NUM-AMI-VACCINE(3) 亀仙人、最後の魔封波!!
↓下記の動画リンクをクリックすると、今日の記事で扱っているあたりから再生がはじまります。
▼前回記事
市川さん「一般の人は、医療や健康の情報をどこから得ているでしょうか? 誰に質問しちゃおうかな。じゃあ、ほむほむさん。」
ほむほむ「そうですね、テレビ、新聞、それから知人。そんなところですかねえ」
市川さん「お! さすが! ……じつはですね、この質問、EU諸国と日本で回答がぜんぜん違うんですよ。」
水野さん「ふうーん」
市川さん「EU諸国で、医療の非専門家がどこから医療情報を得ているかというと……1位が家族・友人。2位が医者。3位が薬剤師。そして4位がテレビなんですね。」
ヤンデル「ほう」
市川さん「で、日本はどうかというと……これは東京都のデータですが、圧倒的にテレビ。」
ヤンデル「おっ……」
市川さん「テレビ8割と。」
市川さん「それに次ぐのがインターネット、そして家族・友人・知人。……おもしろいのがですね……別に東京都も ”あえて” やってるわけじゃないと思うんですが、日本では、『医師・薬剤師』がアンケートの選択肢に存在すらしないんですよ」
ヤンデル「オッ…」
水野さん「ああ!」
市川さん「EUでは医師、特に家庭医、あるいは薬剤師が、医療情報を気軽に聞く相手として存在している。これに対して、日本では、医師とか薬剤師とかはあくまで病気になったときに治療してくれる、お薬をくれる人であって、そもそも、病気ではないときに医療や健康の情報を教えてくれる人とは思われてもいない、っていう」
ヤンデル「ああああ」
市川さん「今はSNSとかもあって、ヘルスコミュニケーションのかたちは多様化しているとは思うんですけど……とくに日本では、医療者から無関心層(今病気ではない人)へのコミュニケーションは普及していなくて、テレビとかインターネットを通じるしかない状況なんですね。すると、刺さる表現に、なんて言ったらいいですかね、尖った表現に頼りがち、っていうか。そういう中でどうしたらいいのかなってのがメディ勉をやっている問題意識でもあります。」
ヤンデル「なるほど。」
*
市川さん「ではもうひとつ質問です。これはスタンフォード大学で行われたとある研究の結果です。野菜をもっと学生ちゃんにたくさん食べて欲しいなということで、」
ヤンデル(今、学生ちゃんって言った!)
けいゆう(今、学生ちゃんって言った!)
市川さん「ビュッフェ形式の学生食堂で、どんな工夫をしたら、みんながもっと野菜を食べてくれるでしょうか? では……水野さん」
水野さん「えーと……私はポテトが好きなので」
市川さん「それは野菜じゃない」
水野さん「それはさすがにわかる(小声)」
ヤンデル「笑」
水野さん「えーと、野菜をポテトといっしょに揚げてくれた……かなあ」
ヤンデル「あー、抱き合わせってことね」
水野さん「そ、学生さんの好物と抱き合わせる、みたいな」
市川さん「なるほど……では……市原さんどうですか」
ヤンデル「おっ、これはですね、もしこの質問を、普通のバラエティ番組とかでクイズにして出されたらぜんぜんわからなかったと思うんですけれど、今日の医戸端会議の文脈を考えると……わかるんですよ……」
市川さん「お!」
ヤンデル「えーと、『生産者の声を、野菜の横に表示した』!」
市川さん「なるほどストーリー系ですね! かなり近いですが……」
亀仙人「は、はずした……!とんだドジを……惜しいのう……!」
ヤンデル「自信満々で答えたのに」
ほむほむ「ぼくも答えていい?」
市川さん「お、ほむほむさん。聞きたい!」
ヤンデル「ここでカットイン!」
ほむほむ「野菜を食べたら将来こんな体型になりますよ、みたいな、将来像を出す、とか!」
市川さん「なるほどー、さすがです。」
ほむほむ「……これで間違えたらどうしよう」(フラグ)
市川さん「さて……じつはそうではなかったんですね」
ヤンデル(さすがじゃねぇじゃねぇか!)
市川さん「学生食堂は、料理につける説明書き、ポップの内容を、少し変えたんです。この研究では、野菜にどのような説明書きが付いていたら一番食べられるかというのを調べました。たとえば……」
1)刺激的な唐辛子と、ピリッとライムを効かせたビーツ
2)砂糖無添加 カロリーが気になる人向けビーツ
このように、かたほうは「おいしそうに、シズル感が出るように」ポップをつけて、もうかたほうでは「健康的そうに」説明を書いたわけです。そしたら、1)のほう、「おいしそうなほう」が圧倒的に勝ちました。
ヤンデル「あー」
市川さん「メディアの世界では常識っちゃあ常識ですよね……この食品が体にいいですよ、ということを伝えたいという目的があったとしても、まずはめちゃくちゃうまそうに書くほうが大事なんです。こういうことを、医療者の方々はあまり意識しておられない気がする。」
ヤンデル「うん……」
市川さん「メディアは伝え方については詳しいんだけれど、医療情報のことはよくわからない。一方で、医療者のみなさんは、医療情報のことには詳しいけれど、伝え方に関しては……まあ今日ここにいらっしゃるSNS医療のカタチの方なんかは上位0.1%ってくらい、伝え方のことはよくわかってらっしゃるかもしれないですけれど、」
ヤンデル「その0.1%のふたりがクイズを当てにいって外してるのつらい」
ほむほむ(患者が全快したときのような笑顔で手を叩いて笑う)
ヤンデル「やっぱりぼくらの回答のスタイルなんかまさにそうなんだけど……わかりやすく伝えようとしているはずなのに、つい、情報!情報! って情報寄りの発信をしてしまっていて、今市川さんがおっしゃったみたいな、『おいしそうな』『シズル感のある』あるいは『おもしろそうな』言葉の使い方についてはちょっと……苦手だな。腰が限界なのですみませんがけいゆう先生こっから回してください」
突然ふられてびっくりするけいゆう「ええっ!? あっはい、じゃ、今のお二人の話について、医療従事者の感想も聞いてみましょうか」
(続く。)
▼次回記事