結局、調停員を味方につけた方が有利なんだな。
新しい弁護士になって初めての調停の日。調停前に弁護士は「ダンナさんからの批判が止まりませんが、言われたことは聞き流して、相手にしないこと」と釘を刺された。
今までの調停では、夫が浴びせてくる罵詈雑言に対して「それは悪意ある編集をされた、事象の一部を切り出したものである」と状況を説明することに労力を割いていた。
しかし、それこそが夫側弁護士が仕組んだ、調停員が私への心象を悪くするための策略であるというのだ。
今の私は、調停員からすると“夫に食ってかかる鬼嫁”であり“収入資料を秘匿している怪しいヤツ”という印象であると。今回の調停から、その印象を覆していく。そのためには、夫の挑発にのらないことが、まずなにより重要なのだ、と諭された。
私はこれまで「夫は個人事業主であるから収入状況を明らかにせよ!」と要求していたにもかかわらず、今まで華麗にスルーされてきた。それと同様に夫の「妻から精神的苦痛を受けてきた可哀想な夫」アピールは華麗にスルーしろ、と。
その上で、収入資料をさっさと出しましょう、という。私は夫側が支出入を公開しなければ、こちらからは公開しないというスタンスでやってきていた。
現在は調停なので、収入資料の提出は“任意”である。しかし、調停から裁判に移行した場合、収入資料の提出は“義務”になる。どうせ出さねばならないのなら早めに提出してしまった方が、調停員の心象も良くなるし、無難なのだそう。
というわけで、4回目の調停の1週間前に、私は過去2年分(2020年度、2021年度)の源泉徴収票を提出した。それと同時に、夫にも会社の決算報告書と預金通帳開示などを求めた。
調停の1週間前に提出した書類は、中身の精査に時間が取れないとして、議題に上るのは次々回の調停になる。こちらが資料請求をした夫側の書類は、第5回目の調停の1週間前に提出されてくる。夫の収入についての実質的な話し合いは第6回目の調停からということになる。
調停は1ヵ月から1ヵ月半に1度のペースなので、夫の収入状況について話ができるのは3ヶ月後ということになる。私の収入については、次回調停から議論がスタートする。
第4回目の調停は、双方の収入に関するエビデンスが不十分であるという前提で進められた。
私の弁護士は「相当額の収入がなければ、ローン支払いや会社の事務所の家賃、夫自身の住まいの支払いなど払えないはずである」という観点から「夫の収入が年120万円というのは正確ではない」と主張。まずは、住居費、食費、雑費をどのように捻出しているのかを明らかにされたいと要求した。
その上で、別居原因について言及した。
婚姻期間中、私と夫がどのように生活していたか。旅行に行ったり、プレゼントを贈りあったり、晩ごはんはどんなに遅くなっても一緒のテーブルを囲んでいたことなど、普通に会話がある夫婦だったと主張した。
そんな中、夫が借金を宣言して突然の失踪と離婚請求。その上に生活費の支払い要求まで。妻である私は、急な出来事に大変ショックを受けていると主張した。そして、同居義務を放棄した一方当事者からの婚姻費用分担請求事件は、相当額の減額をすることができるのではないかと、過去の判例を添えて陳情した。
それに対して調停員は「源泉徴収票の提出ありがとうございます」とした上で、離婚理由については十分に話し合った、として取り合わず、婚姻費用請求の減額陳情は華麗にスルーされ「奥さんはなんでダンナさんに婚姻費用を払いたくないのか」という質問に終始した。
結局のところ、調停員は自分が聞きたいことしか聞いてこない。法に則って正しいことを主張しても、調停員の心象が悪ければ意味がないのだ。
さらに追い打ちをかけるように、私の源泉徴収票を見た夫は「妻には給与所得の他に収入があるはずなので、課税証明書と確定申告書の提出を求める」と言ってきた。
やれやれ。