磨かれた大剣
▼前回の大須賀先生の記事はこちらです。
中心部の正確な情報ほど、小さくなって見えにくくなっています。その代わりに、周辺にある不正確な情報がとても大きくなって、目を引くようになっています。
そう。これがネットで病気などを調べた時に、皆さんが置かれる感覚に似たものになります。
まさに、”誤解の平原にたたずむ人が見る景色”です。
あなたはこの中から、正確な情報の中心(コア)を見つけられますか?
――正確な医療情報の中心はどこだ!!/大須賀 覚 より
大須賀先生からの、見事な問いかけです。これに対する回答も非常にわかりやすかったですね。
実はこの正確性の中心点に必ず来る情報があるんです。それを意識してみると、中心は意外に早く見つかります。
コアに来る情報とは、「政府機関・国際機関が発する情報」です。
政府機関とは、厚生労働省や国立がん研究センターなどの政府が運営する組織です。これは各国にあって、米国だとアメリカ疾病予防管理センター(CDC)、国立がん研究所 (NCI)などがそうです。
国際機関は世界保健機関 (WHO)などの、グローバルに病気や社会問題について対応する機関のことです。
――正確な医療情報の中心はどこだ!!/大須賀 覚 より
医療や健康に関する情報を探す上で、これほどわかりやすい「旗印」はないでしょう。
なぜ政府機関・国際機関の情報が信頼できるのか、「情報の中心」になり得るのかについても、大須賀先生はクリアに理由を述べてくださいます。
「専門家チーム」がいるのだということ。
膨大なお金と時間をかけてまとめた情報を、さらに複数の専門家……たとえば、情報の伝え方の専門家や、法律の専門家などによって、何重にも正確性の検証を行うのだということ。
「個人のレベルを超えた仕事」というのがキーワードですね。
みんなでやるってことですよ。そりゃ頼りになるよなあ、と。
さて、大須賀先生の書いたものを読みながら、「政府機関・国際機関の出した情報がコアとして信頼できる理由」をほかにも考え付きました。蛇足かもしれませんが、いちおう付記しておきます。
ちょっと硬い文章になるかもしれませんので、忙しい方は、ウサギが出てくるまで読み飛ばしてください。
政府機関や国際機関は、そもそも知名度が圧倒的です。マスメディアやインターネットによる情報の拡散力もべらぼうに高いです。このため、情報を世に出してから無数の人々の目に触れます。
これは、いち個人の発信とはレベルの違う量の、「批判の目」に晒される、ということです。
特に、科学的な視点をもってあらゆる情報をきちんと精査できる多数の専門家に、情報発表の直後から見られ続けます。そう、専門家がいるのは、政府機関や国際機関の内部だけではないですよね。外部にも山ほどいらっしゃいます。
政府機関・国際機関は、情報を世に出す「前」に、とても綿密に検証を行うのですが、それと同じか、あるいはそれ以上に、情報を出した「後」も検証され続けるのです。
さまざまな専門家たちに、文字通り隅から隅までつっつかれる。これは、めちゃくちゃでかいメリットだと思うんですよ。
/) /)
( 'ㅅ')ฅ <ハーイ
なぜなら、外部の専門家たちが指摘し続けることで、公的機関の出す情報は、どんどん磨かれていくからです。そもそも、専門家による情報の批判というのは、「ボコボコに叩いて、政府機関をぶっつぶそう」とか、「WHOをほろぼす」みたいな、不穏な感情では駆動されていません。そういう、実のないナンクセではない。
専門家は、「多くの目に触れる情報だから、出たあともアップデートしといたほうがいいよね」という気持ちで情報を検証します。
スマホゲームのユーザーが、ゲームをよくしようと思って前向きな意見を寄せる、みたいなものです。死ぬほど課金したのにガチャが出ない、みたいな個人的なうらみつらみではなく、β版のときに気づかなかったわずかな不具合を訂正してはどうですか、みたいなイメージ。
政府機関・国際機関の出す医療健康情報は、「少し伝わりにくいかな」「もしかしたら誤解を招くかな」くらいの小さな不具合を、きちんと直し続けていきます。
さらに、新しい論文が出たなどの理由でエビデンスが更新されると、公的情報もまたきちんと更新されます。一度出した情報だからといって、決して盲信はしません。
これ、とても大事なことなのです。
科学というのは、
「凝り固まったひとつの論理を声高に言い続けること」ではなく、
「常にその時点での最良を更新し続けていくこと」です。
……さて、こうやって書くと、政府機関・国際機関の情報さえあれば、ほかに情報発信に携わる人たちなんていらないじゃないか……と思いたくもなりますが。
そういうわけにもいきません。
なぜなら、ここには、「守備範囲の問題」があるからです。特に、今の日本国内の公的機関が出す情報では、カバーし切れていない部分もある……。
このあたりの話を、次は大須賀先生がしてくれるんじゃないかな? なんとなく、最近のツイートを見ていて思いました。
違うかもしれません! まったく違う話題ですでに次のお手紙が書かれているかもしれませんが!
その場合はなんかちょっとごめんねってします(シレッと)。