2024年アメリカの種牡馬を振り返る~新種牡馬編~
2024シーズンの振り返り
2024年アメリカの新種牡馬リーディングは、初年度の種付け料が1.25万ドルとそこまで前評判の高くなかったComplexity(父Maclean's Music)のロケットスタートという、やや意外な形で幕を開けた。
Complexityは4月に早速産駒のMensaが勝ち上がり。さらにその後に行われた現役馬も上場されるファシグティプトンデジタルセールで、Mensaがセール史上最高価格の74万ドルで、ゴリアットの馬主としても日本でも有名となったJ・スチュワート氏に落札された。また7月のGⅢをComplexity産駒のMo Plexが制し、翌月にはイギリスの芝6FのGⅡをBlack Forzaが制するなど、前半戦の新種牡馬に関する話題は欧米ではComplexity一色といった様相だった。
その後はComplexity産駒の重賞勝ちはなくやや息切れした感もあったが、12月にステークス勝ち馬が2頭誕生するなど、新種牡馬リーディングを4位でフィニッシュ。Complexityは2025年は前年から倍増となる2.5万ドルの種付け料で供用される。
Complexity産駒の特徴としては、産駒勝ち鞍の平均距離は6Fを下回るという極端な短距離型の傾向を示しており、産駒が早期に活躍したことからも、今後は2歳トレーニングセール御用達種牡馬となって行くのではないだろうか。
シーズン開始前にリーディングの本命だった Authenticは大きく出遅れた。
Authenticについては、スタッドイン直後から供用するスペンドスリフトファームが「一周競馬向き」の種馬だと説明してはいた。しかし予想以上に夏の5F~6Fの未勝利戦で産駒が全く勝ち上がれず、ようやく10月になってAuthentic産駒の初のステークス勝ち馬が誕生した。その後Authenticは産駒が続々と勝ち上がり、最終的にはAuthenticの産駒は北米で22頭の勝ち馬を送り出した。しかし前半の出遅れが響き、さらにトータルでの産駒の勝ち上がり率も決して高くないこと、また産駒のステークス勝ち馬は1頭で重賞級も登場しなかったことから、2025年は前年の半額となる2.5万ドルの種付け料で供用される。ケンタッキーダービーとBCクラシックを勝ち、初年度には7.5万ドルで供用されたAuthenticですらこうなのだから。種牡馬の生存競争は厳しい。しかしAuthentic産駒はマイル以上のレースが増えた10月以降は大幅に勝ち馬を増やしており、3歳以降はさらに成績を伸ばすことも充分に考えられる。
リーディング3位までに入ったVekoma、McKinzie、Tiz the Lawについては、以下でそれぞれ取り上げる。
1位 Vekoma
【プロフィール】
Vekoma 5月22日生まれ
父 Candy Ride
母 Mona de Momma
母父 Speightstown
Spendthrift Farm 2025年種付け料 3.5万ドル
血統表(JBIS)
オフィシャルサイト
【現役時】
米GⅠメトロポリタンH(ダート1600m)などGⅠ2勝
Vekomaの父は、Gun Runnerを通じてサイアーラインの勢いが増しているCandy Ride、母は米GⅠヒューマナディスタフS(牝・ダート1400m)勝ちという血統馬だ。
甥には現3歳のゴールデンカイト、一族からはケンタッキーダービー馬ストリートセンスや、競走馬以上に種牡馬として大成功したMr. Greeleyなどが出ている牝系になる。
Vekomaは2歳時にダート1200mでデビュー勝ちをすると、GⅢナシュアS(2歳・ダート1600m)で連勝を飾る。BCジュヴェナイルに出走することはなく2歳時のキャンペーンを終え、3歳ではGⅡから始動すると3着となり、続くケンタッキーダービーの重要な前哨戦GⅡブルーグラスS(3歳・ダート1800m)を完勝し、KYダービーへ向かう。日本からマスターフェンサーも参戦した本番では、水の浮くような泥んこ馬場をややかかり気味に追走し、直線半ばまで必死の抵抗を試みるも、最後は力尽き12着に沈んだ。
3歳のキャンペーンも結局KYダービーで終了となり、コロナ禍となった4歳時は7Fから始動。ここを勝利すると、次走のGⅠカーターH(ダート1400m)では7馬身1/4差をつける完勝でGⅠを初勝利。続く春の大目標のGⅠメトロポリタンHも連勝した。しかしこのレースを最後に現役引退となり、1.75万ドルの種付け料で種牡馬入りとなった。
Candy Rideは幅広い距離で活躍馬を出しているが、Vekomaは母がダート7FのGⅠ馬でこちらの影響を色濃く受け継いだようで、ケンタッキーダービーでの追走や古馬になってからの成績を見てもわかるように、どちらかと言えば8F以下に本来の距離適性があったようだ。
【主な活躍馬】
Jonathan's Way 米GⅢイロコイS(2歳ダート1600m)
プロフィール(Equibase)
Vixen 加GⅠナタルマS(2歳牝・芝1600m) 2着
プロフィール(Equibase)
Five G 米キャッシュランS(3歳牝・ダート1600m)
プロフィール(Equibase)
【レビュー】
1位と2位の差が13,509ドル(約210万円)という歴史的大接戦を制し北米新種牡馬リーディングサイアーとなったのがVekomaだ。
Vekomaはハイエンドの種牡馬というわけではなかったが、コロナ禍もあってかその競走実績から比べれば種付け料が抑えめだったことと、2歳~4歳まで活躍し、常に有り余るようなスピードを見せていたことから、供用初年度から人気となった。
産駒がデビューすると、6月半ばで産駒10頭がデビューし6頭が勝利する高い勝ち上がり率を見せ、その後も常に新種牡馬リーディングの上位をキープすした。特筆すべきはその産駒の勝ち上がり率の高さで、11月まで産駒の北米での勝ち上がり率が50%を超えるなど、無類の堅実さを見せた。
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