【ほししいたけファンインタビュー】四川料理『飄香(ピャオシャン)』オーナーシェフ 井桁良樹さん
1)ほししいたけ、あなたの推しポイントは?
ほししいたけの魅力は、なんといってもうま味と香り、そして食感でしょう。ほししいたけを加えた煮物やスープは、香りはもちろん、うま味が違います。また、煮物にした時の凝縮感は格別です。
ほししいたけのうま味成分であるグアニル酸を、昆布などのグルタミン酸や肉や魚のイノシン酸などと合わせると飛躍的にうま味が強くなる「うま味の相乗効果」は、中国料理でもよく活用されています。
2)ほししいたけとの出会いはいつ?どんなふうに?
ほししいたけと最初に出会ったのは、料理の世界に入った時でした。中国料理のお店では、五目焼きそばや五目炒飯など様々な料理にしいたけを使います。生しいたけは旬に使うくらいで、ほとんどはほししいたけ。ですから、お店では常に戻したものを準備しています。
特に意識をせずに長年使っていたほししいたけですが、昨年(2022年)の秋にその良さを再確認しました。「日本産・原木乾しいたけをすすめる会」のイベントが飄香で開催され、ほししいたけのフルコースをお出ししたことがきっかけです。メニューを考案する中で、ほししいたけの魅力を改めて感じることができました。
第一に、ほししいたけのだしは淡いスープの旨みを引き立てることができること。第二に、しいたけそのものの旨みも強いことから麻辣のような濃いソースにも負けないこと。第三に、食感が良いため精進料理などでお肉の代わりにも使えることです。
3)井桁シェフは普段何をしている人ですか?
現在、都内4店舗(※)の四川料理のレストランを経営しています。
四川省の成都市は、ご存じ『三国志』の舞台で、劉備玄徳が蜀の都に定めた土地です。古くから繁栄したため世界中から食材が集まり、食文化が発展しました。
四川料理では「百の素材があれば百の調理法がある」と言われていて、素材本来の味を活かすのが伝統です。海から遠いことから「鮑」や「フカヒレ」のような乾燥海産物の調理方法も発達しています。高温多湿な気候のためか香辛料も豊富に使われます。「麻(山椒の痺れ)」「辣(唐辛子の辛さ)」ばかりが注目される四川料理ですが、辛くないお料理もあるんですよ。
そんな四川料理の奥深い魅力をお伝えするため、お店では化学調味料を一切使わず、厳選した本場の香辛料や自家製の発酵調味料を使ったお料理をご提供しています。
私自身は、より本格的な伝統四川料理を学ぶため、2018年に現地の「松雲門派(ソンユンモンハ)」に弟子入りし継承人と認められました。現在は、移転オープンした広尾の本店で、伝統四川料理に新しい解釈を加えたお料理を提案しています。
(※)「飄香 銀座三越店」「飄香小院 六本木ヒルズ店」
「竹韻飄香 代々木上原店」「飄香 広尾本店」
4)みなさんにどんなふうにほししいたけを楽しんで欲しいですか?
ほししいたけは、「今日使いたい!」と思ってもすぐに使えるわけではないので、冷蔵庫に水に浸けたほししいたけを常備しておくことをおすすめします。その日使わなくても2〜3日は保存できます。
昆布やお肉を使ったお料理にしいたけや戻し汁を足すだけで、相乗効果でうま味が増しますから、顆粒だしが必要なくなるかもしれません。
例えば、昆布とほししいたけを一緒に水に浸けておくだけで、美味しい出汁になりますし、鶏手羽や豚肉などと一緒に煮込んでも良いでしょう。
また、しいたけを細切りにして炒めてとろみをつけたものを春巻きの具にしたり、みじん切りにしたしいたけをしゅうまいの餡にたっぷり加えると、しいたけ本来の美味しさが際立ちますよ。