見出し画像

岡大DXハッカソンを開催

岡山大学DS部では8月20、21、28日に渡って岡大DXハッカソンを開催しました。
学生・教職員計24名にご参加いただきました。

岡山大学のHPにも掲載されています。
身近な課題を自ら解決する「岡大DXハッカソン」を開催 - 国立大学法人 岡山大学 (okayama-u.ac.jp)

ハッカソンとは?

ハッカソンとはハック(Hack)とマラソン(Marathon)を組み合わせた言葉で、1日~数週間の間でテーマに沿ったサービスを作成するイベントです。サービス開発にはプログラミングを要するため一般的にはエンジニア向けのイベントとなっていますが、今回の岡大DXハッカソンではNoCodeツールを駆使することで、非エンジニアでも気軽に参加できるイベントとしました。

NoCodeツールとは?

その名の通りコーディング・プログラミングなしでITサービスを作れるツールのことです。その代表例をいくつか示します。

STUDIO
NoCodeでWebサイトを作成できるツールです。ドラッグ&ドロップで簡単にコンポーネントを配置できるだけでなく、アニメーションも容易に設定することができます。

実は、このDS部のサイトもSTUDIOで制作されています。

スクリーンショット (3)

PowerApps
MicrosoftがOffice365の一機能として提供している、NoCodeでビジネスアプリを作成できるツールです。TeamsやExcelなど、Microsoftの他のアプリとの連携がしやすいことが特徴です。

スクリーンショット (2)

Bubble
NoCodeでWebアプリが作れるツールです。前出のSTUDIOでは企業のHPなどの静的なサイトを作ることしかできませんが、Bubbleでは静的サイトに加え、旅行の予約サイトやチャットツールなどユーザーによって表示が変わるようなWebアプリも作ることができます。筆者としては、Bubbleは最も拡張性が高い分、使い慣れるのが少し難しい印象です。とはいえ、難しいといってもプログラミングをはじめから学ぶ労力に比べればかなり簡単にWebアプリができてしまいます。

岡山大学発ベンチャーの就活サービス「ABABA」もBubbleで制作されています(2021年9月現在)

スクリーンショット (4)

Glide
GoogleスプレッドシートからNoCodeでアプリを作れるツールです。リスト・マップ・カード・カレンダーなど数々のコンポーネントが容易されており、直感的にアプリを作ることができます。

岡山大学メディアOTDもGlideで作られています。

スクリーンショット (6)

1日目 NoCodeツールの紹介&アイデアソン

8月20日、21日(参加者はその2日のうちいずれか1日に参加)はDXについての紹介、NoCodeアプリの事例紹介、NoCodeツールの使い方の習得、アイデアソンの3つのコンテンツを実施しました。

DXについての紹介

近年よく耳にするDX(デジタルトランスフォーメーション)について、池坂和真くんから参加者に向けて説明をしてもらいました。

今ある業務を単にデジタル化するのではなく、デジタルを通じて新たな価値を提供すること、既存の概念を変えることこそがDXです。

画像5

NoCodeアプリの事例紹介

PowerAppsを用いた休暇申請アプリについて高谷つぐみさんが、Glideを用いた岡山大学発メディアOTDについて宮本あゆはさんが、そしてAdaloを使ったカブトムシ・クワガタの居場所共有アプリについて筆者の宮本大輝が説明しました。

休暇申請アプリ
いつ、だれが休暇を取るのかを申請し、別のユーザーがその休暇の承認・非承認を行うアプリです。
休暇申請画面

画像6

承認画面
Power Automateと組み合わせて、シームレスに上司に承認申請が送られるように工夫しています。

アプリ作成例


岡山大学メディアOTD
岡山大学に関する記事から部活動・サークルの紹介、飲食店情報、その他岡大でのキャンパスライフを送るうえで欠かせない情報満載のメディアです。

画像8

こちらはGlideで作られていますが、GlideはPWA(Progressive Web Application)という方式を採用しており、AppStoreからのインストールなしであたかもネイティブアプリかのように使うことができます。

画像9


カブトムシ・クワガタの居場所共有アプリ
カブトムシやクワガタを捕まえた場所をシェアして、虫取りを活性化するアプリです。

画像10

Adaloを使うことで、直感的な操作で簡単にネイティブアプリを作成することができます。

画像11

NoCodeツールの使い方の習得

今回のハッカソンでは習得のしやすさと利便性の高さの観点から「Glide」の使い方をレクチャーしました。

参加者の皆さんにはToDoアプリの製作を通してGlideの基本的な使い方をマスターしてもらいました。

NoCodeアプリ作成ツール「Glide」を使ったToDoアプリの作成

アイデアソン

本イベントでは6チームに分かれて各グループごとにアプリを製作してもらいました。アプリを作るにあたっては何の課題を解決したいかを定める必要があります。「食堂の混雑を緩和したい」「学務と学生のコミュニケーションをメール以外で行えるとレスポンスが速いのではないか」「moodleの提出物の〆切アラートが欲しい」など、学生・教職員それぞれがそれぞれの視点で身近な課題を挙げていきました。そして、解決する課題が決まったらそれを何のツールを使って解決するか、どんな機能が必要になるかをディスカッションしました。

最終発表までの1週間

8月28日までの1週間は各チームごとにミーティングをし、開発を進めていきました。運営も適宜サポートをしつつ、各チームのメンバーが協力をしあって作り上げていきました。中には夜12時過ぎまで一生懸命にミーティングを行っているチームもあり、参加者の熱量の高さが伺えました。

最終発表

8月28日は午前中に最終調整を行い、午後から各チームによる発表がありました。

Aチーム Teamsを用いたオンライン授業改善と教授の講義レビュー​
1.授業のオンライン化により友人同士で課題の相談ができない
2.moodleだけでは情報伝達に限界がある
3.授業選択をする際に、教授がどのような授業を行うのかわからない

という3つの課題に着目しました。

課題の相談に関しては、SharePointを使って課題の共有を行うことでお互いの課題の進捗状況を閲覧できるようにしました。また、他の人の課題のカンニングを防ぐためにTeams標準の承認アプリを使って課題閲覧の許可・拒否をコントロールする方法を提案しました。

画像13

情報伝達の課題に対しては、Teams標準のYammerというアプリを使って、1対多のコミュニケーションを円滑に行う方法を提案しました。

画像14

また、授業選択に関する課題については教授の講義に対するレビューアプリ「Rate Your Profs」をGlideで作成しました。

画像15

Bチーム 空き教室の予約システム「部屋ぶっきん」
授業で使われていない空き教室を学生が有効に使えたら、ということでGlideを使った教室予約アプリ「部屋ぶっきん」を製作しました。

ユーザーは

・学籍番号
・利用者人数
・利用目的
・利用開始時刻
・利用時間
・利用部屋

などの情報を入力することで、空いている教室の予約が可能です。

スクリーンショット (8)

また、GAS(Google Apps Script)でWebhook URLを設定することにより、予約内容をLINEやSlackに通知できるような工夫も施しました。

Cチーム 「時間割」「課題の提出状況」把握アプリMoo-min
moodleの問題点として次の2点に着目し、それを解決するアプリをGlideで作成しました。

1.講義ページにすぐにアクセスできない
2.課題提出の期限を見落としやすい

アプリ側に講義に直接飛ぶためのURLを設定することで、moodleの講義一覧から該当するものを見つける手間を省きました。

画像17

また、課題提出の期限を見逃してしまいがちという問題に対しては、よりわかりやすい表示にすること、またユーザー自身が情報を入力することでチェック機構を作ることにより解決しました。

画像18
画像19

Dチーム 食堂のメニューアプリ「OU Food」
・コロナ禍において密を避けながら学食を利用したい
・一人暮らしの人が健康に気遣った食生活を送りたい

というニーズにマッチしたアプリをGlideで制作しました。

普段の活動量に合わせて適切なカロリーとなるように調整した「サークルメニュー」、学食に行かずとも今日のメニューがわかる「無紙化メニュー」、また各商品についてやり取りできる「チャット機能」を用意するなど、食堂の利用体験を向上させる機能を盛り込みました。

画像20
画像21

Eチーム すごいカレンダー
「Googleカレンダー」「TimeTree」「moodleの課題提出の〆切」など、カレンダーアプリが数あるせいですべての予定を一元化して閲覧するのが難しいという問題があります。それに対して、Eチームではmoodleの課題の提出日をカレンダーにリスト化するアプリをGlideで制作しました。

画像22


「すごいカレンダー」という名前は既出の「すごい時間割」に由来しています。すごい時間割は例えば岡山大学のAさんが力学Aという講義の講義名や担当教員の名前、実施時間等を登録すると、他の受講者もそれを引き継ぐことができるというものです。その共有機能に着目し、すごいカレンダーでは講義に紐づく課題とその〆切を誰かが登録すると、他の人は再度入力することなくそれを引き継ぐことができます。

画像24


これにより、終了日時がmoodle上で設定されていない課題に関してもその締切日を受講者同士で共有することができます。

画像24

Fチーム QRコードで図書館に入館できるアプリ
岡大の図書館に入館するには学生証をかざす必要があります。しかし、カバンから学生証を取り出すのは案外面倒な上に、学生証を忘れてしまったときにはわざわざ窓口で入館手続きを行わなければなりません。そこで、現代人なら出かけるときに忘れることのないスマホを使って図書館に入れるアプリをIFTTTとiOS標準のショートカットアプリを使って製作しました。

学生証自体はICカードになっており、図書館入館時にはそのICカードを読み取って入館ゲートの開閉を行います。しかし、Felicaなどの機能を備えたスマートフォンもあるとはいえスマートフォン自体をICカードにすることは難しいという課題があります。そこで、FチームではPayPayからヒントを得て、QRコードによる入館を考案しました。

画像25

iOSのショートカットアプリで利用者ごとのQRコードを生成し、図書館入館時にQRコードリーダーに読み込ませることで入館の許可を行います。また、入館時にIFTTT経由でいつ、誰が入館したかという情報をスプレッドシートに記録します。この記録された情報を可視化するアプリもGlideで制作し、利用者の推移等が一目でわかるように可視化しました。

画像26

結果発表

各チーム2票、運営全体で2票、審査員として参加してくださった先生方(阿部先生、野上先生、馬場先生)各自2票を投じてもらい、最優秀&優秀チームを決定しました。

審査基準

・課題発見力
・解決方法のアイデア性の高さ
・実現した時のインパクトの大きさ
技術力の高さは問うていないのがこのハッカソンの特徴です。

最優秀
Dチーム 食堂のメニューアプリ「OU Food」

優秀
Aチーム Teamsを用いたオンライン授業改善と教授の講義レビュー​
Cチーム 「時間割」「課題の提出状況」把握アプリMoo-min
Fチーム QRコードで図書館に入館できるアプリ

優秀チームが拮抗し、結果的に3チームが入賞する形となりました。

最優秀および優秀チームには賞状とAmazonギフト券1000円分が贈呈されました。

ハッカソン開催を終えて

岡大DXハッカソンは「非エンジニアでも身近な課題を自らの手で解決するプロセスを体感してほしい」という思いで開催しました。文理、教職員問わずそれぞれの視点から課題を見つけ、各々の手でサービスを作っていくというのは他にあまりない機会だったのではないかと思います。

NoCodeとはいえど、参加者に任せきりではなかなか開発が進まないのではないか、と懸念していた節もありましたが、実際は参加者全員の意欲が高く、そんな心配は無用でした。

このハッカソンを通してNoCodeツールで案外色々なものが作れてしまうこと、またサービスを作る楽しさを知ってもらえたのであれば幸いです。

謝辞

本ハッカソン開催に当たっては野上保之先生、馬場謙介先生、岩田健一先生にご協賛いただきました。また、開催当日の審査には野上保之先生、馬場謙介先生、阿部匡伸先生にご協力いただきました。この場を借りて御礼申し上げます。

著者

宮本大輝

いいなと思ったら応援しよう!