NUM-AMI-VACCINE(4) 嫌よ嫌よは無関心
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けいゆう「今のお話を聞いて、ほむほむ先生どうですか?」
ほむほむ「最近、医療情報関連の記事を書いていて思うのは……すごく単純に書いたほうが読んでもらえるんだけど、単純にしようとすると、えー……なんていうかなあ、正確性がかなり失われるというか。カドを丸めすぎてしまうというかね。そこのバランスはすごく難しいなあと思ってます。
たぶん、ツイッターがばっと広がりやすいってのも、短いからってのがあるよね。」
ヤンデル「あー。」
ほむほむ「でも、シズル感? おいしそうな情報って難しいですよねえ。」
ヤンデル「あっは……だよね……」
市川さん「一瞬いいですか」
ヤンデル「もちろんもちろん」
市川さん「今、ワクチンの話でね、アメリカの峰先生とか、木下先生とかと、仲よくやってるんですけれど、峰先生が言っていたことで、いみじくも今の話題に近いことがあって、
「ぼくら医療者が物事を伝えようとするとき、リテラシーを高めよう、できるだけ丁寧にいろいろな情報を伝えよう、ってやるんですけれど、実際に "効く" のは、リテラシーなし、断言する、一言でいう、これが一番 ”効く” んですよね、そこが悩みなんです」
って言ってたのが思い出されましたね……。メディア側からすると、後者、短く断言するのが "効く" ってのは全くその通り、だけどそれでいいのかいな、っていう。」
ヤンデル(そこでワクチンを2倍にしてワクワクチンチンですよ)
↑これ言おうと思ってたんですが、腰の激痛で息継ぎがままならず、あいづちしか打てませんでした。本当です。
けいゆう「今の話を聞いていて思ったことを言いますね。医療従事者が、上手に感情に訴えかけるような発信するのが苦手な理由として……。
まず、メディアの人と違って、単純に伝えるトレーニングをしていないのというのはありますよね。報道のプロではない。
でも、それに加えて、やっぱり専門家ってのは、今まで自分が『積み重ねて学んできた結果』、知識を身につけているわけですよね。だから一般の方々にも、自分たちと同じように、少しずつ積み重ねることで、似たような場所にたどり着けるんだよと……知識の積み重ねを追体験してほしい、と思いがちである。」
水野さん「ふんふん……」
ウサギ「(うなづく)」
けいゆう「ひとっ飛びで、結論だけ伝えても、伝わらないんじゃないか……自分自身にそういう、積み重ねてわかってきた経験があるからこそ、短い言葉で何かをわかった気になるのは嫌い、という専門家も多いのではないか。そして、学ばなくてはだめだよね、という姿勢を、専門家以外の人にも求めがちなところはあると思ってます。」
ヤンデル「なるほど。」
ウサギ「(上を向いてうなずく)」
けいゆう「普通の人がみんな専門家みたいになる必要は全くないんですけれどね。」
市川さん「……まさにその通りですよね……あと……ぼくが最近よく言うのは、
普通の人は健康や医療についてそんなに興味ない
ってことですかね。」
ヤンデル「ない! ないね! ない!」
水野さん「あ、でも、今はすっごい興味ある人も多いんじゃないですか? 新型コロナウイルスの世の中になって……」
市川さん「あ、それはですね。たしかにコロナ限定で強烈にみんな興味を持ち始めたんだけど……。これ、驚くべきことに、コロナの話題って、去年(2020年)の緊急事態宣言のころがピークで、そこから右肩下がりなんですよ。」
ヤンデル「あっ、なるほど。」
市川さん「メディア側の人間はまだ興味があるから取り上げてますけれど、一般の人からすると……コロナの話題なんてね、もう、見たくもない、そういうムードにもなりつつあるような気がする」
ヤンデル「あああああ」
市川さん「ワクチンを打ちたくないなんて言う声にしてもね、もうコロナなんてどうでもいいって思ってたりする人が、けっこう多い。若い人を中心に、なんでワクチンなんか打たなきゃいけないわけ、もういいよ、みたいな空気、正直あると思います。」
ヤンデル「若い人というのは……ティーンに近い人、ということですか?」
市川さん「いや……ここでぼくの言う『若い』は64歳未満ですね」
ヤンデル「わっ、若い(笑)」
*
水野さん「私は……お医者さんたちに伝える力がない、とは全く思ってなくて。たとえば忽那先生とかも」
ヤンデル「あああー忽那先生すごいですよね」
水野さん「ええ、すばらしい発信をされている方もいるので、メディアも見習わなければいけないなと思うところです。
その上で……(メディア側にいる)私が医療記者になって一番つらかったところを言いますと、何が正しいかをどうやって調べたらいいんだということですね。どこで勉強したらいいんだ、という状態。メディカルジャーナリズム勉強会に入るまでは、誰に相談したらいいかわかりませんでした。『とりあえずお医者さん(を名乗る人)が言ってるんであれば本当なんじゃないか』って気持ちになりかねない。もちろん、裏は取るし、デスクとも相談するし、記者として取材源が正しいかどうかを調べはするんですけれど、大変です。
また、ひとりの専門家に一時間話をうかがっても、記事になるのはごく一部だったりして、これももったいないなと思ってしまう……。かといって、お医者さんはすごい忙しそうだから、追加で質問するの大丈夫かなあと心配になる。」
けいゆう「なるほど……」
*
ここまでの話を聞いていたぼくは、本日のお題を見て、しみじみ思った。
「メディアによる医療情報発信の課題」って書いておいたけれど……なんだか……医療者側の課題ばかりが浮き彫りになるなあ……と。
(続く。)
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