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二人三脚の準備
タクさん:
タクさん、どうもありがとうございます。
『高校生だったころの、理系センスがあるが医学の専門教育は受けていない、タクさん』をターゲットに、PETの説明をしてください
というめんどくさいお題に、見事なお返事をいただき大変うれしいです。
あなたがかつて、どういうものに興味を惹かれ、どういう道をおぼろげに見据えていたのか。高校生のころのタクさんのマインドに一番寄り添えるのは今のあなただと思います。「高校時代の自分に向けて書いた文章」というのは、ごく限定した読者に思い切り移入して書く訓練になりますし、何より、「独りよがりとボランティアのいいとこどり」みたいなものが書けると思いました。実際、とてもいい文章でしたね。親しみがあり、決して相手をなめていない。
ではぼくも自分のお題に向き合います。
「自分の家族がPET検査を受けることになった41歳の男性会社員(非医療者)」向け
に、同じお題を書き直してみます。
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ご家族に対してこれから行うFDG-PETという検査について、パンフレットをお渡ししてあります。これからお話しする専門用語も、一部はパンフレットに載せてありますので、よろしければ後ほどあらためてご覧ください。
ここでは私たちがこの検査をこれからやりたい理由、やる意味、やって何がわかるのかについて簡単にご説明します。
今、ご家族の体の中には、『がん』があります。がんについては皆さん様々なイメージをお持ちなのですが、実際には、がんがどの臓器に発生したか、さらにはどれくらい広がっているかによって、これからどう対処していくべきかがまるで変わります。
そのため、体の中に存在するがん細胞を、様々な方法でマッピングする作業が必要になります。すでに超音波検査や内視鏡検査などを受けられて、この上まだ検査なのかとうんざりされているご様子ですけれども、FDG-PETにはこれまでの検査とはまたすこし違った利点があり、ぜひ行いたいと考えています。
たいていの画像検査は、がんが作り上げるカタマリの形や、そこに流れ込む血液の量をみることで、ある場所にあるカタマリががんなのか、がんではないのかを判断します。
これに対し、FDG-PET検査はすこし目の付け所が違います。この検査は、体中の細胞の中からとくに「糖分を異常に取り込むタイプの細胞」を見つけ出すことに秀でています。
例え話で恐縮ですけれども、わかりやすい例があるのでご紹介します。
ドローンを用いて浅草橋あたりの航空写真をとるところをイメージします。すると、普通のビルに混じってときおり、いかにも和風のノボリが立っていて、体格がよくて浴衣を着た方がいっぱい歩いている場所が見つかります。雰囲気や形から、あれはお相撲さんだな、ということがわかります。これが普通の画像検査のやりかたです。
これに対しFDG-PETは、それぞれのビルの中にどれくらい食材が運び込まれたかを見いだす検査です。ビルとか歩いている人の姿形に対してはあまり着目しません。しかし、ある建物に対して、とても多くの野菜やお魚、練り物などが運ばれていく様子だけを可視化することができます。周りのビルに比べてあきらかに大量のご飯を消費している建物があれば、あそこはもしかすると相撲部屋かもしれない、だからそこにはお相撲さんがいるだろうと想像することができます。
もちろん、大量に食材を消費している建物すべてが相撲部屋なわけはありません。ラグビー選手が合宿をしているかもしれない。大食い選手権の会場かもしれない。
そのため検査は必ず組み合わせて行います。FDG-PETの検査だけを重要視するわけではありません。ほかの画像と組み合わせた上で、「大柄の浴衣を着た人がいっぱい歩いているけれど、実は花火大会だった」というような、紛らわしい例にだまされずに、きちんとお相撲さんだけを見つけ出す確率がぐんと上がります。
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・・・・・・と、ぼくはこんな感じで書いてみました。うーん難しいですね。途中で例え話に逃げてしまいました。
例え話は聞き手の頭の中にイメージを喚起する力が強いですが、同時に、「この語り手は例え話に酔っているな」という悪印象を与えてしまう場合があります。また、実際にがんという病気に苦しんでいる人の前で、例え話ばかりしていると、がんにまともに向き合っていないのではないかという懸念も生まれるかもしれません。おまけにお相撲さんにはちょっと悪いことをしましたね。
このあたりは次の反省に活かしていこうと思います。
さあ、私たちはもうすこし、同じお題を違う切り口で書いてみましょう。
次にタクさんにお願いする執筆物の「仮想のお相手」は、これです。
「新聞社からの依頼です。
投書欄にPETって何?と質問が来ました。これに400字で答えてください。あなたの実名が署名されます。全国紙の健康面に載ります。」
で、ぼくがそのあとまた書くわけですが・・・・・・ぼくが誰に向かってモノを書くかについては、今度はタクさんに決めてもらいましょう。次回のnoteの最後で、「仮想のお相手」を指定してください。よろしくお願いします。
(2019.10.11 市原→タクさん)