医の中の蛙(7) グレーの中で距離を縮めていけないだろうかと
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(※この動画リンクをクリックすると、ちょうど藤マッツの語りくらいから動画が再生されます。)
藤マッツ「(NHKの人間である)ぼくがdeleteCに関わった理由なんですけど……その……小国さんから急にメール来て……」
ヤンデル「急にね」
藤マッツ「3日後におもしろいことやるから来て、みたいな話からはじまってるんですけど……」
ヤンデル(NHKっぽいなあ)
藤マッツ「ナオさんに……さいしょキックオフイベントでお話をうかがったとき。ぼくはもともと、『がん』って、あのー……触れられない……なんていうんですかね、相当な責任と知識がないと触れられないくらいハードルが高いものだったんですよ」
ヤンデル「ああー」(メディアの人そういうの気にするだろうなあ)
藤マッツ「このイベントにぼくが参加しても、リポートとかできないかもしれないけど、とりあえず小国さんが言うから行ってみよっかな、くらいからはじまっていて」
ヤンデル「ああ……」
藤マッツ「そしたら最初にナオさんが、
「がんって当事者だけじゃなくて、もっといろんな人がかかわらないと、何も変わらないんだ」
って話をされたんですね」
藤マッツ「で、自分にできることってなんだろう……って考え始めて……」
ほむ(ちらっと画面上で藤松さんの方を向く)
ヤンデル(おっZoom芸習得してる)
藤マッツ「3年前の2月4日。ナオさんに話を聞かせてくれって連絡して、それでいろいろスタートしたってかんじです」
ヤンデル「ふんふんふん」
藤マッツ「でね……ナオさんて、過去のディレクター人生のなかで、もっとも強敵だったんですよ」
ヤンデル「キョウテキ! い、いやちょっと待って、中島さんちょっとこれ反論してくださいよ」
ナオちゃん「いや……何も反論できることないです……」
ヤンデル「はい、ということで公認の強敵でした、では続きをどうぞ」
藤マッツ「いや……敵じゃないっすよね、ただ、強かった、ツワモノ」
ヤンデル(もうやめてやれ笑)
藤マッツ「ナオさんは、ぼくからの質問で違和感のあることを、全部言葉にしてくれる方なんですね」
ヤンデル「ほう」
藤マッツ「ぼくの質問って、例えていうならば、『白か黒か』だったんですよ」
ヤンデル「ほう!」
藤マッツ「たとえば……『がんは絶望するもの、死ぬもの』みたいな、苦しい部分をとにかく聞こうとしていたときがあって。それをナオさんが否定すると、じゃあ大丈夫ってことなんですね、大丈夫って思ったことはどういうことですか? みたいに、『白か黒か』だけを聞いてた」
けいゆう(うなずく)
藤マッツ「でもがんってぜんぜんそういうものじゃなくて、その間のグレーの部分がある。そういうところに、(視聴者に)いかに興味を持ってもらって、ちゃんと自分事に思ってもらえるかってのが、相当なテーマで……」
けいゆう(うなずく)
藤マッツ「ナオさんに言われたことで……インタビュー中にはっとして、そこでいったんインタビューを止めてしまったエピソードってのもあって」
ヤンデル「ほうほう」
藤マッツ「ナオさんに、『がんと診断されたときとか、つらいことを感じたときに、夜、その……泣いたりしないのか』ってことを聞いたんですよ」
ヤンデル「ああ……」
藤マッツ「これ、マンガだったりドキュメンタリーだったりで、擦り込まれてるイメージだと思うんですけど」
ヤンデル「うん……」
藤マッツ「泣いてることは前提で、泣いてるときにどういうこと考えてますか、って、聞いたんですよ。そしたらナオさんに、
「えっ、そもそも、(私が)夜中じゅう泣いてるってイメージを持ってるの?」
「30分くらいすると、泣くの疲れるんだよ」
って言われたんですよ」
ほむ(全身で反応しながらうなずく)
ヤンデル「わぁあー」
藤マッツ「ぼくが『がん患者』っていう言葉を番組(※「ひとモノガタリ」NHK総合)で一切使わなかったんですけれど、その理由も、こう……『がん患者』っていうレッテルを貼ってきた自分に相当気づかされたからで」
*
藤マッツ「ここでけいゆうさんの言葉とつながってくることなんですけど、いろんな情報が……悪質なものも含めて広がっていく中で、医療ってのは白でも黒でもない、グレーの、グラデーションだって話を、けいゆうさんから聞いて」
ヤンデル「おお……けいゆう先生いいこと言うじゃないの……」
いけいゆう(照れる)
藤マッツ「ぼく、取材ノートがあって、ひとモノガタリ(※ナオさんの取材)と、フェイクバスターズ(※けいゆう出演)と、これらは別々に分かれてるノートなんですけどね。どっちのノートにも、
白でも黒でもないグレー
という言葉が書いてあったんですよ。昨日読み返したんですけどね」
ナオちゃん「ほんとうですよね……すごい」(口に手を当てながら)
ヤンデル「かっこいい」
藤マッツ「これ、俺やっぱりここだなって思って。今回こうして、『メディアの立場からできること』の話をするのってぼくにとってもはじめてで、何を話そうかと思ったときに、やっぱりこの、グレーの部分をどれだけ人々に、興味を持って見てもらえるかってところが勝負かなって……」
*
藤マッツ「あともうひとつ……ぼく、テレビは一発屋でしかない、花火でしかない、と思ってて」
ヤンデル「花火」
藤マッツ「テレビの番組をつくる、番組屋さんって、今まではひとつの番組を『ゴール』にしてきた。放送したら、あとはどうぞよろしくお願いします社会のみなさん、って」
ヤンデル「ほう……」
藤マッツ「でもぼくは……できる限り番組を『スタート地点』にする……きっっかけをつくる。放送後もずっと(取材対象を)追い続けるってのはなかなか難しいんですけれど……ぼくはプライベートでもdeleteCを追いかけながら、番組の先のところでご一緒させてもらっているし、できればフェイクバスターズも、けいゆうさんたちと一緒に、放送の『先』でイベントとかできたらいいなって思ってます」
*
藤マッツ「メディアの立場からできること……今後、たとえば民放さんとかももっと(deleteCの活動などを)取り上げてくれたらいいなと思いつつ、放送を一回できてありがとうございますっていうんじゃなくて、放送に興味を持ってくれた(他局の)ディレクターとかもいっぱいいると思うんですよね」
ヤンデル(うなずきながら)「うん、うん」
藤マッツ「たとえばそういう人たちといっしょに、メディアのメンバーで、(テレビの)外で何かできることはないんだろうか、とか、医療者とメディアで何かチーム作れることはないのか、とか」
ほむ(あごに手を当てて考えている)
藤マッツ「そういう話、こう、具体的に社会を変えていく動きみたいなものを作っていくってのが……今後、やりたいこと、かなあと」
ヤンデル「めちゃくちゃいい話だ。すぐに話をふりましょう、中島さん、今の話を聞いてどう思われましたか」
ナオさん「そうですね、今のお話に出てきた『グラデーションのあるグレー』ってのは、私自身が発信する際に使ってきた言葉だったので、今、ゾクゾクってしながら聞いてたんですけど」
ヤンデル「わかるわかる……」
ナオさん「小国さんとも常に話し続けてきたこと、私たちがこだわってきたことのひとつとして、『啓発』ってのがあるんです」
ヤンデル「啓発」
ナオさん「はい、啓発ですね。がんって本当に難しくて、研究内容もわけわかんないんですけどね、私たちからすると、小国さんも私も、プロじゃない、専門家ではないからわからない、だからこそ、そのわかりづらいところを『翻訳』したり、『どういうふうに表現したらいいか』ってことにこだわり続けて……たとえば、白か黒かっていうとすごく両者のあいだに距離を感じてしまうってこととか」
藤マッツ(何度もうなずく)
ナオさん「自分たちも、みんなも、なにかしらの部分では絶対グレーだったりする。グレーの中で距離を縮めていけないだろうかと」
ほむ(ヘッドホンを調整する)
ナオさん「私にとっては、まず、小国さんというすごい、大きな味方を付けたところからdeleteCってのがはじまって……そしてこう……藤マッツって呼んでますけど藤マッツーとか」
ヤンデル「藤マッツ(笑)」(noteの呼び名決まったな)
ナオさん「そう藤マッツとか、ほんと、いろんな ”登場人物” が加わって、今のdeleteCにつながってきているなって」
ヤンデル「いいですね……」
*
ヤンデル「よし、ではここからの残り時間、しゃべってほしい人をぼくが指名します。ただしいいですか、けいゆう先生は、このあと予定があるので、15時をちょっとでも過ぎるとキレますから\ドッ/、いいですか、時間を守ってくださいね、それでは最後に……」
ヤンデル「今の話の流れから、まずは当然、小国さんです。そして……ほむほむ先生。白と黒と決められない臨床の中で戦ってきた医者としてコメントをぜひ。で、けいゆう先生が締めて、最後、中島さんと、藤松さんと、小国さん。これから何をやりたいですとかじゃなくていいんで、いい顔して映って終わりましょう。」
(最終回に続く。)
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