山際の向こう、2秒の先に(0)
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2020年8月23日。……14時15分。
札幌市中央区、
札幌厚生病院病理診断科、主任部長デスク。
病理医ヤンデルは、あわてていた。
東京スタジオの音声は聞こえる。
ソニー製4Kカメラで映し出されたぼくの姿も、
きちんと東京スタジオに表示されている。
LiveUも正常に稼働している。
会場中継Zoomでも、YouTubeのライブ画面でも、
向こうの様子は、ライブ感抜群、ぼくに伝わってくる。
しかし、ただぼくの声だけが、東京スタジオに届かない。
司会の犬も、あわてていた。
台本では、ぼく(病理医ヤンデル)が、
この座談会の口火を切るはずだったからだ。
ここで、
漫画家・おかざき真里先生が口を開いた。
つよくやさしい言葉で「生老病死を」……
いや、「生老病死を安易に語ってはいけない」、ということを、
語った。
その俯瞰と接写のバランスにぼくはしびれた。
高野山の飛鷹和尚と回線がつながった。真言宗の英才。
おかざき先生から鋭い槍が飛ぶ。
先端に曼荼羅がくっついている槍だ。
「『慈悲が通じない』とは?」
並みの生命ならばつぶれて壁の模様になるレベル。
和尚はしずかにそれを受け止めた。
火花が散るかと思った。
でも和尚が見せたのはやさしい花火だった。
線香花火のような言葉。
東京と和歌山に、それぞれ、役者が揃っていた。
ただ医療の側から参加するぼくの声だけが、
スタジオに届かない状況だった。
猛烈な孤独に頭を抱えた。
……いや、実際には抱えてない。
みんなにも見えていたから、うそはつけないな。
「脳内で、頭を抱えた」。
白状すると、ぼくが昼ご飯のゴミを捨てに行ったときに
カメラのケーブルに足をひっかけたのが
配線トラブルの原因だったと思う。
たぶんそうだ。
でもこのことは、墓場まで持っていこう。
「もしかしたら墓の向こうまで見通す人が
この事実をあばいてしまうかもしれないけれど、」
「語らなかったことは、うそではないし、
それは、語るべきだとわからなかっただけだし。」
スタジオの声と動揺が伝わってくる。
でも、こちらから語りかけるすべがない。
急速にぼくは、
「筋萎縮性側索硬化症」の、
トータリィ・ロックトイン・シンドローム(TLS)のことを思った。
「完全閉じ込め症候群」
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不定期連載のお知らせです。
2020年8月23日(日)、YouTube LIVEで開催された
「SNS医療のカタチTV #やさしい医療 」の内部告h・・・
登壇者レポートを数回にわけて書いていきます。
ご期待下さい。どうぞよろしくお願い申し上げます。
(2020.8.24 第0話・予告編)
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