セミナーレポート 西宮市が考えるDX推進とビッグデータ活用(1) デジタル推進課編
行政DXの機運が高まってきていますが、その重要要素である官民データ活用の具体施策や事例はまだまだ思索の段階ということが多いと理解しています。2021年3月に"西宮市DX推進指針"を策定し、現場でのデータ活用の取り組みにチャレンジしている西宮市の皆さんに話を聞きました。
その1は、DX推進指針の策定・実施を進められている、西宮市 総務局 デジタル推進部 デジタル推進課長 南 晴久さんのインタビューです。
写真1. 南さん近影
DX取り組みや指針策定の背景は、どういったものだったのでしょうか?
私達の策定した"西宮市DX推進指針"に沿って、令和10年度末までを期間として計画的にDXに取り組んでいます。DXに取り組みを単なる流行りに終わらせるのでなく西宮市に取って意義あるものにするため、指針をおいて目的や方針を明らかにしました。西宮市がDXを推進する目的は、大きく6つあります。(図1)
図1 DXの目的 (資料提供:西宮市)
また、西宮市がDXを推進するにあたっては、2つの大切にする事項を設けています。
1つ目は職員向けの行動原則(図2)で、"利用者目線", "業務改革前提", "スピード感”, "庁内横断的な体制", "市民や地域との協働"を常に心がけ、ICT化やデジタル化を目的にするのでなく、課題解決型で持続可能な行政経営を実現していきます。
図2 行動原則 (資料提供:西宮市)
2つ目は、西宮市DXビジョンです。令和10年度末のあるべき姿を、"暮らし手続き"、”行政内部”、”住民参画”、”教育環境”の4つの分野について示しています。すべての対応を行うということではなく、現時点では実現に課題があるものも含めて、DX推進のための羅針盤として職員がビジョンを共有することで、将来を見据えて日進月歩で進展するICTに柔軟に対応ができると考えています。
図3 西宮市DXビジョン(資料提供:西宮市)
DXにおけるデータ活用をどう考えられていますか?
西宮市のDXは、課題解決型であることが特色です。前述のビションは、課題解決型DXに取って重要で、ビジョンと現状のギャップを分析し解決策(西宮市では"手法"と呼ぶ)を策定、実施します。(図4)
限られた資源の中で、いかに効果的にギャップを小さくできるかが鍵で、庁内でのワークショップなどを通じて、職員で知恵を出しあって、この作業を進めて行きます。
この分析の重要な要素がデータです。現状把握、仮説検証、指標の設定に際して、過去の経験や勘に頼らず、客観的データを活用したEBPMが求められます。効果的な政策立案のために、多様なデータを収集・活用することがDX推進の鍵になると考えています。
図4 西宮市のデータ活用想定(資料提供:西宮市)
西宮市DXでの民間ビッグデータへの期待について教えてください
西宮市では令和元年に個人情報保護条例を改正し、保有している住民情報を分析用に抽象化することで、庁内横断的にEBPMに活用することを可能にしました。これを実現しているのが、住民情報系データ倉庫”J-Storage”です。
”J-Storage”を活用して分析を推進しているところですが、市が保有する情報のみでは、どうしてもデータ不足の壁にぶつかるケースがあります。特に新型コロナウイルス対応といった、これまでのデータ蓄積では対応できないようなものが代表例です。
市が保有するデータのみで分析するには、市民の興味関心の把握が困難であり、リアルタイム性が低く、相関や傾向をつかむにはデータ量が少なく、分析に専用ツールを使いこなすスキルが必要などといった課題がありました。
それを解決してくれたのが、ヤフーのDS.INSIGHTでした。全国8000万人分のビッグデータには、男女別、年代別、エリア別、時系列の検索データやリアルタイム性が高い人流データがあり、WEBベースで誰でも使えるユーザビリティを備えており、新型コロナウイルス対応で大きな力を発揮してくれています。
今後も、広報戦略、都市ブランド発信、災害対応などで力を発揮してくれるものと期待しています。
図5 西宮市DXでの民間ビッグデータへの期待(資料提供:西宮市)
先にICT化をしてから、データ分析を考えられる自治体さんも多いと思いますが、西宮市さんはいかがでしょうか。
これまでの経験から、分析したいテーマがあるなら、とにかく今あるデータを使って分析を行ってみることが大切であると考えます。それによりどんなデータが追加で必要になるか、どんな分析手法が適しているかが、見えてくるようになります。現在、手に入るデータからとにかく利用していくことが大事だと思います。
(つづく)
その2はブランド発信課の事例です。
※本記事の内容は公開日時点の情報です。
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