見えてきたカタチ 見えてきた思い (徳島宿プロジェクト)
倉庫に暮らし始めて、早6ヶ月。
春、そして夏が過ぎ、朝晩寒さも感じる秋になった。
随分時間も手間も掛かったけれど、ようやく諸々の見積もりや申請、許可取りの作業に目処がついて、宿改装に向け具体的なイメージプランも出来上がってきた。
(表題写真は客室の小窓から海側を見たイメージ、ガラスの向こうに海が見える)
これまでの打合せで、おぼろげに想像していた世界そのものなんだけど、リアルに想像できるようになることで、ここから先の準備や運営のスタイルなどが現実味を帯び始め、ビジネスとしてどうかなど、無邪気に喜んでばかりはいられないという気分になってきた。
そんな折、宿づくりの参考にと奥さんがメルカリで手に入れてくれた本が届いた。
ページをめくると、デザインをメインにしている本だけあって、こりに凝ったデザインやインテリアの写真が目に飛び込んできて圧倒される。とにかくインスタなどで持てはやされるであろう「映え映え」の写真ばかり。最近の宿はここまで洒落ていないとダメなのか、ここまでお金を掛けて採算は取れるのだろうかなど、参考どころか、心が挫けて落ち込みそうになってくる。
これって良くない兆候、映像仕事の時もそうだけど大きな仕事で緊張感を伴うと、楽しむという感覚が薄れ、周りの目ばかりが気になり始める。
・・・いやいやいや
今回の宿プロジェクトは、自分だけのプロジェクト、思うがままに進めればいい。
お洒落さを競う必要も、安さをPRする必要も無い。ましてやバスるとかを考える必要も無い。自分の家に友達を泊めるように、街を案内し、語らい、旅人それぞれが自分のスタイルで宿を楽しんでもらえるきっかけ作りができればそれでいい。
ちゃんと自分で楽しめる「大人の一人旅」を支える安らげる宿。
逆に「そんなお客さん」に集まってもらうにはどうしたらいいんだろうか?
そのことを考える方がずっと大切だと気づいた。
どちらかというと「間口を広く」ではなく「間口を狭める」必要があるのかも。
奥さんが手に入れてくれた本は、宿機能のディテール見本として、機能をデザインする際の参考にさせてもらえばいいと、ようやく平静な心を取り戻した。
そう言えば、鳴門の喫茶店で地元の新聞を読んでいて、嬉しい記事を見つけた。
前から噂はあったのだが、大鳴門橋に自転車道を整備して淡路島と鳴門を繋ぐという事業が、いよいよ来年から始まるらしい。現在自動車が走る道の下に、将来新幹線が走れるようもう一段道があり、現在はその一部が観潮のための遊歩道となっているのだが、それを利用して自転車道を作るというもの。
これって、自転車乗りにとっては画期的なことで、渦潮を眼下に眺めながら自転車で走れるとなると、一般の人たちもきっと走ってみたくなるに違いない。
GO TO 何とかもいいけれど、こうした事業をあちこちで展開する方が長い目で見ても観光事業が盛り上がるのにと思ったりもする。
自分もロードバイクに乗るので、こんなに楽しみなことは無いし、鳴門で宿をやる身としても、凄い追い風が吹いている気がするな。
改めて、泊まること自体が目的の宿では無く、町を知る入り口の機能として宿を捉え、この町に暮らす者として、この町で過ごすユニークな時間を提案する。あとはそれぞれが勝手に楽しんでくれればそれでいい。
ここにきて、目に見えるカタチだけで無く、いろんな思いも見えてきた気がするな
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