山際の向こう、2秒の先に(6) びっくりが凄すぎてモンブランになった
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矢方×中山対談が完全にテレビだったことに驚いたぼく。
しかし、人間というのは、まったくおそろしいもので、すぐに慣れる。
1時間も経つとYouTubeでテレビを見ているおどろきもだんだんなくなり、さーて、次はどんな企画だったっけなーと……
ぼく「うおおおおおCMだCMだCMだ!て、て、テレビだあああああああああああああああああ!!!!」
……おかげさまで、SNS医療のカタチTVでは多数のスポンサーにお力添えをいただいた。中でも、京都の工務店である中藏さんからは、スポンサーの集まりが悪かった序盤からしっかりとサポートをしていただき……
ぼくらはそのご恩にしっかりお答えすべく……
中藏さんからいただいたスポンサー料の大半を中藏さんのCM撮影費用にあてて、ほぼ使い果たした。
本末転倒な心意気。見事なマッチポンプ。どういうことだよ……。
いや……でも……それくらい感謝したかったんだよな……。
というわけでこの渾身のCM、めちゃくちゃ出来がいい。動画公開のあかつきにはぜひ凝視して欲しい。そうしないとぼくらがうかばれない。
資金集めに奔走したアポストロフィ(あだ名)の苦労がしのばれる。
【カンブリアナイトから見るセンサー時代のコミュニケーションの可能性(2時間58分16秒~)】
このセッションに関しても、ほかのセッションと同様、ぼくは事前にある程度の台本・進行表をもらってはいた。
ただ、少なくとも本セッションの全貌に関しては全く知らされていなかったということが、後に発覚する。
出演はカンブリアナイト主宰・新城健一。SNS医療のカタチが開設した一般社団法人(営利目的ではないが、活動のためにお金を管理するために作った法人)、医療リテラシー研究所の理事も務めていただいている。彼は医者ではなく、経営者だ。ぼくらにとっては身内でもあり、他職種の人でもあるという、おもしろい距離にいる。
その彼が、本セッションでは浅生鴨さんと一緒に、キーステーションのソファでトークを行う……そういうセッションだと、思い込んでいた。
だから、このあとの展開には、心底驚いた。
おそらくYouTubeのチャット欄にいた誰よりも、ぼくが一番驚いていたと思う。
***
(鴨、キーステーションで、視聴者からハッシュタグほかで寄せられたご意見を読む。)
浅生鴨「えーとご意見を読んでいきましょうか。まず……『これもう地上波やん』」
ぼく(わかる……)
浅生鴨「そしてこれは……おっ、さっきまで出演していた人のコメントですね。シャープさん。『出演はやさしくなかった。』フフフ」
ぼく「(すまん……)すまん……!」
YouTubeコメント欄「かもさん、タモリさんみたいだな」
ぼく(カモリさんだな)
浅生鴨「さて、このあと13時からは、少し視点を変えて」
ぼく(いったんCMでーす)
***
浅生鴨「今日ここまでですね、お医者さん4人によるトーク、宣伝広報のプロによるトーク、医者と患者のホンネトークというのを見て頂いたんですけれども」
浅生鴨「いろんなコミュニケーションがあって、……エラーもあるし、コミュニケーションの解読方法もあるんだなあと。」
浅生鴨「なんだか考える事がいっぱいで……。」
浅生鴨「ちょっと、頭がいっぱいになるなあ、という。」
ぼく(ん……このあともずっとトークセッションだよな……いろんな立場の人が出てきて、それぞれの視点からの「やさしさ」だよな……そしたらなおさら、頭がいっぱいになっていくだろうな……)(フラグ)
***
浅生鴨「さ、あらためましてみなさんこんにちは! 続いてのセッションはですね、『カンブリアナイト』というものをご紹介したいと思います。カンブリアナイトにみる、センサー時代のコミュニケーションの可能性。」
「実は今、最新の技術、いろんなテクノロジーによって、医療や人体におけるコミュニケーションのカタチを、これまでとはちがう、よりよいものに変えて行こうとする、さまざまな取り組みがはじまってるんですよね。そういうもののひとつを」
ぼく(うん、ひとつを)
浅生鴨「まずはご覧頂きたいと思います。どうぞ!」
ぼく(あっこれ、VTRに振るの……!?)(※知りませんでした)
ぼく(えっ……このセッションって対談して終わりじゃ無かったの)
チョーヒカル「こんにちは! アーティストのチョーヒカルです!」
ぼく「うわああああああ中継VTRはいったあああああああテレビだあああああああああああああああああ!!!!」(10分ぶり3度目)
ぼくはほんとうにびっくりしてしまった。このあとはもうずっと、すべてのセッションがスタジオと遠隔で行われ続るものだとばかり思っていた。
チョーヒカルさん(顔ちっちゃい)(服おしゃれ)(かわいい)(好き)は言った。
チョーヒカル「ここにくると、人間のカラダの中に入れる、と聞いたので」
ぼく「うっわおもしろそ……」(釘付け)
チョーヒカル「人の内臓の中に入っていいんですか?」
新城「はい」
ぼく(はい???!?)
(新城さんめっちゃいい笑顔でしゃべる)
チョーヒカル「ふううおおおお! ふううああああ!!」
ぼく(ううおおおお! うああああ!!)
(VRで骨盤を探検するチョーヒカルさん)
新城「血管の中に頭を入れるとトンネルみたいに見えますよ」
チョーヒカル「えっえっ!?」
ぼく(えっえっ!?)
(血管の中に頭をつっこむチョーヒカルさん)
チョーヒカル・ぼく「ほーんとだああーー!」
(なぞのシンクロ)
ボルテージががんがん上がる。
YouTubeのコメント欄は「Eテレだ」「Nスペだ」「ディスカバリーチャンネルだ」など、驚愕と絶賛の声で埋め尽くされていた。
ここまでの疲労が、全部飛ぶ。
(もちろん4時間後にはしゃべれないレベルの疲労になって返ってくる)
ここからの50分は、百聞は一見にしかず。ぜひ見て体験してほしい。ぜったいアーカイブを残す。なんとしてでも公開する。
これまでのセッションも、ぜひ動画でじっくりと振り返って頂きたいのだけれど、特にカンブリアナイトのセッションについては、絶対に「直接」みたほうがいい。
「文字おこししても伝わりきらない、映像の力」があふれたセッション。
ぼくはずっと口を開けていた。想像を超えたものを見せられた。
あるいはこの衝撃は、事前情報無しで番組をご覧になった皆さんよりも、もしかするとぼくのほうがちょっとだけ大きいのかも知れないな、と思う。
新城健一さんを身内としてゲストに呼ぶことを決めた時点で、ぼくがあらかじめ、こういうイベントになるだろうなと予想していたものがあった。
それを、鴨と愉快な仲間達が、ものすごい跳躍力で跳び越えていった。
「こうすれば、もっと伝わる」。
テレビマンたちの魅せ方。
ぼくはこれまで、パワーポイントでのプレゼンをがんばったり、講演でのしゃべり方を工夫したり、ブログ記事などでわかりやすい言葉使いを心がけたり、ときおりワクチンを2倍にしてみたりと、自分がやれることをやってきたつもりだった。
おこがましいかもしれないけれど、ぼくはぼくでがんばってきたし、その成果だってそこそこあるかな、くらいのことを考えていた。
とんでもなかった!
まだまだ!
いくらでもあった!
モニタから目が離せない。「こういうコミュニケーション・メソッドがあるんだ」ということに、心根の深いところをガクガクと揺らされる。
ぼくは当初、浅生鴨さんをはじめとするプロの人たちにお手伝いをいただくことになったとき、心から喜ぶと同時に、「イベント終了時に自分がどういう感想をもっているか」というのを、無意識に予測していた。
たぶんぼくはこんな感じで喜ぶだろうなと、なんとなく思っていた。
「ケーキ屋さんに並んでいる、見るも美しいモンブランを買ってきて、フォークを入れて、食べる。おいしいおいしい。プロの作るケーキは違うなー。」
でも、実際にイベントがはじまってみると。
「自分たちで採ってきたクリをテーブルの上に置いて、少し目を離しているすきに、それがモンブランになっていたあああ! うわあああ! ビックリしたああ。ビックリしたああ。
……ビックリをテーブルの上に置いといたらそれもモンブランになったああああ!!!(?)」
くらいの衝撃だった。
なお念の為申し述べるが、ぼくはこれまで書いてきた無数のツイート、無数のnote記事で、ここまでビックリマークを使った記憶がない。ビックリマークなんてのは語彙の敗北だと思っていた。でも、ほんとうに驚くと、自分の胸を撃ち抜いたドキン! という衝撃をほかにどう現していいのか、まじで語彙が溶けて消えていく。ぼくはこの日、ずっと、エクスクラメーションの男であった。
魔法。
いや、これはほんとうは、技術と経験に裏打ちされた匠の業だ。
わかっている。知っている。
けれども十分に発達した技術は魔法と見分けが付かない。
これはやさしい魔法なんだと思った。
***
新城「(VRで楽しむチョーヒカルさんに向かって)そうやって、自分で動く、体感するってことが、実は理解する上で大事なんですよ。」
ぼく「わかるーーーーメタ的にもわかるーーーーーーーーー」
最新技術によって医療との接点を「体感」し、五感で理解しているチョーヒカルさんを見ながら。
ぼくは、プロが作った映像によって医療コミュニケーションの新しい形を「体感」し、これを五感にしみ込ませようとしていた。
時間がとろっとろに融けていく。
(続く)
(2020.9.1 第6話)
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