プロペラ検査工程を自動化するソフトウェアを作成

概要

部員の川田優太と竹下和慶が、ナカシマプロペラ株式会社様のプロペラ検査工程を自動化することを目指し、システム開発を行いました。統計分析機能を備え、直感的に操作できるUIを実装しました。

はじめに

ナカシマプロペラ株式会社様は、世界トップクラスのシェアを誇る、岡山の船舶用推進機器メーカーです。小型船舶から超大型商船まで、さまざまな船舶に推進装置の設計から製造、検査、販売までを一貫して行っています。
船舶用プロペラは一品ごとの受注生産のため個々の船舶に合わせた最適設計と製造後の検査が必要ですが、検査工程の一部は、これまで手作業で行われていました。DS 部との課題発見ブレーンストーミングによって、この検査工程を画像処理手法によって自動化すれば、検査品質をさらに向上できることがわ
かりました。また、現場で利用するソフトウェア開発にあたっては、画像処理の専門知識がない方でも運用しやすいようにユーザー・インターフェイス(UI)に工夫を凝らす必要もあります。

手法

プロペラの取り付け時の摺り合せの際には、軸とプロペラの"あたり"を青色のペイントで確認し、プロペラ内部を修正して軸との"あたり度"を最適化します(動画参照: https://youtu.be/l2s-1NsS0tc?t=247 )。今回は、青色の割合からあたり度を推定する「画像処理と統計分析」、実際の業務での使用を意識した「グラフィカル・ユーザーインターフェース(GUI)の開発」を行いました。

画像処理と分析

画像のHSV変換を用いてプロペラと軸のあたり度を自動的に推定できる機能と、推定対象となる画像領域のトリミングや回転補正をする機能を実装しました。さらに、あたり度の分布の特徴をL関数という統計的指標を用いて評価できる機能を実装しました。

GUI

ソフトウェアの開発にあたっては、画像の読込み、あたり度の推定、ログの作成や結果出力などのボタンの位置を工夫し、解析前後の画像を比較できるようにするなど、作業の流れに沿った直感的なUIを意識して作成しました。解析結果レポートのPDFファイル出力機能を作成したことで、検査報告文書の作成も自動化できるようになりました。また、作業ログをデータベースとして管理することで過去の作業を即座に参照し、復元できる機能を作成するなど実用性にも力を入れました。

結果

本ソフトウェアの導入により、従来の手作業で行っていた検査工程のばらつきを大幅に減らすことができ、より短時間で多くの検査を実施できるようになります。実装したのは、標準的な画像解析技術ではあるものの、多くの労力がかかっていた作業工程の DXにつながりました。また、当たり度の分布の特徴については、これまで、数値化されていなかったが、統計分析ツールの導入によって分布の特徴も検査結果に含めることができるようになりました。今回の共同研究によって、プロペラの品質管理・品質保証に大きく貢献できます。

ナカシマプロペラ担当者様からも今回のアプリ開発は高い評価を頂きました。「今回開発したアプリが現場で使用されていくことになります。動画にあるような造船所(社外)での作業時には、アプリが特に威力を発揮するものと期待しています。」(ナカシマプロペラ担当者様)

担当部員の感想

実際に現場で運用されるソフトウェアを開発し、業務の一部自動化・効率化に貢献することができ、学生としてはなかなか体験することのできない貴重な経験となりました。今後もナカシマプロペラ様とのつながりを大切にし、新たな活動を進めていきます。

メンバー

GUI担当:川田 優太 (岡山大学DS部)
画像処理担当:竹下 和慶 (岡山大学DS部)
アドバイザー:関本 敦 (岡山大学工学部・数理データサイエンスコース 准教授)
コーディネーター: 渡邊博之 (産学官連携コーディネーター)

備考

UI:ユーザー・インターフェイス(User Interface)の略.
GUI:グラフィカル・ユーザー・インターフェース(Graphical User Interface)の略.
HSV 変換:通常のRGB 色空間とは異なり,色相(Hue),彩度(Saturation),明度
(Value)の3成分からなる色空間.
ナカシマプロペラYouTubeチャンネル
https://www.youtube.com/channel/UCUBxS7NBPeBuaTQUlhhBm4A
「Propeller Retrofit A-Z / プロペラレトロフィット」
https://www.youtube.com/watch?v=l2s-1NsS0tc

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