フォント名の見方
フォント名には、ベンダー(=開発会社)の省略記号、グリフセット(収録文字数セット)、ウエイトなどの情報が入っていることがあります。
それぞれの意味を理解することはフォントを使い分けるヒントとして役立ちます。
この記事で参照しているのは一部のフォントです。
すべてのフォントに共通の情報でなく、フォントベンダー(=開発者)によってフォント名にどのような情報を入れるか、どのように入れるかはさまざまであることに留意ください。
フォント名を読み解くための記号
フォント名には、次に挙げる情報(など)が入っていることがあります。
• ベンダー(開発会社)の省略記号
• グリフセット(収録文字数セット)
• ウエイト
• スタイル
ベンダーの省略記号
多くのベンダーは、フォント名の冒頭に省略記号などを入れています。
• A-OTF、A P-OTF、BIZ:モリサワ
• FOT-:フォントワークス
• DF:ダイナフォント
• DS:デザインシグナル
• MS:マイクロソフト
• HG:リコー
ちなみに「A P-OTF」はAP版と呼ばれ、ここ最近に出てきたものです。
文字の太さを表すウエイト
文字の太さのことを「ウエイト」(または「ウェイト」)と呼びます。
「Light」「ミディアム」のようなキーワードや、その省略形(L、M)、W3/W6 のようにWと数字で太さを表現します(WはWeightに由来)。
同じフォント名でのウエイト違いや斜体、コンデンス書体などのセットを「ファミリー」と呼びます。
フォントによって持っているウエイトの数は異なります。
「MSゴシック」のように1ウエイトしかないフォントもありますし、「ヒラギノ角ゴシック」は10のウエイトを持っています。
たくさんのウエイトが用意されているとき、どれを利用すべきか困ってしまいます。すべてを使う必要はなく、2ウエイト、または、3ウエイトをチョイスします。この際、隣り合ったウエイトではコントラストが弱い(=見分けがつきにくい)ため、1つ飛ばし(または、2つ飛ばし)で選択します。
コンデンス、コンプレス
従来、和文フォントは縦組みを基本に「(仮想)ボディ」という正方形を基準にデザインされてきました。限られたスペースに詰め込むために長体をかけることで縦横のバランスが狂ってしまい、望ましくありません。
和文フォントでもコンデンス/コンプレス書体が増えつつあります。そもそも情報量(文字数)の調整が先決、という議論はさておき、限られたスペースに長体をかけずに入れるときに役立ちます。
2007年に先陣を切ったAXIS Fontはコンデンス、コンプレスの2段階。ウエイトはAXIS Font同様6段階。
モリサワは2013年に「UD新ゴ」をコンデンス化。
90%/80%/70%/60%/50%の5段階で、それぞれELからUの8ウエイトに展開しています。
(この流れに抵抗しているように見えた)フォントワークスも「UD角ゴ_ラージ」(L/R/M/DB/Bの5ウエイト)を長体80%70%60%にデザインしたフォントを2015年にリリースしています。
https://fontworks.co.jp/fontsearch/udkakugoc80pro-b/
欧文フォントでは従来から「スタイル」として揃っているケースを見かけます。ちなみに、Futura Nowだと 107 スタイルもあります(添付はNowじゃないFutura)。
プロポーショナルフォント
次のサンプルを見比べてみましょう。
上は「MS明朝」、下は「MS P明朝」です。ほとんどの和文フォントは同じ文字幅を持ちますが、「プロポーショナルフォント」と呼ばれる一部のフォントは、文字ごとに固有の文字幅を持っているため、文字を入力しただけで文字間が詰まったように表示されます。
「プロポーショナルフォント」にはフォント名に「P」がついています。Windows環境には「MS Pゴシック」「HGPゴシックM」「BIZ UDPゴシック」などのプロポーショナルフォントが付属しています。
「源ノ角ゴシック」をベースにプロポーショナル化した「源真ゴシックP」「源柔ゴシックP」などもありますね。自動カーニング機能のないPowerPointにて重宝します。
一方、プロポーショナルフォントの話題から逸れますが、現在、OpenTypeのプロポーショナルメトリクスによる自動カーニングを使えるアプリが増えています。
モリサワのBIZ UDフォントでは、「P」は英数字のみ、「K」は“かな・英数”もプロポーショナルになっています。
ProやStdなどの意味(グリフセット)
「ヒラギノ角ゴPro W3」や「ヒラギノ角ゴStd W8」などのOpenTypeフォントについている「Pro」「Std」は収録している文字数を表します。
Adobe-Japan1という規格により収録文字が定められています。
同じ「新ゴ」でも、手元に「Pro」「Pr5」「Pr6」がある場合には収録字形数の多い「Pr6」を使います(上位互換性があります)。収録字形数が多いほど、人名の入力時などに「この漢字がない…」と困ることが減ります。
「Pr5」は、「Pro」+「A-J1-5」という意味です。例外として、「ヒラギノPro」はA-J1-5に準拠し、20,317の字形を持っています。
「Pr5」は「プロ・ファイブ」、Pr6は「プロ・シックス」のように呼ばれるのが一般的です。
AJ1-6とAJ1-7の差は2文字。新元号「令和」を構成する2文字を、全角1文字に入るようにデザインした「合字」が増えています。
2文字のためだけにドキュメントでのフォント互換性を配慮してAJ1-7準拠にアップデートされていてもフォント名(および略称)は「Pr6」のままになっています。
※あかつき@おばなさんからご指摘いただいて上の表などを修正しました!
紺野さんからもご指摘いただきました。ツイート内からリンクされているモリサワのドキュメント(MORISAWA FONT DICTIONARY)も必見です。
その他、モリサワの「フォント関連資料」には貴重な文献が揃っています。
Nフォント
「N」がついているものは、「JIS2004字形」に準拠したNフォント(「Nつきフォント」)。168文字が旧字風の字形で表示されます(ただし、フォント名に「N」がついていなくても、Nフォントのことがあります)。
使う上でのポイント
• 「Pro」「Pr5」「Pr6」がある場合には収録文字の多い「Pr6」を使う
• 特に指定がなければ「Nフォント」を使う
多言語フォント
多言語フォントでは次の略語も覚えておきましょう
• 日本:JP
• 中国:CN
• 台湾:TW
• 香港:HK
• 韓国:KR
中国語には簡体字と繁体字がある
• 簡体字:SC(Simplified Chinese)
• 繁体字:TC(Traditional Chinese)
• CJK:Chinese Japanese Korean
• CJKV:中国語・日本語・朝鮮語・ベトナム語
追記(1)
コメントいただきました!
Thinよりも細いフォントがありますね。Helevetica Nowにもあります。
砧書体制作所からは「芯」という細〜いフォントがリリースされています。
追記(2)
今後、バリアブルフォントも増えてきそうですね。「たづがね角ゴシック」のバリアブル版には「Var」がついています。一方、源ノ角ゴシックのバリアブル版には「VF」がついています。
ちょっと自由過ぎるかな〜と思います。
さゆぬさんからコメントいただきました。ご指摘ごもっともです!
なお、多くのフォントのベンダーのサイトには、基本情報として私たちユーザーが求める情報が欠落しています。
フォント名の理解が深まると…
たとえば、フォント名のフィールドに「extrabold」と入力して、Extra Boldのウエイトのフォントを一覧表示したり、
「ud」と入力して、UDフォントを一覧表示することができますので、より早くフォント指定できます。
そこでオススメしたいのが[フォントの強調表示]を⌘ + Tキーに設定すること。
強調表示とは、[文字]パネルの[フォント]フィールドをハイライト表示(=反転表示)すること。そのままテキストを入力できます。
[文字]パネルを開くキーボードショートカットはcommand+Tキーですが、[文字]パネルを開く動機の多くがフォント設定。キーボードショートカットを変更することで、[文字]パネルが表示されていない場合には、[文字]パネルを開いてくれますので一石二鳥です。
環境設定の[テキスト]カテゴリの[フォントを英語表記]オプションをオンにすると、フォント名の表記が英語になります。
たとえば、「UD新ゴ 簡体字」は次のようにややこしくなっているため、多言語フォントの指定の際などに便利です。
• フォント名:UD新ゴ 簡体字
• Illustratorでのフォント名:森泽UD新黑 Gb4
• Illustratorでのフォント名(英語):MO UDShinGo SC Gb4
• フォントファイル名:MO-UDShinGoSCGb4-Reg.otf
ここから先は
DTP Transit 定期購読マガジン
マガジン限定記事やサンプルファイルをダウンロードできます。
定期マガジンを購読されるとサンプルファイルをダウンロードいただけます。 https://note.com/dtp_tranist/m/mebd7eab21ea5