「隠れイップス」 送球イップス(リリース)
PCRT(心身条件反射療法)による施術によって、さまざまな慢性症状の改善をサポートしてきた。慢性症状の多くが、無意識的な脳の「誤作動信号(記憶)」が関係しており、その信号を特定し調整することで、慢性症状を引き起こしていた脳の神経回路が再構築され健全な状態へと改善する。
スポーツでよく知られた「イップス」の症状もその脳の「誤作動信号(記憶)」が関係しており、PCRTの施術では、どの部位、どの動作、どの場面など、さまざまなポイントで生じている生体信号の誤作動ポイント(生体エネルギーブロック、EB)を特定し、さらにその誤作動を引き起こしている無意識の脳の誤作動信号を特定して調整を行う。
誤作動信号を調整する大切なポイントは、身体刺激を加える施術そのものよりも、如何にして誤作動信号を引き出すことができるか、また、患者自身が誤作動に関係している無意識的な心の信号を認知できるかであり、慢性症状の施術効果を引き出すカギとなる。
先日、大学の野球選手(投手)が、左足首の痛み、背中周りのつまり感、左腰部、左股関節部の痛み、左手首の違和感を訴えて来院。足首は2年ほど前から発症して、6ヶ月ほど前に病院で手術をしたという。背中周りの症状は約3年前、手首は5年以上前から発症。
4回目の施術日では、関節痛の痛みはだいぶん改善されているとのことで、身体の動きも良くなっているという。それで、今日は以前からあるイップスのような症状を診てほしいとのこと。その内容は、送球のリリース時に、ボールを引っ掛けてしまうくクセがあり、本来の送球ができなくなっているとのことで、この症状は3年ほど前からあるという。
検査をすると、送球動作のリリースのタイミングで第2指と第3指に「誤作動信号」EBの陽性反応が検出される。思い当たる原因を問診してみると、症状が出る前に、先輩に「ボールをつぶす感じでリリースするように・・」と指導されて、それからおかしくなったという。その時のことを想像してもらうと、EB陽性反応が示されたので、その誤作動記憶の調整を行う。
さらに検査を進めると、「恐怖」のキーワードが検出され、6年前の記憶で、野球の監督さんとの関係で、自分の存在を否定されているかのようの恐れ、不安感があったとのことで、EBの陽性反応が示され、その誤作動記憶の調整を行なった。
次の施術日に送球での指の感覚を尋ねたところ、ずいぶん良くなったという。陽性反応を示していた第2指と第3指のEB陽性反応も示されていないので、ほぼ完治していると治療者も判断できた。
このようなイップス症状は、おそらく他者から見ても分からないような「隠れたイップス」といえるだろう。様々なスポーツで様々なタイプのイップスを治療してきたが、このような「隠れたイップス」症状を抱えて、本来のパフォーマンスが出せずに悩まれているアスリートも少なくはないだろう。
「イップス」という症状名を使わなくても、今までできていたスポーツのパフォーマンスができなくなった場合、恐らくこの「隠れイップス」すなわち誤作動信号が脳と身体に記憶されて、身体の働きに不調を引き起こしているだろう。
また、そのような誤作動信号が生じていると、関節がうまく噛み合わなくなって、関節炎などの症状を引き起こしてくる。アスリートにとって、身体の不調は、選手生命に関わる重要な問題である。身体のケアは単に肉体面のみならず、脳(心)との関係性による誤作動も注意深く見ていく必要がある。
PCRTのセミナーでは、脳(心)との関係性による誤作動信号を検出する技法と調整法を長年研究し続けて、多くの治療者を輩出してきた。まだまだ、認知度が低い治療法ではあるが、着実に広まりつつあるので、イップスやパフォーマンスで困った時には、近くのPCRT認定者の先生に相談していただければと願う。