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九死に一生 冷凍庫閉じ込められ事件
こんにちは
5月の半ばを過ぎ、夏日を観測する日もちらほら出てきました。
僕が九死に一生をしたその日は、何もしなくても汗がだらだら落ちてくる、35度を越える猛暑日。
山口のスーパーで新入社員として働く18歳の夏でした。
ミーン ミーン (蝉の鳴き声)
主任
「おい、拓!研修期間終わったし、残業できるようになったから、今日冷凍庫の片付けをして帰ってくれ」
拓
「分かりました!やっときます!」
新入社員の僕は3ヶ月の研修を終え、残業が出来るようになっていた。
拓
「よーし、冷凍庫を完璧に整理整頓して、明日主任とパートのおばちゃん達をびっくりさせてやる!」
僕は、みんなが帰り静まり返った精肉のバックヤードで気合いを入れ、冷凍庫の片付けを始めた。
僕の働いていた精肉のバックヤードの配置はこんな感じ
冷蔵庫の中に冷凍庫へのドアがある。
拓
「うひゃー涼しい〰️天国〰️」
冷凍庫は-20度以下。35度を越える猛暑日に、冷凍庫に入った瞬間は至福の時。しかし1分もすれば呼吸してる鼻と口が冷たく痛い。深く呼吸したら喉が凍るような感じがする。
拓
「やべぇ、さみぃ〰️!あっ、ジャンパー着るの忘れた!」
夏場なので、上は半袖で下は長ズボンの制服を着ていた。
本来冷凍庫に入るには専用の防寒ジャンパーを着る。
拓
「でもまぁ、こうすれば冷気が流れるし大丈夫だろ」
僕は、下図のように冷凍庫のドアを開けっぱなしにして、冷凍庫の冷気を冷蔵庫に逃がし、寒さに耐える作戦に出た。
多分冷凍庫の温度を0℃くらいまであげれる。
拓
「さぁ片付け!片付け!」
僕は寒さに耐えながら15分ほど作業をした。
主任は面倒くさがり屋で、大量発注するタイプの人だったから予想より時間がかかった。
ポツリ(水滴が拓の頭に落ちる)
拓
「あれ、さすがに冷凍庫の冷気が逃げすぎて、結露してきたな」
冷凍庫に置いてあるお肉の表面や壁や天井が、急激な温度上昇によって結露していた。
拓
「いかん、いかん。お肉は鮮度が命!片付けももうすぐ終わるし、冷凍庫を閉めて作業すっか。」
この判断が仇となった。
拓
「よし片付け完了!冷凍庫もだいぶキンキンになったし、早く出なければ!」
僕は冷凍庫のドアを押した。
「ドン、ドン、」
冷凍庫のドアノブはボタンの様な形をしていて、強く押し込んで開けるタイプ。
「ドン、ドン、」
ドアはびくともしない。
拓
「あれ、なんでだろおかしいな。」
今ままでよりもっと強く体ごと押し込んでみる
ドア
「……………」
拓
「ん?」
僕はパニックになった。
拓
「なんで、開かない、えっ、ヤバいヤバい、なんで、なんで、」
がむしゃらにドアを押す拓、しかしドアはうんともすんとも言わない。この時にはもう冷凍庫は-20℃の元通りになっていた。
拓
「ま、まさか」
パニックになりながらも、勘のいい僕はすぐに理由が分かった。
拓
「ドアが凍った」
結露していた冷凍庫のドアを閉めた事により、急激に冷え、ドアの淵の水滴が凍って接着し、もはや氷の壁になっていた。
拓
「誰か〰️助けて〰️」
生まれて初めてこの言葉を叫んだ。セカチューよりも大きな声で。
拓
「ダメだ……」
生まれ初めて死を覚悟した。フリーザを前にしたベジータの気持ちが分かった。
拓
「うぉーりゃ!!こぉーりゃ!!」
僕はがむしゃらに体当たりをしたがダメ。
拓
「喰らえ!!とうっ!!うぎゃぁー!」
助走をつけ飛び蹴りしたが、凍った床に滑って腰を強打した。
拓
「もうダメだ…」
仰向けに倒れて小さい氷柱がある天井を見て諦めた。山王にオールコートプレスを食らった湘北の気持ちだった。
拓
「俺はこの肉の塊と同じように凍って死ぬんだ。美味しく食べてくれ。」
僕は朦朧とする意識なかで、冷凍庫の肉を眺めた
「鶏ムネ……」
「牛サーロイン……」
「牛モモ……」
「豚肩……」
「豚ロース………豚ロース!!」
僕の視界に豚ロースの塊肉が飛び込んで来た。
しかも普通豚ロースの塊肉は4~7キロだが、その豚は10キロ越えの大物で丸太の様に太かった。
拓
「こ、これだ!」
豚ロースを見た瞬間に、今まで見てきた漫画ドラマ映画の扉を破るシーンが走馬灯のように駆け巡った。
拓
「豚ロースを丸太代わりにして、ドアを突き開けよう」
僕は豚ロースを持ち上げドアを突いた
拓
「うりゃ!」
「おりゃー!!」
まだドアは開かない。体も冷えきって手もかじかんで動かない。
拓
「このままじゃダメだ…面じゃない、点で狙うんだ」
僕はドアノブの横に狙いを定めて、最後の力を振り絞り豚ロースを振り上げて体ごとドアに突っ込んだ。
拓
「うぉ〰️〰️〰️〰️〰️〰️!」
「どかーん!!バタバタ、ゴロゴロ。」
拓
「開いた!助かったー!」
なんとかドアは開き、僕は冷蔵庫に転がっていた。
まさに九死に一生だった。
僕を助けてくれたのは豚ロースだった。
豚ロースはこんなセリフを言った
「開けれない豚はただの豚さ」
僕は豚ロースを強く抱きしめた。
終。
3日後、僕はその豚ロースを平気な顔でスライスして売った事はショナイで。
皆さんも豚ロースの様な助けてくれる友達を持ってくださいね。
んで、いろいろ調べてたら、僕と全く同じ経験をしている人がイギリスにいた。
この人を助けたのは、ソーセージだった。
良かったら、冷凍庫の様に寒い僕の懐をサポートで暖めてあげてやってください。
m(_ _)m