パーメット同士の情報共有とは、情報に一切の変化を与えることのないバケツリレー方式で受信先に向かって情報を送る、ということになります。
おそらくですが、「ボゾンによる情報共有」とはこういう状態を指し示しているのだと考えられます。
そしてもう一つ。
同じ文章の中に「不可思議な性質」という部分があります。
不可思議、とは漢字圏でのみ使われる数字単位です。
英語版表記では"不可思議"の部分は"mysterious"と書かれていますが、そもそも不可思議は英語圏にはない概念のため、こう(というかネタバレ防止のために)翻訳するしかなかったのだと思われます。
不可思議の部分を不思議に変えても和文表記は余裕があるので、あえて"不可思議"を使ったことに意味があるのではないか、と私は考えています。
不可思議の部分を考慮に入れると
"パーメットは事実上、どれだけ大きな情報でも共有(=伝達)できる"
こうなります。
次の項目でもう少し掘り下げてみます。
現代の通信方法には問題がある
携帯電話、あるいはスマートフォンをお持ちの方は「パケット通信」という単語をどこかで聞いたことがあるのではないでしょうか。
パケット、とは「小包」という意味です。
通信で小包?何じゃそりゃ?ですよね。
現代社会において情報を通信でやり取りする場合、大きな(=膨大な)情報も小さな情報もみな「パケット」と呼ばれる単位で一旦小分けにして受信側に送ります。
現代では光ファイバーや、携帯用通信回線なら5Gなど、どんどん回線速度が上がってはいますが、それでもいまだに速度には限界があります。
回線速度とは太さの決まった土管のようなものです。
大きな情報を加工せずにこの回線(土管)の中に送り込んでしまうと、突然詰まって受信側に届かない可能性があります。さらには回線(土管)をふさいでしまうことで、回線を使いたいほかの人が困ってしまいます。
ですので、まず回線(土管)の中をスムーズに通れるよう、元の情報をパケット(小包)サイズに切り分けてから受信側に向けて送信し、全てのパケットが集まったら受信側で一つの情報にまとめ直す、という方法で情報通信を行っています。
パケット通信の欠点はざっくり上げると、
1)全てのパケットが揃うまで情報を元の状態に戻すことができない
2)大きな情報をパケットに変換すると大きさに比例してパケット数が増える
3)パケットを揃えてから元の情報に戻すまでに時間がかかる
4)受けとったパケットを元の情報に戻すには、受信側のコンピュータの能力によって必要な時間が変わる
3)と4)に関しては受信側で解決しなければならない問題ですが、こちらに関してはアド・ステラ世界においては"量子コンピュータ"という、現代社会で普及したコンピュータよりもハイスペックなものが使われていますので除外します。
1)と2)の最も深刻な問題は、状況によって情報の大きさが変動することにあります。
やり取りする情報そのものが小さければ何の問題もありませんが、情報が大きくなってしまうと送信側と受信側双方に負担がかかります。
送信側「情報が大きいから小分け(=パケットに変換)するの大変だよ~面倒臭いよ~」
受信側「パケットがどんどん送られて来るよ~いつになったら終わるんだよ~」
……こんな感じです。
ところが、(上で予想される)パーメットの性質「ボゾンによる情報共有を行うという不可思議な性質」を利用して情報のやり取り(=通信)を行うと、1)と2)の問題が綺麗に解決することになります。
情報をいちいち小分けにすることなく、そのまままるごと受信先に直接送り付けるのです。
この仮定……もとい妄想がアド・ステラ世界に存在する事実ならば、どれだけ大きな情報だったとしても、パーメットを介することで回線速度を気にせずに、さらには情報を小分けにする手間を省いてやり取りができます。
上の画像は、プロローグにおいてエリクトの父ナディムと、オックス・アース本社のヤマオカなる人物が通話しているしているシーンです。
地球上に本拠地があるオックス・アースと宇宙のどこかにある小惑星フォールクヴァングの距離は、フォールクヴァングの所在地が地球月ラグランジュ・ポイントのどこかにあると仮定しても最低約6万km強離れています。
現代においても、TVの生中継などで日本と遠く離れた場所を結んで会話を行うと時差が発生して話がズレている、あるいは噛み合わない、という場面を見たことがある方はいらっしゃると思います。
ですが彼らにはそれがありません。
これは映像付きの音声、という肥大しがちな情報を長距離情報通信を光速、ないしは光速に近い速度で(=時差ゼロで)行っていると考えられます。
この部分がおそらくは、パーメットが「ボゾンによる情報共有を行うという不可思議な性質」を利用した、その実例の一つと私は見ています。
パーメットがボゾンでデータストーム?
上のナディムとヤマオカの通話については、二人がそれぞれ通信用のコンピュータを挟んで行っていたため、情報はコンピュータ間でやり取りされ、二人はその結果を見ていた(=コンピュータから返ってきた情報を元に話をしていた)だけ、となります。
では、GUND-ARM=ガンダムタイプのモビルスーツはどうでしょう?
GUNDはもともと、人体と欠損した部分を補うデバイス……例えば義腕などをパーメットで繋いで操作するものです。
転じて、GUND-ARMはGUND技術をモビルスーツ操縦に投入し、操縦反応速度の著しい向上、そして空間認識能力の増大による次世代群体遠隔操作兵器システム「ガンビット」の運用を可能にしたものです。
プロローグにおいては、TVでコメンテーターがGUND-ARMについて「想像してください。非生物機構で動く18mもの巨大な体を無理矢理人体とリンクさせて制御させるんです。搭乗者の負荷は計り知れませんよ」と語っています。
先ほど、例としてオックス・アース本社-フォールクヴァング間の長距離通信について、「オックス・アースとフォールクヴァングのコンピュータ同士で行われた」という説明を書きました。
では、GUND-ARMの場合、誰と誰が情報のやり取り(=通信)を行っているのでしょうか?
それは、GUND-ARMに搭載されたコンピュータと、パイロットとなる人間です。
人間とコンピュータは使用言語が異なる
13話でレネがロウジに「ホルダーの決闘義務だっけ」と詰めより、それに困ったロウジが呟いたたった一言「ハロ」だけで、ハロに搭載されたAIがロウジとレネの会話を読み取り、この場で必要とされる回答を音声でアナウンスしています。
ここでは、ハロに搭載されたコンピュータ(とAI)が、人間が適切に情報を処理できるよう処理を行い、結果を音声で伝えています。
ですが、GUND-ARMにはその機能があるのでしょうか?
ここではナディムがプロローグで搭乗したLF-01に焦点を絞ります。
LF-01はパイロット(ここではナディム)の音声を拾ってパーメットスコア3の状態に移行し、ナディムによるガンビット操作の仲介を行っています。
一方、LF-03はナディムの脳をコンピュータに見立て、ガンビットの操作結果を直接送り込んでいます。……コンピュータの思考パターンをそのままに、人間が理解できる形に翻訳することもなく。
この場面ですが、ナディムはLF-01から操作結果のフィードバック……つまり、反応速度の向上や空間把握能力の増大などの、未加工の情報を脳に直接送り込まれて受け取り拒否もできず、演算速度をどうにか速めて情報処理を行うべく、脳に行き渡らせるための酸素と血液の急速な循環を身体に要求した結果「ナディムの呼吸が一気に荒くなる(小説版プロローグより抜粋)」症状を起こしている、と私は考えています。
残念なことに人間とコンピュータは使用言語が異なります。
LF-01には音声認識機能を経由したコンピュータ言語への変換機能が搭載されているようですが、膨大に膨れ上がった情報を人が理解可能な言葉に翻訳し、情報量を調節して返信する機能は持ち合わせていないものと推測します。
ソフィは「ガンダムは暴力マシーン」と表現しました。
暴力マシーン、つまり兵器ならばパイロットに優しい機能を取り付けることはまずないでしょう。
ロウジのハロのように、パイロットにちょうど良く情報が伝わるよう調整してくれる機能など搭載していないのではないでしょうか。
パーメットスコアとデータストームとパイロットの死
パーメットスコアの数値向上要求とは、パイロットからGUND-ARMに対する操作要求深度の向上、そしてGUND-ARMからパイロットへの情報解像度の強化と根本的な情報量の増加が発生するもの、と予想します。
データストームについて「パイロットと機体間で情報量が増大し続ける侵害的情報逆流」とあるのですが、パイロット側の要求によってGUND-ARMのシステムがダウンした、というシーンは今まで一度も本編中で表現されたことがありません。
むしろダメージはパイロットだけが一方的に被っているようにしか見えません。
LF-01/02およびすでに販売されたルブリス量産試作型、ガンダム・ファラクト、そしてガンダムルブリス・ウル/ソーンに乗ったパイロットが「ガンダムの呪いで殺される」とは、パーメットスコアが上がることで、結果的に膨大な情報(=データストーム)が直接パイロットの脳内に送り込まれ、脳が情報処理に追われることによって起こる「脳のオーバーヒート」ではないかと私は考えます。
メタ的な話をすると、宇宙世紀ガンダムシリーズでしばしば取り上げられる「ニュータイプとはどれだけ遠く離れていても誤解なくわかり会える人々」というテーマを、「"人々"の部分を機械に置き換えたらこうなるよ、そこに人間を直結したらこうなるよ」という水星の魔女的解釈を見せられているような気がします。