TX沿線各市の交通特性について
こんにちは、つくばに住む研究者です。
今回は東京都市圏交通計画協議会が提供している「パーソントリップ調査データ」を使って、つくばエクスプレス(TX)沿線の各市について、各々の交通特性を観察します。調査について初耳の方も居られると思いますので、まずは東京都市圏交通計画協議会による、パーソントリップ調査の説明を確認します。
上記のとおりパーソントリップ調査は、人の移動に関する内容についての調査であり、ある人の平日の1日の動きを調査しています。調査範囲は東京都市圏については下記のようになっています。茨城県は南部のみが対象です。
このデータを使って、TX沿線駅の交通特性を分析してみたいと思います。つくば市、守谷市、流山市の3市に加えて、千代田区(秋葉原)の4都市について、「各区市に居住するビジネスパーソンが通勤する目的地」をSunburst Chartを使って比較します。
データの処理方法についても簡単に解説しておきます。東京都市圏交通計画協議会のデータでは、「居住地」「着地」「目的」「手段」「トリップ数」の5つの情報がまとめられています。一人の1回の行動が「トリップ数」の1単位となります。
まずは各市について、通勤者の移動先を比較したいので、「居住地」「着地」「目的」の順で整理をしていきます。例えばつくば市については下記のように処理していけば欲しいデータが得られます。
df = pd.read_csv('PT.csv',encoding='Shift-JIS')
departure = 'つくば市'
df = df[df['目的種類:分類3']=='1_通勤'] #通勤者のデータに絞る
df = df[df['居住地:市区町村']!='88888_全計'] #全計は必要がないので除外する
df = df[df['着地:市区町村']!='88888_全計'] #同上
df = df[df['代表交通手段:分類2']=='9_合計'] #同上
# 居住地がつくば市のデータに限定する
df = df[df['居住地:市区町村'].str.contains(departure)].reset_index(drop=True)
df = df[~df['着地:市区町村'].str.contains('000_')] #都道府県レベルのデータを除外
df = df[~df['着地:市区町村'].str.contains('999')] #行き先不明のデータを除外
df['目的地'] = df['着地:市区町村'].str.split('_',expand=True)[1] #表記用
今回も作図にはPlotlyを使います。作成したデータをSunburst chartで描写します。各市の所属する都道府県を格納する列を作り、都道府県と市区町村の2つの情報を使って作図します。
df['都道府県']=''
for i in range(0, len(df)): # iterrows()を使えと言われそう
if df.iloc[i]['着地:市区町村'].startswith('08'):
df.iloc[i, df.columns.get_loc('都道府県')] = '茨城県'
elif df.iloc[i]['着地:市区町村'].startswith('11'):
df.iloc[i, df.columns.get_loc('都道府県')] = '埼玉県'
elif df.iloc[i]['着地:市区町村'].startswith('12'):
df.iloc[i, df.columns.get_loc('都道府県')] = '千葉県'
elif df.iloc[i]['着地:市区町村'].startswith('13'):
df.iloc[i, df.columns.get_loc('都道府県')] = '東京都'
elif df.iloc[i]['着地:市区町村'].startswith('14'):
df.iloc[i, df.columns.get_loc('都道府県')] = '神奈川県'
fig = px.sunburst(df5, path=['都道府県', '目的地'], values='トリップ数',
title='タイトル',width=1200, height=1200)
fig.update_layout(
font=dict(size=20),
plot_bgcolor='rgba(0,0,0,0)'
)
fig.show()
同様に守谷市、流山市、千代田区について作成します。
つくば市では過半数以上の通勤者の目的地がつくば市内であり、茨城県内への通勤者が合わせて80%ほどいるようです。県外への通勤では東京に向かう人口も多く、千葉・神奈川・埼玉への通勤者は合わせて10%程度というところのようです。
守谷市では守谷市内の通勤者はおよそ25%程度で、県内への通勤者は合わせて60%程度で、40%ほどは県外へ通勤しているようです。県外への通勤者の中では東京に向かう人口が最も多く、30%程度いるように見えます。
流山市になると茨城県への通勤者は一気に減り、最大の通勤先が東京、その次に千葉県になります。秋葉原駅のある千代田区までくると、茨城県への通勤者は全くと言っていいほど見られず、殆どが東京都内、特に千代田区への通勤者が多くなりました。
次に4都市について、外出の目的別に移動手段を見てみたいと思います。つくば市はいわゆる”車社会”なのですが、他の都市ではどうでしょうか。
つくば市では予想の通り、通学を除く全ての移動目的において車の利用が最も多いようです。鉄道の利用者は比較的少ないのですが、強いて言えば通勤目的において利用者数が多いと言えます。
守谷市でも自動車の利用率は高いようですが、通勤者の中では鉄道利用者もかなりいるようですね。業務における外出の手段では鉄道の利用が最も多くなりました。
流山市くらい東京に近づくと全ての目的手段において鉄道利用者の数が増加し、通勤および業務における移動手段としては最も多くなります。千代田区になると自動車の利用は殆ど見られず、鉄道や徒歩による移動が多くなります。特に私事においては徒歩による移動が最も多いという結果になりました。
最近では都市における住民の高齢化への対応策の一つとしてコンパクトシティ(脱車社会を目指し、公共交通機関または徒歩で移動できる範囲に都市機能をまとめた都市)へ注目が集まっていますが、現状のつくば市は移動手段の多くが自動車でありるため、将来の住民の移動手段の確保については多く考えることがありそうです。富山市や宇都宮市などのように、ライトレールを整備するのも選択肢の一つなのかもしれません。エビデンスとしては十分ではありませんが、人口増加率や地価、税収が向上する理由の一つとなったとも考えられています。
同じく車の利用率の高い守谷市ではロープウェイの導入についても議論されているようです。
パーソントリップ調査のデータは地域の交通特性を理解する上で大変有用なものです。また他の分析についても後日取り組んでみたいと思います。
それでは。