見出し画像

信じる力 (徳島宿プロジェクト)

2011年3月、東北が未曾有の震災に襲われ、原子力発電所に白煙が立ち登った。
津波で家を流され家族を失った人、流出する放射能のせいで家を追われ路頭に迷う人。表情を失い呆然と立ちすくむ人々の姿をテレビで見るに付け、「私たちに出来ることなんてあるんだろうか」と思考停止に陥った。

当時小さなギャラリーを運営しており、間近に控えたアート&クラフトのイベントを開催するべきか否か、私も参加クリエイターたちも、どうしようもない無力感に苛まれたことを今でも鮮明に覚えている。

その後、友人のミュージシャンの募金活動に協力するカタチで、小さなチャリティイベントを立ち上げることに。すると大人から子どもまで100人を越える参加者が次々と集まり、その後5年間も続く恒例イベントへと発展していきました。

震災復興NOMAチャリティうちわ展「風をおこそう!」
アーティストだけで無くお年寄りから子どもまで同じうちわにデザインをしてもらい、1枚1000円で販売その売上げは経費を除き、震災復興義援金として大船渡市の学校に直接届けた。

このイベントを通じて、人々の痛みに思いを馳せ行動することが、大きな無力感に襲われ、同じように不安な日々を過ごしていた私たち自身をも救うという事実に気がついた。このイベントで出会ったアーティストやクリエイターたちは今でも、私にとって特別な仲間となっています。

あれから早10年、今度はコロナという新たな危機がやってきた。この不安に押しつぶされないためには、人々の気持ちに寄り添い行動することが一番。あのチャリティイベントでの経験が、この宿プロジェクトを始動させるキッカケにもなりました

プロジェクトを進める中で、コロナ禍で売上げが下がり苦しんでいる人間が、コロナ禍で不況に陥っている業界に進出するのは無理があると何度も指導されてきました。けれどこのコロナ禍だからこそ、「旅」というリアルな体験を人々が渇望しているのも事実。閉塞感に包まれた今の世の中で「旅」こそが、好奇心を取り戻し、これからの新しい生き方や暮らしに気づくキッカケを与えてくれるんじゃないか。何より人と人とのリアルな出会いこそが、人の心を癒やすに違いない。

宿予定地から望む小鳴門海峡の夕焼け

そんな思いの旅人を支える宿とは、どんなものか・・・
宿主と旅人が酒を酌み交わし、知らない者同志熱く語り合う、そんな宿があってもいいんじゃないか。大人が気ままな一人旅を楽しめる、そんな今までに無い宿を作りたい。ビジネスとして成立するのか、お客様に受け入れてもらえるのか、いろんな不安はあるけれど、今必要なのはそうした自分の思いを「信じる力」なんだと強く感じています。

宿として改装予定の倉庫
敷地内に置かれていたコンテナ、裏山には山桜が咲いている

宿の駐車スペースに元々倉庫として置かれたコンテナがあり、お客さまの思索や創作活動を支えるアトリエとして、またワーケーションスペースとして自由に使ってもらえるよう改装を進める予定です。

また、これまでお世話になったクリエーターのネットワークを活かして、様々なワークショップやギャラリーイベントも開催予定。宿としてだけで無く、滞在型のアトリエ&ギャラリースペースとして稼働する予定です。

今でも稼働しているご近所の造船所

ここには、観光地めいた雰囲気は何も無いけど、
海に囲まれた小さな小さな港町で、旅人の好奇心に火を付けるお手伝いをしたい。
今は、そんな思いで一杯です。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?