見出し画像

ドバイ不動産は日本の法人税の節税となるか?気を付けて!その考察!その1

Q1
日本法人での1億円の利益をUAEの法人設立及びUAE法人の物件購入資金として送金した場合、日本法人の経費になるか?
A1
結論から言うと、**日本法人がUAE法人を設立し、そのUAE法人へ物件購入資金を送金したとしても、通常は日本法人の経費(損金)にはなりません

  • 日本法人が海外法人(子会社)を設立した際に出資した金額は、**投資(資産)**として計上されるため、損金(費用)にはならないのが一般的です。

  • 同様に、融資(貸付)の形で送金した場合も、貸付金として貸借対照表上の資産計上となり、即時に経費になることはありません

以下、もう少し詳しく説明します。
1. 出資(増資)の場合
1-1. 子会社設立・増資の会計処理

  • 日本法人がUAE法人の株式を取得・引き受ける形で資金を拠出する場合、**出資額は「投資有価証券」等の科目(会計上は資産)**に計上されます。

  • これは日本法人の費用(損金)ではなく、「投資による支出」です。

  • したがって、その年度の損益計算書には原則として経費として計上されず、法人税の課税所得も減りません

1-2. 税務上の取り扱い

  • 日本の法人税法上も、出資金は資産の取得であり、「費用(損金)」ではなく「資本取引」に当たります。

  • したがって課税所得の計算上、即時に控除されることはありません

  • 後々、子会社株式を売却したり、清算したりする段階で「売却益・売却損」や「清算損」が発生することはありますが、出資時点では費用にはならないのが原則です。


2. 貸付(融資)の場合

2-1. 日本法人から子会社への貸付

  • 日本法人が、UAE法人へ「融資(貸付)」の形で資金を送金する場合は、日本法人の会計処理上、「貸付金(長期貸付金・短期貸付金等)」として資産計上されます。

  • 当然ながら貸付時点で費用にはなりません

2-2. 金利収入と税務

  • UAE法人に対して適正な金利を設定した場合、日本法人には金利収入が計上されます。

  • その金利収入は日本法人の売上(収益)になり、逆にUAE法人側では費用(支出)になります。

  • ただし、これで日本側の利益を減らすわけではなく、むしろ金利収益が増える可能性があるため、節税目的にはつながりにくいと言えます。

  • 不当に低い金利や無利息で貸し付けた場合は、日本の移転価格税制等のリスクが発生することがあります(税務当局が“適正金利との差”を調整して課税する可能性)。


3. 例外的に費用として計上されるケースは?

3-1. サービス提供契約や業務委託契約

  • もし日本法人がUAE法人に「業務委託」や「コンサル契約」「サポート契約」などの形で対価を支払う場合、業務委託料などは費用として計上できます。

  • しかし、その場合は実態のある役務提供(例:マーケティング、営業サポート、不動産管理業務の受託 等)が必要であり、実際にサービスが提供されている証拠や、移転価格税制上問題のない適正な対価設定が求められます。

  • さらに、今回の質問では「物件購入資金」という性格なので、単なるコンサル料や業務委託料とは違い、物件購入という“資産取得”に使うお金を日本法人が支払うだけでは、費用計上の要件を満たしづらい**のが現実です。

3-2. リースやレンタル料、ライセンス料など

  • たとえばUAE法人が所有する不動産を逆に日本法人が借りる(リース契約)などの取引があれば、日本法人にとっては家賃・リース料が経費になる可能性があります。

  • しかし、それも**実態のある“使用”**が前提であり、単に海外不動産を購入するために送金しただけでは経費にはなりません。

  • またライセンス料やロイヤリティ等の取引を考えた場合も、無形資産・技術提供の実態が無ければ課税リスクがある(移転価格税制上、否認される)ため注意が必要です。

いいなと思ったら応援しよう!