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【座談会レポート】キャリア継続の道筋は一人一人違う。目の前の困難もポジティブに乗り越えて
「ネットの情報は玉石混合。一人一人のキャリアは複雑で個別のもの。自分のことは自分が率先して調べないと誰も調べてくれない。」
2024年4月。アメリカと韓国に駐在帯同しながらキャリアを継続しているお二人をゲストにお迎えして、Xのスペースにて座談会を開催しました。
「駐在帯同中に働くためのポジティブマインドセット」と題して、働く上での税金やビザのこと、そして子育てとの両立についての経験を、Dual代表の加治屋と鳥海が聞きました。
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◾️一人一人のキャリアは複雑で個別のもの。自分から率先して調べる
鳥海:まず初めに、ビザや税金など働く上でクリアしなければならないことに関してアドバイスをいただきたいです。
はる花さん:今日本におられて、駐在帯同後も働きたいと思われている方は、すぐにでも動き出されることをお勧めします。私は駐在の半年前に、職場の上司に帯同後も正社員雇用してもらえないかという打診から始めました。早いという印象を持たれるかもしれませんが、半年前から相談を始めても時間が余ることはありませんでした。
リモートで現在の仕事を継続するのか、新しい仕事を探すのかなど、働き方には選択肢があります。動き出してから見えることもありますので、まずは動かれるのが良いと思います。
ビザに関していえば、ご自身のビザ種別がどのようなものなのか、帯同ビザで就労が可能なのか、可能である場合の条件などを調べます。調べることでもっと知らなくてはいけないことが次々と出てくると思います。私は、ビザに関しては帯同先の国の大使館,
そして夫の職場の担当者に確認を取り、税金に関しては、国税庁や自治体の税務署に電話で直接問い合わせたりしました。もし協力的であれば、自分の職場の顧問税理士や社労士にも相談が出来るといいと思います。
もちろんネットでの検索もしましたが、自分にピッタリの情報があるとは限らない上、情報が最新であるかや正確性の判断も難しいので全てを鵜呑みにはできません。公的機関や専門家の情報をメインにしつつネットも活用しながら網羅的に情報収集をしていきました。
鳥海:素晴らしい行動力ですね!これだけ多方面から調べるのは大変だったと思います。働くことを諦めたくなる時もあったと思いますが、諦めずに進めたのはどうしてですか?
はる花さん:1つは、1度目の駐在帯同の時に「仕事を手放した後悔や喪失感」を感じたからでした。もう1つは、私の会社もコロナの影響でリモートワークが一気に浸透していたので、働ける可能性があると感じたからです。会社としての前例がないので難しかったですが、前例を作れば国内転勤などでも応用できるのではと考えて調べ続けました。
あきこさん:はる花さんもお話されたように、ネットだと正確な情報が取れなかったので、ビザに関しては駐日の韓国大使館に電話で問い合わせました。税金に関しては、国際税理士をネットで検索して直接メールで相談しました。なるべく人を介していない情報を得るように努めました。
加治屋:私がブラジルに帯同した当時もお2人がおっしゃる通りで、ネットの情報は正しいかどうかが判然としないものがある感じでした。信頼性という面では少し難しかったです。どこにいけばいいかなど大枠はネットで調べておいて、その後、直接問い合わせをするといった流れで進めました。帯同国の労働局に問い合わせたり、配偶者の勤務先が依頼しているコンサルティング会社にお金を払って相談しました。
鳥海:皆さんそれぞれ専門家とお話される際に、難しかったポイントはありますか?
はる花さん:フリーランスとなるので、報酬の取り決めに必要な情報の把握に努めました。私の場合は、クライアントが日本所在の企業ということもあり報酬は日本円で日本の口座に振り込まれることになりましたが、消費税や源泉徴収税の取り扱いはクリアにした上でクライアントとの報酬額の設定をするといいと思います。今はアメリカで現地の税理士のお世話になっています。わからないことがあれば、その都度聞きながら乗り越えています。
あきこさん:私も自分が確認したいことは何なのかを整理しながら、その都度、税理士に「これはどうですか?」とお聞きしていました。駐在帯同中の働き方はとても複雑で個別化されています。私が働きたい企業が必ずしも税金関係のことを理解しているとは限らないので、自分が率先して調べないと誰も調べてくれません。
◾️時差を味方につける働き方を
鳥海:アメリカやブラジルなどで日本と仕事をすると時差が大きいので、働くのを諦めてしまう方がいらっしゃるのではないかと思います。時差の活かし方についてのアドバイスをいただきたいです。
はる花さん:私のいるワシントンDCは日本マイナス14時間(サマータイム期間はマイナス13時間)です。日本と昼夜が逆転している状況です。時差をネガティブに考えずに、ポジティブに捉えながら同僚とコミュニケーションをとるといいと思います。私が元職場の方に言われてうれしかったことは「じゃあ、これからは24時間営業になれるね。」です。私もこの心づもりでやっていこうと思いました。日本からの依頼を、日本が夜の間に仕上げて、朝にはお返しする。そうやって時差を味方につけるような働き方を意識しています。
鳥海:ミーティングなど、実際に時間を合わせなくてはいけない時はどうされていますか?
はる花さん:離れて仕事をしているからこそ、会議などで直接顔を見ながら仕事する時間がとても貴重だと思います。私の場合、会議はこちらが夜の8時とか9時(日本時間の午前中)に設定しています。夜遅い時間になるのですが、その間子どものことは、夫とスケジュール調整したり、シッターさんをお願いすることもあります。
ただ、時差ってやはり身体に影響しますので、本当に無理はしないほうがいいです。現地時間の何時以降はつながりません。と最初からクライアントさんに宣言して認識してもらうのもいいと思います。あるいは深夜割増料金を設定しておくのも一つの方法です。
加治屋:ブラジルは時差がちょうど12時間でした。そこまで違うと逆にやりやすかったです。例えば、私が5時や6時に起きて、日本時間の夕方の会議にしてもらったりしていました。日本が夜の間に仕事が進んでいるというのは、クライアントさんにもとても喜ばれました。はる花さんのおっしゃっている、できる範囲を自分で区切るというのはとても大事だと思います。私は、「いつでもミーティングできます!」と昼夜関係なく対応していたら、心身ともに疲れてしまったことがありました。
鳥海:今日だけ頑張ろうが、いつも頑張ろうになってしまうということですね。自分で自分の時間を決めて、同僚の方にお伝えして、自分を守りながらやっていく強さが必要ですね。
◾️子育てとの両立ができる環境を整える
鳥海:最後に子育てと仕事の両立について教えてください。両立について不安に思う方のお声をいただいています。
あきこさん:1つは両立できる環境を整えることです。駐在帯同が決まった時に意識したのは、子どもの学校選びです。現地校なのか、日本人学校なのか、インターナショナルスクールにするのかによって朝の時間と帰りの時間が全然違います。また休みの長さも違います。学校によって仕事のできる時間も変わってきます。日本のようにフルタイム勤務で働きたいのであれば、学童があるかないかも関わってきます。
鳥海:インターナショナルスクールの場合は、夏休みやホリデーも長いですよね。その間、お仕事はどうされていますか?
あきこさん:仕事によって違うのですが、前職の業務委託では子どもたちが休みの期間は働けないというのを事前に交渉していました。前職は時給だったので、決まった時間に働く必要があり、子どもたちが休みの時は仕事に集中できないと思ったのです。現在は成果報酬型の仕事に変えているので、空いた時間に仕事を進めて、短い時間で成果を上げるように頑張っています。時間に拘束されることが少なくなり気持ちが楽になりました。
子どもたちが休みの日は1日2時間ぐらい、子どもたちが学校に行って集中できる日は4時間ぐらい働きます。子どもが下校した後はなるべく仕事をせず、親子の時間を楽しんだり宿題のサポートをしています。
もう1つ、両立をする上で大切なのは、体力だと感じます。やはりお母さんが健康なことが一番!疲れたら休んで、一人になりたいと思ったらちょっとお出かけして、自分がご機嫌になれる方法を知ることが両立する上でとても大切だと感じた1年間でした。
はる花さん:私の場合は、アメリカに来たときはまだ子どもが未就学児でした。日本でいうところの保育園を探すのですが、アメリカのプリスクールやチャイルドケアは特に私立となると日本と比べとても高いので、その心づもりで渡航前からいくつか目星をつけていきました。個人事業主としての私の働き方は裁量労働制で、仕事時間はある程度自分でスケジューリングできるので、子育てともバランスを見ながらやれています。夜の会議が決まれば早めに夫ともスケジュールと調整をして夫婦で解決しますが、どうしてもそれが無理な時には柔軟にシッターさんや時には友人など第三者に助けてもらいながら工夫しています。
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鳥海:あっという間にお時間になってしまいました。ビール片手にもっとお話をお聞きしたいところなのですが、第1弾の座談会はこちらで締めたいと思います。お話をお聞きして、ビザや税金、時差など、個別性の高いことをそれぞれ実現されていると感じました。一見難しそうなことでも、みなさんポジティブに乗り越えてきて、今があると感じます。本日は貴重なお話をありがとうございました!
◾️座談会参加者プロフィール
竹中はる花さん@アメリカ・ワシントンDC在住約3年
夫と6歳の息子との3人家族
2度目の駐在帯同。1度目は仕事を退職して帯同したが、帯同中も仕事をしたい・社会と繋がりたいと感じた経験あり。2度目の帯同は元勤務先の仕事を業務委託として継続し個人事業主に移行。
現在は、複数のクライアントの仕事を受けているがいづれも日本企業のため、14時間の時差を乗り越えてフルリモート勤務中。
あきこさん@韓国在住約1年
夫と8歳の娘さん、4歳の息子さんと4人家族
日本でのフルタイム営業職を退職し、業務委託として元勤務先の仕事を継続。
その後、海外からでも正社員で働ける企業に転職するも、働き方に違和感を感じ、再び転職。
現在は当初とは別の会社の仕事を業務委託で受けている。加えて、帯同前からパラレルキャリアとしてやってきたナレーターの仕事を継続中。
Dual Career Anywhere 鳥海絢@シンガポール在住7年目
夫と娘2人の4人家族
日本ではスポーツ業界で働き、育休中に帯同開始。
育休終了までに本帰国できずフルリモートでの勤務継続も制度上の理由で出来ずに退職。
現在は、日本のスタートアップ企業でフルタイム・フルリモートで働いている。
Dual Career Anywhere代表 加治屋真実
2016年から2018年にブラジルに駐在帯同経験あり。帯同中はリモートワークのフリーランスとして働きながら、駐在帯同家族のキャリア支援をするコミュニティを立ち上げ運営。
帰国後、駐在前に勤務していた会社に再入社。本業と並行して「世界中・日本中 どこにいても夫婦が共にキャリアを重ねていける社会」を目指して、当団体を立ち上げる。
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お問い合わせ先
https://maindualcareeranyw.wixsite.com/dual
Dual career Anywhere会員グループ
https://www.facebook.com/groups/979718236510021
各種メディア
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執筆担当:岡山美和
国立大学や教育系NPOで学校と社会との橋渡し役を担った後、パートナーの国内転勤先で地方自治体のシティプロモーションを経験。
2023年4月よりインドネシア駐在帯同中。現在はライターとして”言葉で残し届ける力”を磨きながら、Dual Career Anywhereに参画。