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【ほししいたけファンインタビュー】料理研究家・江戸ソバリエ協会理事 林幸子さん
1)ほししいたけ、あなたの推しポイントは?
なんといっても、その旨みと食感でしょうか。
私はほししいたけを買ったら全部戻して、最終的にみりんとお酒とお醤油が1:1:1の割合になるようにして煮付けてしまいます。少し炊くのも多く炊くのも手間は一緒ですからね。ありきたりな使い方ではあるのですが、ほししいたけは価格も安くないですし、冒険するよりは、安心できて満足できる味にすることの方が多いです。
このように作っておけば、そのままでも十分美味しくいただけますし、細切りして巻き寿司に入れても、他の野菜と和えものにしても使えて便利です。つぶした豆腐と合わせて白和えにしてもおいしい。この安定したおいしさを主役にして、メニューを広げていくといった使い方をしています。
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私の場合は、汁気が無くなるまで煮付けしいたけに、すりごまと青のりをめちゃくちゃ振るんです。青のりを使うあたりが関西の人ですよね、と言われたりしますが、私はそれだけでバランスがとれる気がしています。
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脇役として使う場合は、例えば沖縄料理で豚肉を煮る時などに加えます。昆布を足すだけでも良いのですが、さらにしいたけを加えるとおいしさが引き締まってより濃厚になるんです。しいたけを加えるだけで手間をかけずに料理がおいしくなるところも嬉しいポイントですね。
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2)ほししいたけとの出会いはいつ?どんなふうに?
何を隠そう、子供の頃からしいたけが大好きなんです。しいたけこんぶの佃煮などが食卓にあると、しいたけだけ先に食べてしまって、母から「ただのこんぶの佃煮になるやんか!」とよく怒られていました。私の母は「しいたけは大人の味」と思っていたようで、「しいたけが好きやなんて、変な子やなあ」と思われていたみたいです(笑)。
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特に、京都にある有名な佃煮屋さんの小さい椎茸の京佃煮が大好きで、その味を追い求めて、今の味に行きついたような感じです。
3)林さんは普段何をしている人ですか?
アトリエ・グーという料理教室を主催しています。「こんなふうにしたら美味しくなるよ」「こうするとうまく行くよ」など、"目から鱗"のワンポイントを伝えることで料理の楽しさを知ってもらう、いわば料理の啓蒙活動ができるといいなと思っています。
昔からある定番の料理であっても、今では材料も味の好みも変わってきています。その両方を知る世代として、"今の"美味しいに変換した新しいレシピを伝えていきたいと考えています。言ってみれば「新しいおばあちゃんの味」という感じでしょうか。
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そんな活動の一環で、江戸ソバリエ協会の理事として東京の伝統野菜「江戸東京野菜」などを使ったお蕎麦メニューのアイデア出しをしています。例えば、お蕎麦をベトナム料理のフォー仕立てにして味付けにナンプラーを使ったり、小松菜を練り込んだお蕎麦をはまぐりの出汁に生クリームを加えたぶっかけに仕上げたり。お蕎麦屋さんからも「こんなアイデア、思いつかない!」と評価していただいています。そんな、他所ではなかなか味わえないお蕎麦料理を味わう会は、もう26回を数えます。
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4)みなさんにどんなふうにほししいたけを楽しんで欲しいですか
売っているほししいたけにも種類がいろいろありますから、目的に応じて使い分けてみるのはいかがでしょう。しいたけのおいしさを満喫した〜い、という時はどんこを使うことをおすすめしますが、細切りにしたい時、例えば巻き寿司に入れる時などは香信の方がおいしく出来上がります。スライスのほししいたけは(私はあまり使うことはありませんが)、戻し時間も短いし、煮物や炒め物には戻さず加えてもよいので便利です。
また、生のしいたけには当たり外れがありますが、ほししいたけはないように思います。安いものにはたまに虫食いがあったり、まっ茶色のものもあったりしますが、戻して食べて味がおかしいということはほとんどないので、安心して使える食材として活用すると良いでしょう。
戻す時間が面倒という方もいますが、そういう方には、使う時に一袋全部戻してしまって、残りを冷凍しておく方法をおすすめします。
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それから、生産者さんか問屋さんかどちらにお願いしたら良いのかわかりませんが、水で戻したほししいたけを販売することを試していただきたいと思います。「戻すのが面倒」という方の中には、「戻してあるなら使いたい」と思う方がいらっしゃると思うのです。せっかくの素晴らしい食材ですから、ぜひ皆さんに使っていただきたいですね。