先々々週の國松
先々々週。
2020年1月16日。
三省堂書店神保町本店で、ぼくは、鬼才・國松と対談した。
対談前。
ぼくは、初対面の國松たちとの挨拶もそこそこに、まずはどうしても、「店内」を見たかった。
ここは聖地。
噂の棚を見たかった。医書の総本山とも称される、三省堂神保町の本領をこの目でおがんでおきたかったのだ。
なんかもうすっごいよかった。
医学書の棚を作ってくれる書店員さん。
はー、これは、「とらや」だな。
「とらや」贈ろう。感謝のきもちを。
とりあえず万単位の教科書を買って札幌に送ったのだが、その中に、これから会う(ていうか一瞬会ってる)國松の本があった。
『ニッチなディジーズ』という。
どうせ、ニッチ(マニアック)なディジーズ(病気)について書いてあるんだろうな……。
それくらいの認識だった。まあ念のため買った、というかんじだ。
買った本は、その場では読んでいない(段ボールに入れて発送してもらった)。
対談前の控室で、ぼくは國松に、『ニッチなディジーズ』、買いましたよ、と告げた。
すると彼はこともなげに、こう言ったのだ。
「あれは発音が違うんですよ。実はね。
”ニッチなディジーズ”(エッチなおねえさん、的発音)ではないんです。
”ニッチなディジーズ”(切手のシリーズ、的発音)なんです。」
ぼくはそれを聞いて、2秒後に椅子からはねた。
「niche in a disease!! (意訳:ヤマイの中にある、スキマ)
そ、そういうことなんですか!! ダブルミーニング!!」
國松はにやりと笑ってうなずいた。「そういう言葉遊び好きなんですよ」
もう、脱帽して、高笑いするしかなかった。
なんてすごい人なんだ。
森博嗣の" You may die in my show(夢で逢いましょう) " を思い出した。
ぼくはほんとうに、高らかに笑ってしまった。
ふと湿度が上がった気がして、振り向いた。
同席していたスタッフが、突然意味のわからない話題で高笑いしたぼくを見て、あわれみの目線を送っていた。「何がnicheだよ」彼らはそういう目をしていた。
ニッチなディジーズはタイトルだけじゃなくて内容もべらぼうによかった。その話はまた次回にでも。
(来週に続く。)