「納豆」検索者は冷蔵庫が食べ物で溢れている?
こんにちは。データマーケティング本部の棚原です。
7/10は「納豆の日」ですが、皆様ご存じでしょうか?
納豆の日は、納豆の消費量を上げることを目的として1981年に制定されました。
もとは関西地方で始まった経緯がありますが、現在は全国的に認知度の高い記念日となっています。
今回は納豆の日にかけて、誰もが口にしたことのある「納豆」を軸に、私が仮に納豆の販売や企画を担当する立場だったら、という点で検索データの活用を考えてみました。
※今回は、弊社の検索ビッグデータを分析することができるツール「DS.INSIGHT」を活用しています。
<納豆についてどのような関心があるか>
まず初めに、どのような興味関心が納豆に対して持たれているのか、共起キーワードから調査してみました。
一緒に検索されているキーワード
※たとえば、円の大きい「レシピ」は「納豆 レシピ」といった形で、
この結果の中で相対的に数多く検索されていることを示しています
「納豆」と一緒に検索されているキーワードは種類が多く、
たとえば、細かい部分に着目すると、効果やカロリー、栄養といったキーワードから健康意識への関心が伺えます。
その一方で、犬に与えていいのか?や離乳食、1日何個まで食べてよいかなど幅広い興味を持たれていることがわかります。
なかでもレシピ、効果、賞味期限切れの3つのキーワードがこの中では数多く検索されており、より消費者が気になっている可能性があります。
性年代別の違い
次に、これらを検索ボリューム順に世代別割合をまとめると以下のようになります。
30代~50代が全体的な検索割合としては高めとなっていますが、一部のキーワードについては世代の特徴があります。
たとえば「おかめ納豆」「納豆 アレンジ」「納豆 カロリー」は比較的若い世代に興味があり、「納豆 レシピ」「下仁田納豆」「おかめ納豆 キャンペーン」は40代以降の割合が高いです。
上記のキーワードだけで簡単に考察をするならば、若い世代はダイエットや節約が主な関心事となっていて、後者については料理へのこだわりや家庭での消費を示唆しているのではないかと思われます。(一般的な各世代のイメージと重ねた際の仮説レベルになります)
ご覧ように、少ない情報のみでの考察となると、一般論の範囲に収まってしまい目新しさや発見にかけることが多くなります。
消費者の思っていることや生活背景などを推察・調査するには、ここまでの状態では情報が少し足りないため、次項で他のデータも組み合わせながらより詳しく分析した内容を解説します。
<顕在ニーズと潜在ニーズ>
それでは、冒頭に少し垣間見えていたシンプルな食材・食品としての位置づけの興味の他に、納豆に対してどのようなニーズがありそうか、検索キーワードで重ねて紐解いてみます。
まずは、顕在・潜在ニーズを整理しながら可視化してみたいと思います。
データにはいくつか形式がありますが、今回の分析では以下で区分します。
一緒に検索されているキーワード(共起キーワード):顕在ニーズ
前後に検索されている他のキーワード(時系列キーワード):潜在ニーズ
顕在ニーズ
まずは顕在ニーズを掴むために改めて共起キーワードを見てみます。(再掲)
このように共起キーワードでは、組み合わせる物事に対して、その瞬間に知りたいことがダイレクトに検索される傾向にあるため、顕在的でわかりやすいニーズが掴めます。
黒い点線で囲った部分をご覧いただくと、例えば、ヨーグルトとの食べ合わせがどうなのか?といった具合に、気になったことを調べているようなイメージです。
例の中で検索ボリュームの多い「納豆 レシピ」「納豆 効果」「納豆 賞味期限切れ」の3つのキーワードについても、何かしらの理由があって検索・興味を持たれていると思われます。
また、直接繋がる他の共起キーワードの他に、過去に何を検索していたかがわかると、通常はリサーチが難しい背景(潜在ニーズ)を追跡できることがあります。
<補足>「鍋」と検索窓に打ち込むユーザの顕在ニーズと潜在ニーズ
この後潜在ニーズとして紹介させていただく前後検索(時系列キーワード)を見ていただく前に、潜在・顕在ニーズが検索データでどのように見えるかイラストでまとめてみました。
検索者がどういうことを思っていそうか?を是非想像してみてください。
イラストのとおり、顕在ニーズはデータで表れやすく、容易に想像がつきます。
一方で、その前後で天気や気温に関するキーワードを検索している場合、潜在ニーズとして捉えることができます。
※潜在ニーズのすべてが検索行動としては現れるとは限らないので、多面的な考察や仮説立案ができると、より消費者の理解が深まります
潜在ニーズ
それでは、各キーワードの前後検索を見てみましょう。
「納豆 レシピ」検索者の健康・医療に絞った前後検索
低カロリーや、栄養価の高い食べ物に共通するようなキーワードが多くなっていますが、納豆ならではのところでは「ダイエット」「食欲」「体調不良」が検索背景として推測できます。
次に、「納豆 効果」検索者の健康・医療に絞った前後検索はこちらです。
特徴が先ほどよりはっきり表れているように見受けられますが、具体的な指標となる血圧や体脂肪の他に、食物繊維や栄養に関するワードが多数表れていることから、何らか気を配らなければならない健康面での問題があると予想できます。
最後は、「納豆 賞味期限切れ」検索者の前後検索です。
こちらは、見たままになりますが、納豆以外の食品・食材も賞味期限切れをさせている可能性が非常に高いです。
味噌汁やカレー、肉じゃがといったワードから、ある程度の自炊はできている一方で、冷蔵庫が食べ物でいっぱいになっているようにも思えます。
こちら、実は私も買った納豆を冷蔵庫に置きっぱなしにして1週間以上賞味期限が過ぎてしまった、という経験を何度かしています…
納豆を放置して期限を切らしてしまいがちなのは、意外と多くの方に共通するお悩みなのかもしれません。
「納豆」という入り口から見えてくる検索者像
ここまでの情報を簡単にまとめると以下のような検索者像が見えてきます。
このように、納豆に関する興味という非常にシンプルな入り口であっても、枝葉の情報へ着目し潜在・顕在ニーズの切り口で整理することによって、通常は捕捉が難しい人々も含め、現実味のある人物像を想像できます。
どのようなテーマであっても、分析者や視点によって検索データは様々な見方ができ、発見に繋がることが多いので本当に面白いです。
<検索データでわかること>
ここまでは見える(入手できる)情報をベースに分析や考察を重ねましたが、さらにもう一歩踏み込んで更なる消費者理解の深堀についてまとめます。
※ひとつ前の3つのキーワードから見えた消費者像をそれぞれ解説したいところですが、今回は「納豆 賞味期限切れ」を起点とした内容に絞って解説します。
検索データを使った分析をする際は、以下の手順で「検索データで何を知りたいのか」を整理することから始めることを強く推奨します。
(1)物事の因果関係を整理する
何らかの行動を起こす背景を順番に見ていくと、以下のような流れがあると予想できます。
特定のキーワードを検索しているところからは、データ等で捕捉がしやすくなりますが、
要因となる部分については顕在化しにくく、仮説を持った分析が必要になります。
(2)「検索者(消費者)」はなぜ、どのタイミングで検索行動を起こしたかを考える
では、先ほどの図で前後にどのような行動がありそうか、もう少し細分化してみます。
仮説段階のため予想も含まれますが、例えばここまでの情報も踏まえて簡単にまとめるとこのように分類できるかと思います。
(3)何を消費者に提供すべきか整理する
ある程度どのような行動がありそうか洗い出せると、
消費者の「対症」的な行動と、「根治」で解決でき得る事柄が何か、絞り込むことができます。
このように、狙いを定めることによって、どのような人へどのような施策を提供すべきか、具体的なヒントを見つける見当がつきます。
これらを踏まえて「納豆 賞味期限切れ」を検索した人の対症(顕在ニーズ)と根治(潜在ニーズ)が何かを探り、施策を考えてみます。
検索データでは、今起きていること・今解決したいことに対して、より検索タイミングの近い共起キーワードは対症(顕在)的な内容が色濃くなります。
一方で、その前後検索は事象に繋がる要因が現れることがあり、根治(潜在)的な内容が色濃くなります。
それでは、各データを見てみます。
■共起キーワード(ランキング形式)
対症観点での考察:
1週間というキーワードが最も多く、長いと1か月も切れているような検索も見られます。
1か月以上の期間を示すキーワードはないため、調べた結果それを過ぎてしまったものは、何らかの手段で処分している行動をとっている人が存在する可能性を示唆しています。
■前後検索(再掲)
根治観点での考察:
納豆のほかにも様々な食品の賞味期限に関する検索があり、ヨーグルトやキムチ、ヤクルトといったキーワードが出現しています。例えば、パッキングされた個包装のような、複数回に分けて消費していく製品や食品が最後に余ってしまっている可能性を示唆しています。
これらを踏まえ、新しい視点で商品企画を私がするのであれば、以下のように整理します。
(対症) 期限切れを前提としたパッケージや訴求の改善
→パッケージに直接「賞味期限を過ぎたら」という趣旨のTipsや活用レシピへのガイドをつける
(根治) 期限切れさせないための売り方の改善
→3個1パックが一般的だがあえてバラ売りをしてみる、飽きないように全部違う味(タレ)にする
メーカーやモノを売る立場からすると、対症的な価格調整やより良い効果効能を謳うことが優先されがちですが、消費者に刺さるポイントは別の場所に存在している、ということはよくあります。
一方で、根治がうまくいくと購入ペース・回数増や、よりばら売りに向いた製品の発掘に繋がる可能性があり、最終的には売り上げへの貢献も期待できます。
<さいごに>
今回は「納豆」をテーマに、もし商品企画だったらという形でデータを分析させていただきました。衣食住にかかわることは誰しも共通しており、検索データで様々なことが調査できますので、リサーチでお困りの方は是非、検索データを一つの手段として検討してみてください。
※本記事の内容は公開日時点の情報です。