セミナーレポート 西宮市が考えるDX推進とビッグデータ活用(3) 政策推進課編
その3は、西宮市 前 政策局 政策総括室 政策推進課 担当課長 岡崎 州祐さんへ新型コロナウイルス対策に関わるデータ活用の話をお聞きしました。
写真1 岡崎さん近影
新型コロナウイルス対策にデータを活用されたそうですが、その背景を教えてください。
まず背景ですが、どちらの自治体でも全庁的な対応を行っていると思いますが、西宮市も例に漏れず、市長や幹部も含めた”新型コロナウイルス感染症対策本部会議”を設け対応をしています。
本部会議で迅速に判断を行うためには、常に幹部全員が最新の情報をシンクロさせておく必要があります。 そこで、”新型コロナウイルス感染症関連情報”(図1)、庁内では”コロナレポート”と呼んでいるレポートを、休日も含め毎日ニュースレターとして庁内関係者に情報を送っています。
できることであれば、今後の予測も含めて対応できればと日々考えています。実際にはまだそのようなレベルではないのですが、現状対応していることを紹介したいと思います。
図1 コロナレポート 中央は西宮市のキャラクターみやたん
コロナレポートの内容について教えてください
レポートは、新型コロナウイルスに関する国や県などの公開情報をもとに作成しています。内部の情報を利用すると運用が複雑になりますので、あえて公開情報のみを使用してわかりやすくチャートにして提供しています。
図2は週当たりの感染者数を全体と、そのうちに占める60 歳以上の人数を示したものです。このレポートでは、これからどのような状況が起こる可能性があるかということを考えやすくするため、時系列で情報を提供するよう工夫しています。
現在は、第4波の到来を言われている時期で、医療的なエビデンスとは別にしても、警戒していくべきだということが感じ取れるように心がけてレポートを作っています。
図2 西宮市の感染症数推移
このようにトレンドが掴みやすいケースは問題ないのですが、必ずしもそのような状況ばかりではありません。
そこでコロナレポートでは、DS.INSIGHTの検索キーワードの検索ボリュームの時系列推移を工夫することで、先行指標の参考に使えるのではと考え利用をしていました。
図3の紫色の折れ線が、兵庫県内での"コロナ"の検索ボリュームになります。緑色の棒グラフが兵庫県内の感染者数の推移ですが、検索ボリュームの増減と1週間程度ずれて感染者数が増減するような高い相関が出ており、参考になりうる可能性があるのではとみています。
なお、第3波までは大変高い相関だったのですが、第4波では違う状況も出てきており、予測として活用するには、まだいろいろな工夫も必要だと考えています。
図3 兵庫県内における"コロナ"の検索ボリュームと新型コロナウイルス患者数推移
図4は、2021/1/4に東京都で"緊急事態宣言"と一緒に検索をしたキーワードを図示したものです。この日は、緊急事態宣言が東京都で出るかも知れないと報道された日で、緊急事態宣言についてどのような関心を東京都の方が持ったかの参考になる分析です。
結果を見ると、”学校”や”保育園”などの検索が多く、住民が緊急事態宣言が出たときに何を知りたいのかを把握することができます。このとき関西では緊急事態宣言は出ておらず、先行した東京の状況を把握しておくことで、関西の緊急事態宣言時のある種の予測ツールとしてこの情報を利用しました。
図4 東京都で"緊急事態宣言"と一緒に検索されたキーワード
紹介は以上ですが、DS.INSIGHTの使い方のコツとしては、厳密性をこだわるより、大雑把でも良いので、スピーディに大まかな状況を把握するために使った方が現場の役にたつツールだと考えています。
庁内にデータをレポートする取り組みが、どうしてうまく機能したのでしょうか?
うまくいったかどうかはわかりませんが、基本はデータをExcelで集計して提供しただけのシンプルなものです。レポート作成にあたっては、庁内にExcelなどで簡易に有益なレポートができることを示したかったという想いはありました。
とはいえ、私だけで動いても、"何してんねん"という話になります。そこで私が幸運だったのは、データ活用に関心がある非公式な課長級のチームがあり、そこで意見を出し合いながらレポートを作れたところにあります。
その後、レポートの有用性が庁内でだんだん認められ、今では政策局の公式のメディアとなりました。あえていえば、”やって見せる”ということが大事だったのではと思います。
レポートの庁内での反響はいかがですか?
そうですね。反響としては、ポツポツという感じで爆発的なものはないのですが、「役に立ったよ」などと言われるとやはり嬉しいものです。
実は一番反響があったのは、私の異動が決まったときでした。これからもレポートを見たいという声が多く寄せられ、引き継ぎ先も決定し、今も読者層が増えてありがたい限りです。
(つづく)
その4は、南さん、岸本さん、中村さん、岡崎さんに、データ活用の推進や分析で困ったことなどお聞きしましたので、お楽しみください。
※本記事の内容は公開日時点の情報です。