アメリカで現地就職・転職、延べ5年働いて感じたアメリカで働くメリットとデメリットについて
僕はアメリカに来て6年程経つのですが、最初の1年はミネソタ大学で大学院生、次の4年半をサンディエゴ(ロサンゼルスの南にあります)でSASというデータ解析ソフトの会社、そして現在は転職してSageという会計ソフトの会社でデータサイエンティストとして働いています。あくまで2つの会社での経験からの話なので、多少偏った見方になるのかもしれませんが、アメリカで働くことの日本と比べてのメリットとデメリットについて書いてみたいと思います。
メリット①: 待遇
いきなりお金の話で恐縮ですが、色々ある違いの中でも結局待遇の違いが一番大きいのではないかと思います。僕は日本で10年程度、金融機関と大手シンクタンクで働いていました。当時から年齢を重ねているので単純に比較できないとは思いますが、留学前の日本のシンクタンクでの給料を基準に比較すると以下のように大きく上昇しました。
<日本時の給料との比較>
SAS1年目〜2年目(データサイエンティスト) :留学前の1.5倍
SAS3年目〜4年目(シニアデータサイエンティスト):留学前の1.7倍
Sage1年目〜(シニアデータサイエンティスト) :留学前の2.4倍
ちなみにSageの仕事はリモートでサンディエゴで働いているのですが、ポジション自体はベイエリア(サンノゼ)で募集されていたものなので、現地の相場で設定されており若干高めになっています。どちらの会社の待遇も、ポジション(データサイエンティスト)と場所(サンディエゴ・サンノゼ)による相場から考えると平均的な水準かと思います。
アメリカの場合、エンジニア、データサイエンティスト、リサーチ職など技術的な仕事の待遇が比較的高く、特にベイエリア(いわゆるシリコンバレーやサンフランシスコ近辺)は物価も高いこともあって非常に高い給料が設定されています。
例えば、こちらのサイトに大手IT企業の待遇が載っていますが、Googleで言うと、学卒エンジニア職のSWEⅡで年俸(ボーナス等込み)190,000ドル(約2,000万円)、シニアエンジニア職のSenior SWEで352,000ドル(訳3,800万円)となっています。Googleの待遇は同業他社と比べて良いのかと思いますが、ベイエリアのIT企業は概して同水準かそれに準じる水準の待遇で採用しています。
メリット②:ワークライフバランス
労働時間は日本・アメリカでも会社よって違いがあるかと思いますので、ここではあくまで僕個人の経験談になります。僕自身、日本のシンクタンクで働いていた頃は常に仕事に追われて毎日深夜まで働いていました。(仕事の効率が悪かっただけなのかもしれませんが…)アメリカで働き始めて違いをまず感じたのが、基本的に皆残業しないということでした。SASで働いていた頃は大体皆4時〜5時くらいには退社して、5時をすぎるとオフィスには誰もいなくなりました。金曜の午後などは皆さらに切り上げるのが早くなって、4時ごろにはオフィスはひっそりしていたと思います。会社の駐車場は周りのビルの他の会社との共有でしたが、5時を過ぎると駐車場にほとんど車がなくなっていたので周りの会社も状況は同じだったのかと思います。
仕事の絶対量自体日本の時よりも少ないとは思うのですが、どちらかというと皆仕事と同じかそれ以上に家庭にウエイトを置いていて、定時に終わるように仕事が調整されています。ですので、定時では回らないほど仕事が詰め込まれたり、定時以降に会議が設定されるようなことは時差等のためにやむ終えない場合を除いて基本的にありません。
コロナ禍で日本でもリモートワークが広がってきているのかと思いますが、こちらはコロナ前からリモートワーク(こちらではwork from homeと言います)が一般的で、子供の面倒をみなければならないなど家庭の都合などで皆状況に応じてリモートワークを選択していました。
最近は日本でも“働き方改革”などで状況が変わってきているのかもしれませんが、労働環境は個人的な経験の範囲ではアメリカの方が断然よいと感じます。
メリット③:職業機会
職種によると思いますが、IT系の技術職でしたらアメリカの方が職業機会が多いと思います。そもそもアメリカはIT企業が多いですし、スタートアップも日々増えています。多くの企業の本社、拠点があるので幅広くポジションの募集があります。スタートアップに関しても、大手と遜色ない待遇で採用していたりします。日本でも外資大手ITが進出していますが、技術職のポジションが限られていたりしますし、またスタートアップの待遇が大手と開きがあり、興味があっても大手からはなかなか行きにくかったりするのかと思います。
ただ一方で、特にアメリカ西海岸は世界中から人材が集まって来ているので、競争はとても厳しいと思います。僕はこちらで就職・転職活動を2度経験しましたが、いずれも大変な思いをしました。そもそも書類選考もなかなか通らないですし(書類通過率は個人的には10%程度、一般的には2%とも言われています)、面接に進めてもたくさんのテクニカル面接が待ち受けています。僕の受けたデータサイエンティストの面接は8割がたテクニカル面接で、データサイエンスの知識を問う面接、コーディング面接、また宿題形式のデータ分析・モデル開発の課題などがあります。テクニカル面接以外では、ビヘイビアラル面接と言って個人の行動特性を問う面接もあります。最終選考はどこもオンサイト(コロナ禍ではバーチャルオンサイト)で一日がかりでたくさんの面接を連続して受けることになります。外国人の場合はビザの問題も関係してきて、さらに就職・転職のハードルが上がったりします。これについては別途詳しく書ければと思います。
メリット④:仕事のスケール
僕は日本で働いていた当時は金融機関、シンクタンク共に日本に限定された完全にドメスティックな仕事をしていました。一方、アメリカの会社はまず英語圏が事業の対象になるので断然プロジェクトのスケールが大きくなります。SASの時は、僕の所属するチームはアメリカだけでなく、ヨーロッパ、オーストラリア、アジア、南米と世界全体のプロジェクトで働いていました。Sageでは現在ヨーロッパ・アメリカがメインのサービスを担当しているのですが、プロジェクトメンバーはアメリカ、イギリス、スペイン、オーストラリアのメンバーで構成されています。国をまたがるプロジェクトですと、時差のやりくりが大変なのですが、各国の優秀なメンバーと働けるのは非常に刺激になります。
デメリット
日本人が海外で働く上で最も懸念するのが英語でのコミュニケーションなのかと思います。僕は30歳を過ぎてからこちらに来たこともあって、英語はいまだに得意では無いですし、留学当時は英語でとても苦労しました。ただそれでも、今現在英語に関してはそれほど仕事をする上でのストレスにはなってないと感じます。決して流暢に話せるわけでもなく、所々聞き取れなかったり、発音が悪かったり、喋っていると文法・語法などがおかしくなったりしていると思いますが、仕事の場では話のトピックが限定されていたり、協働するメンバーが限定的であったりと、多少下手でもコミュニケーションを取る上では特に問題はないと感じます。また、アメリカは移民も多いこともあって、英語が訛っていたり、あまりうまくないことに関しては特に誰も気にしないように感じます。ですので、やはり母語で仕事ができた方がやりやすいですが、英語に関しては大きなデメリットと言えるほどには問題になっていないと思います。
それ以外で、仕事に関してはアメリカで働くことのデメリットはあまり無いと感じるのですが、どちらかと言うと私生活の方が色々とデメリットが大きいと感じます。まず、僕は30歳過ぎるまで日本で過ごしてきたので家族や親しい友人は日本にいるため、普段直接会ったりできないのはやはり少し寂しいです。あと、食べ物も日本の方が断然美味しいです。アメリカにはどの都市にも日本のスーパーがあるので食材はそこで買って家で調理すれば、家で食べる分には特に日本と変わりないと思うのですが、外食するときになるとあまり選択肢がなくて困ったりします。
あと、アメリカは銃社会なので個人的には常にその不安はつきまといます。サンディエゴはアメリカでも比較的治安の良い方なのですが、それででもよく発砲事件のニュースを見ます。
以上色々書きましたが、仕事に関してはアメリカ、それ以外の私生活は日本の方が良いというのが6年間アメリカに住んできての個人的な感想です。
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