医療系ウェブサービスいろいろ
おまけ記事。
こちら(↓)を読むときの、ご参考までに。
(A)医療系データベースの例
白眉は、かつて「メルクマニュアル」という名前で知られたMSDマニュアルだと思います。業界最古参(なんと1899年からある、インターネットより古い)です。
家庭版はおろか、いわゆる医療者版である「プロフェッショナル版」すらもすべて無料。
きちんと査読(プロの医療者による監修)も入っています。
難易度・ボリュームは医学部の学生がレポートを書く際に使えるレベル。(良くも悪くも)教科書的です。
昔、多くの家庭で常備されていた「家庭の医学」という分厚い本がありましたが(今もあるか)、あれをネットで、タダで見られるのがMSDマニュアルだと思っていただければしっくりくるかもしれません。
ほか、たとえば、国立がん研究センターのがん情報サービス。
情報量として完璧です。だいぶ有名になりましたね。
いずれもすばらしいサービスですが、たいていの人は、このようなデータベース・辞書型のウェブサイトの存在を知りません。でも、病気の名前でグーグル検索をすれば、そこでひっかかってくる結果の中にMSDマニュアルやがん情報サービスの記事が含まれています。
世の中は辞書まみれですが、Google検索システムが辞書を統合してくれている。
いい時代ですよね。
ところで、この連載の中でまてぃさんが例示してくださった「メドレーの医療辞典」は、カテゴリとしては(A)医療系データベースなのですが、MSDマニュアルの後追いにならないように、変化をつけています。
疾患名で検索して出てくる「基礎知識」には、教科書的な情報が書かれていますが、大変失礼ながら、メドレーに掲載されている「基礎知識」は、それ単独ではMSDマニュアルの足下にも及びません。でも、そこはどうでもいいのです。
基礎知識のすぐそばに、「関連ニュース」として、ヤフトピ(Yahoo!のトピックスに上がってくるような記事)型の、個人記事へのリンクが置いてあります。ここが後発組の工夫。たとえば、「新型コロナウイルス感染症」のページを見てみるとわかりますよ。
「基礎知識」というタブのほかに、「関連ニュース」というタブがあるでしょう?
関連ニュースは骨太なものが多く、現場の医師がガチで書いている印象です。基礎知識よりももう少し現場に即した、流れのある情報であり、うまくユーザーのニーズとマッチすればすごく役に立つでしょう。単に辞書を引くよりも、幅広く分厚い情報を得ることができますからね。
なお、関連ニュースはすべての項目に完備されているわけではありません。ニュースがたくさん掲載されている病気と、あまり掲載されていない病気があって、差はけっこう激しいです。
さきほどの「新型コロナウイルス感染症」に関するページでは、関連ニュースはなんと20件も出てきます。でも「過敏性腸症候群」だと……
「関連ニュース」は「10件」。COVID-19の半分です。
さらに、「むずむず脚症候群」だと……
「関連ニュース」は「1件」しかありません。かわりに「Q&A」のコーナーがあって、これが基礎知識をただ読むよりもはるかにわかりやすい……んですが、現状β版のようですね(すべてに採用されているシステムではない)。
病気の注目度や知名度によって、「関連ニュース」の数が変わり、記事の切り口も変わる。これは、参加登録している医師の専門性や、社会のニーズに応じて、ニュースとして書ける話題と書きにくい話題に歴然とした差が出てくるからです。
(B)医療系Q&Aサイトの例
まてぃさんに例示して頂いたアスクドクターズは、エムスリーの運営するかなりでかいQ&Aサイトです。
類似のサービスは、たとえばメディカルノート内にもあります。
これらはいずれも、「何らかの方法で医師を確保し」、「ヤフー知恵袋的に患者からの相談に答える」サイトです。
患者側の質問だけならたいてい無料で閲覧することができ、医師の回答に関しては月額いくらとお金を払うことで閲覧が可能になります。
(2020.12.23 『雲をつかむはなし』補遺)