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超スピードドンブラコ
タクさん
どうもどうもお返事ありがとうございます。
そうなんですよねー。秋は医学者・生命科学者にとっては、さまざまな研究費の申し込みが殺到するとても忙しいシーズンです。
Twitterでもあの准教授が発狂し、あの教授が失踪し、あのポスドクが3kgカレーを食って腹部が破裂していました。秋はみんな壊れます。「科研費」が秋の季語になって歳時記に載る日も近いでしょう。
科
研
費
や
T
L
ミ
ュ
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ト
済
み
の
夜
そんな時期に往復書簡にお付き合いいただいて誠にありがとうございます。ぼくは研究者ではないので、秋はふつうに旅行の秋として楽しんでおります。でも日帰りはもういやだなあ。
さて今回、タクさんからお題を出していただきました。お題に沿って文章を書くだけでも大変だと思うのです。なのに、ここまでの流れを説明していただいたばかりか、医療情報を伝えるというお題にぼくらがここまでどう考えてきたかを簡単にまとめていただいて、すごいなと思いました。助かります。これいい連載ですよ……。前回のタクさんの記事を以下に貼っておきます。名作。
さて、タクさんは忙しいなかで次々とぼくのお題に答えてくださっているのですが、ぼくが一方的にお題を出し続ける関係はなんだか家庭教師みたいで、いまいちですよね。せっかくの「国際文通」です、相互に与え合うやりとりのほうがいいんじゃないかな、と思い、今回タクさんに「ぼくへのお題」を出してもらうことにしました。
案の定、自分が考えていなかった角度からのお返事はギュッと心臓をつかまれます。タクさんからいただいたお題はこちら。
「Twitterに『PETとは何?』についての情報を置いて来ようとする場合、ヤンデルさんならどうしますか?」
承知しました。いいですねえ。ツイッタラーとしてお答えします。
ツイッター、新聞の投稿欄に答える400字よりもさらに文字数制限が厳しいです。上限で140字。ただし、ツイートはだいたい40字を超えると一部の人しか読まなくなります。なので画像を使ったり、リンクを使ったりしながら、なるべく短く伝えるのがいいでしょう。
たとえばぼくは以下のように答えます。実際にツイートしてみました。
国立国際医療研究センター病院の「PET-CTとは」がかなりわかりやすい、特にイラスト。要点ビシッと突き刺してる。文章量は多いけどイラストのおかげでだいぶわかる。推せる……https://t.co/Xjko9w7JmN
— ヤンデルさん (@Dr_yandel) November 11, 2019
今回使った技術は以下の通りです。
・「国立」すなわち公的機関のリンクを貼る。
・なぜここを見るとわかりやすいのかという「価値判断」を、読者より先にぼくがやってしまう。
・病院名の段階でかなり漢字が多いので、それ以外の部分は漢字を減らし、どうしても漢字を使う場合も画数を少なめにしておく。
・「推せる……」というキーフレーズ。
この中で一番大切な技術はどれだかおわかりになりますか?
「推せる」という言葉を選ぶ感覚? そこは別に……さほど重要じゃないです。
「公的機関のウェブサイトリンクを貼った」ということです。これが一番だいじ。
詳しくいうと、「ストック型(長期間にわたって多くの人が見に来られるような、ありかがはっきりしていて内容が固定されているタイプ)のウェブサービスと紐付けた」のです。
Twitterというフロー型(情報を流していくかんじ)のサービスを使って情報発信する上で必ず意識しておかなければいけないことがあります。それは、フロー型だけで情報発信を終わらせてはいけないということ(あくまで、医療情報のように浸透させることが目的の場合は、ですよ)。
TwitterをはじめとするSNSは、情報をスピードの速い川に流していくイメージ。川沿いで水面を見ている私たちは、上流から情報が超スピードドンブラコでやってくるのを見ながら、「2,3秒ずつ感動して次々に忘れる生き物」と化します。クソリプを投げつけてもリプライごと川に飲み込まれていくので心が傷みませんね。
そんなSNSでは、情報を定着させることは難しいのです。フロー型にはフロー型の役割があり、それは情報を受容するだけの雰囲気を作るとか、印象を生み出すとか、対話の場として使うとか、まあいろいろ役に立つのです。しかし、情報を浸透させるのは苦手。
そこで、ストック型のサービスとセットにすることが必要になります。
短文、もしくは写真的で、印象を拡散することに向いているTwitter, Facebook, Instagram. そして実はnoteも、私たちが最近慣れ親んでいるこれらはすべてフロー型サービスですので気を付けましょう。そう、noteもどちらかというとフロー型です。インデックスを作って分類して整理することができないですからね。
では、インデックス(目次)を作り、分類が明確で、整理されている情報置き場(ストック型サービス)とはどこにあるか? それは公的機関のホームページです。ブログだと不十分でしょう。あくまでホームページ。検索機能と分類機能を、美しいユーザーインターフェースによって実現していることが望ましいのですが、ま、とにかく情報を項目ごとに網羅してあればOK。
タクさんが「Twitterに情報を置いておくとしたらどう思われますか?」とお題を投げられたときに、真っ先に思ったのが、
川の中に杭を打ってそこに情報を置いておくのは無理
ということです。フローを使って情報を出すなら、ストック場所を明示する。もうおわかりですね。
さて、以上をふまえた上で、タクさんにまた次のお題を提示します。ただし前回と同じお題です。
「新聞社からの依頼です。
投書欄にPETって何?と質問が来ました。これに400字で答えてください。あなたの実名が署名されます。全国紙の健康面に載ります。」
同じお題ですが、これに答える上で私からひとつ視点を追加することをご提案します。
新聞とは、ネット外にあるフロー型のサービスです。
ですからストック型サービスと紐付けたほうがより効果的に情報を届けられます。そのストックはウェブサイトであってもいいですし、あるいは、書籍という古典的かつ極めて重要なストック型サービスであってもかまいません。いずれにしても、フロー型だけで情報を届けるのは危ないぞ、ということだけを補助線としてご用意させていただきます。
(2019.11.20 市原→タクさん)