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山際の向こう、2秒の先に(5) 照らして照り返して、照れて照って。

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浅生鴨「はい、みなさん こんにちは~。」



浅生鴨さんはセッション中に司会をするだけではない。セッションとセッションの間もずっと出ずっぱりだ。

「キーステーション」と名付けられたソファスペースから、次の企画の説明を行う。

長いYouTube LIVE、みんながみんな最初から最後まで視聴するとは思えない。「つまみぐい」で見ている人が圧倒的に多いだろう。

だからかな。

彼はシーンごとに必ず、はじめてお目にかかりますという雰囲気で、あいさつをする。



ぼくはここまで、企画者と登壇者と視聴者の中点、みたいな気分で番組を視聴していた。視聴者はこれらをどう見ているのだろうという、単純な興味。常に押し寄せる、「このあと自分の出番があるんだ」という、メンタルの大黒柱をカタカタ揺らすような緊張と不安。そして、先ほどの「シャータニホムセッション」の強い衝撃。

メンタルが「いい意味で火だるま(?)」になっていた。

……わかりやすく言えば疲れていた。

疲労の沼に腰まではまっていた。

どっぷりと。



そこに、浅生鴨さんの「こんにちは~」。

なぜだろう、すっと疲れがとれた。

ここのところ、メカニズムはわからない。解明する気も無い。

でも、ありがとう、と思った。だから、ここで書いておく。



***



浅生鴨「SNS医療のカタチTV やさしい医療の世界。7時間の生放送です、3セッションが終わって、それでもまだ半ば、と言ったところですけれども」

浅生鴨「今日とにかく暑いですからね、水分補給。ぼくもどんどん飲んでますからね(写ってないところで)」



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(※当日のメモです)



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【患者のホンネ、医者のホンネ(1時間56分07秒~)】


シューン デケデン テッテロンテテッテロンテテッテ テッテロンテテッテロンテテッテ テッテロンテテッテロンテテッテ

(ロゴビシー! タイトルボワアアアア! ロゴシューン! )

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ぼく(うおーーーテレビだあああ!!)




中山祐次郎「SNS医療のカタチTV やさしい医療の世界 をご覧のみなさま、はじめまして。中山祐次郎と申します」

(プロフィール画面ドカーン! あしらわれたクジラアアア!!!)

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ぼく(うおーーーテレビだあああ)


ぼく「うおおおーーーーーテレビだあああああああああああああああああああああああああ」(声出た)




中山祐次郎「私は、普段は外科医をやっておりまして、手術とか、抗がん剤の治療といったことを中心に仕事をしております。」

(画面切り替わるときに左から右にロゴが出てくるやつエクスキューズミイイイイ!!!)

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ぼく「うおおお(意味不明だがここでなぜか泣く)」






そう、それはテレビだった。



もともとリアルでやるはずだった、「SNS医療のカタチTV」は、多くのプロたちの力によって、東京のスタジオを軸に京都・札幌・和歌山をつなぐオンライン生放送として生まれ変わった。

しかし。

メインゲストのひとり、矢方美紀さんは、名古屋を拠点に声優・タレントとしてご活動されている方である。

一方、彼女と対談する外科医・中山祐次郎先生は、福島県在住。

絶妙に散らばっていた。

おふたりを、どこにお招きして、どのように対談していただくか。移動。感染症対策。手配。予算。……難しい状況。

これを解決したのはまたも「鴨と愉快な仲間たち」であった。


「中山先生と矢方美紀さんのセッションは、オンライン対談での事前収録にしましょう。ただし、オンラインアプリでただ対談するだけじゃなくて、別にカメラも用意して収録もします。あとで映像とか音声とかを調整しますね。」


その結果できあがったものは、見事にテレビだった。ぼくは感動してしまった。

おまけに事前に見た映像と見比べると細部がことごとく調整されていた。すごすぎる。ぼくは敬服の波に押し流され、いつのまにか疲労の沼から抜け出ていた(※ただし今度は情念の海に浮かんでおぼれた)。


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矢方・中山セッションと、次の「カンブリアナイト」のセッションは、この日もっとも「場によるズレがない状態」で展開された。遠隔地とスタジオをつながずに、事前収録とスタジオだけで構成された番組。この2本がお昼どきに存在感を発揮したことで、SNS医療のカタチTVの視聴ストレスは激減し、バラエティ豊かで安定感のある「番組」となった。

「見ていて安心できること」が、どれだけ思考を豊かに広げていくことか。これをぼくは、肌で味わった。リアルタイムでの衝突が放散する火花とはひと味違う、静かにたゆたうような着想、連想。ゆらゆらとうごめいているたき火をじっと眺めているときのような。

火にもいろいろある。




矢方・中山対談。まず、お互いに気心が知れている関係だったということが内容の深さに直結している。

そしてぼくは対談中ずっと、人間が本来望んでいる速度でコミュニケーションすることってすごく大事なんだなあ、と感じていた。

やりとりにおける時間的なズレがないと、こんなに深いところで心をやりとりすることができるのか。

中山は矢方さんの細かい心情をほんとうに丁寧に探った。

秀逸だなと思ったのは彼の相づち、返事。

「長すぎない」。「うなずきすぎない」。「まとめすぎない」。「付け加えすぎない」。とにかく過剰ではない。


中山の振るまいが絶妙だったことで、「患者のホンネ、医者のホンネ」を見比べようとするぼくらは、

・誰が見てもズレているとわかる、だから、語られ尽くした話

だけではなく、

・丁寧にお互いの心を照らし合わせないとわからない、気づかない、でも気づいておきたい差

をじっくり探しにいくことができる。



矢方さんは外科医中山のあいづちに、自分のことばへ向かって照り返す感情を見出しているようだった。

彼がこの表情をするならこの話題でもう数秒しゃべろう、彼が首をひねるなら好都合だ、思った通りに話が進んでいる、彼とは前もこのやりとりをしたけれど、今度はもっと深いところまでいける……。


人間の脳は、リアクションを見ながらアクションを微調整していくシステムを持っている。

世界からリアルタイムで「照り返される」と、それに「反射的に」対処することができる。

照り返し。照らし合わせ。

反射。陰影。

光。炎。角度によって異なる表象。

丁寧に時間をかけてお互いを照らしてはじめてわかる、色彩の違い。

やさしさの違い。


やさしい修正



矢方「(がん告知について)『暗い部屋で、シルバーっぽいテーブルに先生がいらして、(低い声で)がんです』みたいなイメージだったんですけど、実際には明るい部屋で電気もちゃんとついてて」

中山「フフッ」
矢方「自分はお医者さんでもないですし、最初は始めて聞く薬の名前にちんぷんかんぷん……いったん聞いて、家で復習して、落ち着かせて、あらためて病院で『あのときのアレはどういうことなんですか』ってたずねたり」

中山「ああ……」
中山「病院って、ほっといても患者さんくるんで、競争がないんですよね。競争のないラーメン屋さんなんておいしいだろうか、みたいな話なんですけど……その意味では『守られている』。だからか、医療のサービスってなかなか向上しづらい……。そこでおうかがいしたいんですが、病院のサービスに対する不満とか文句とかありますか? 一個一個ぼくが言い訳していきますけど」

矢方「フフフ」
矢方「日によって、医療側の体制がかわること。夜勤だったり日勤だったり。一番さいしょに、『私担当します!』って挨拶してくださったナースさんと、次にお会いしたのはもう帰る日だった、とか」

中山「おお…マジすか」
中山「スタッフが入れ替わりすぎ問題については……しょうがないところもあって、病院って24時間体制でずーっと患者さんをみているので、交代制にならざるをえないんですよね。だから基本、お医者さんはチームで、乳腺外科なら5,6人で、全員で担当しているんですよね。こっち側の医者は全員、矢方さんの病気のこととか、手術の状態とか、ぜんっぶ把握してるんですけど……矢方さんからすると誰やねんお前、って感じですよね……」

矢方「ウフフ」

中山「とはいってもね……ほんとは最初に『これがぼくら、チームです!』と一言あいさつすればいいよね、って話でもあるんですけど」

矢方「その言葉ひとつあったら、安心するなーって思いますよー



ああーーいいテレビだなああああああ(急いでおにぎり4つ食べながら感動している)



矢方「病院に行くって、異空間……異世界……別世界なんだ、っていう距離を感じていたので」

中山「はい」

矢方「でも通院をしていくと、それって思い込みだったかなって。質問すれば答えてくれるし、日常会話も、同じ人なので、やってくれるし、先生だって人間じゃん、って」

中山「怖くて聞けない、みたいなしょーもない理由でコミュニケーションエラーになることをなんとかしたいな、ってのはずっと思ってて……」


矢方「いい具合に、壁はなくなったかなって……今日は。」


中山「ははっ……(照れる)。」




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(2020.8.31 第5話)



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