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ヨット・ロックはパンクより攻撃的だ! 猛暑到来記念!『ヨット・ロック~AOR、西海岸サウンド黄金時代を支えたミュージシャンたち』より、イントロを公開。

「ヨット・ロック」ムーブメント…。それは、そもそもLAの売れない(お金のない)俳優予備軍や脚本家志望の若者たちの内輪ノリからはじまった。中古レコード屋で安く売られているレコード(つまり、レア盤ではなくヒットして大量につくられ、飽きられていた作品たち)を買いまくるうちに、バック・ミュージシャンやプロデューサー、作曲家たちの匠の技に気づき、その名曲誕生秘話(妄想)を低予算コメディ・ドラマ「Yacht Rock」として、仲間たちで制作したのだ。

「ヨット・ロック」と呼ばれるジャンルは、日本ではAORとして、長く親しまれていたが、じつは本国アメリカでは、80年代後半から21世紀になるまで20年ほど見下されていたジャンルだった。2005年に配信スタートしたドラマ「Yacht Rock」は、その鉱脈を掘り起こし、関連ミュージシャンに取材したこうした本が出るまでになり、AOR先進国=日本でも初CD化楽曲を含むコンピ「ディス・イズ・ヨット・ロック」がリリースされるまでになった。往年の名曲をカバーするヨット・ロック・レヴューも大人気で、音楽的にも本気度が高く、競演したミュージシャンからは絶賛されている。

ヨット・ロック
AOR、西海岸サウンド黄金時代を支えたミュージシャンたち
グレッグ・プラト 著 奥田祐士 訳

以下は、『ヨット・ロック~AOR、西海岸サウンド黄金時代を支えたミュージシャンたち』に寄せられた「サタデー・ナイト・ライブ」でも人気の、70 年代西海岸ロックのパロディ・バンド、ザ・ブルー・ジーン・コミッティーのフレッド・アーミセンによる序文である。ちなみにザ・ブルー・ジーン・コミッティーのアルバムも最高ですよ。

 ぼくにとって〝ヨット・ロック〞は耳新しい言葉だ。ぼくの知るかぎり、ジャンル自体はもう何十年も前から存在していたのだが、どうやらこの名称はあとづけらしい。それはそれでかまわないと思う。
 無声映画時代だって、当時から無声映画時代とは呼ばれていなかったはずだ(その時代をぼくがまちがって記憶している可能性もあるが)。ぼくはこの手の音楽が大好きだ。だれだってそうだろう。フォークやソフトな音楽嫌いを公言している人たちだって。
 音楽に対する人々の気持ちをいちばん知りやすい場所が車のなかだ。シールズ&クロフツの〈サマー・ブリーズ(Summer Breeze)〉がかかったら、人はぴたりと静かになる。一気に遠い場所へと誘ってくれるからだ。
 このスタイルが生まれたこと自体が驚異だろう。当時、自分が売れないミュージシャンだったと想像してほしい。あそこまで優しくプレイするには、信じられない量の自制心が必要だったはずだ。電気楽器を手にすれば、ちょっとでもヴォリュームを上げようとするのが人間の性なのだから。
 ドラムもそうだ。あのデッドなタムタムの音は大胆だった。どうしてあんな真似をしたのだろう? ヨット・ロックを聞いていると、パンク・ロックを聞いているときと似たような気持ちになる。あまりにデリケートなせいで、逆に攻撃的に思えてくるのだ。ちなみにぼくは、エレピの音も大好きだ。
 最近親しくなったアメリカのジェリー・ベックリーが、ああいうサウンドになったのはひとつの曲にいくつものテイクを費やしていたせいだと説明してくれた。ぼくにはその全テイクがありがたい。この音楽づくりに関わったすべての人々、そしてそれを受け継いでくれる未来のミュージシャンみんなに感謝。

目次と登場人物たちも挙げておこう。

最後に、2019年8月23日(金)には、都内でヨット・ロックイベントが2つも開催されるという惑星直列のごとき現象も起きている。ぜひチェックを!

2019年8月23日(金)OPEN 18:30 / START 19:30
「新・オールディーズまつり~夏の終わりのヨットロック~」
【ゲスト】奥田祐士(翻訳家)『ヨット・ロック』翻訳者
【出演】萩原健太(音楽評論家)、祢屋康(レコード・コレクターズ編集部)、能地祐子(音楽評論家)
【会場】ネイキッドロフト
東京都新宿区百人町1丁目5-1 百人町ビル
TEL 03-3205-1556
【料金】予約¥1800 / 当日¥2000(+1drinkから)
ご予約・詳細はこちら
https://www.loft-prj.co.jp/schedule/naked/124461
2019年8月23日(金)開場19:00 / 19:30 ~ 21:00
Light Mellow presents 音盤&トーク・ライヴ vol.16
テーマ:ヨット・ロック
出演:金澤寿和
入場料1,500円+1ドリンク
予約優先 / 定員に達し次第受付終了
ご予約はこちらから→https://airrsv.net/gakki-cafe/calendar/menuDetail/?schdlId=T000CBB0F7
※音楽ライターの金澤寿和がAORをテーマにお届けするトーク・ショウ&レコード・コンサート。ボズ・スキャッグスをテーマとして大好評を博した前回に続くvol.16では、AOR、シティ・ソウルに続く全米音楽シーンに誕生した温故知新の新ジャンル ”ヨット・ロック”を特集します。


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