読書についての手記 2

あぁ、まただ。また同じところを繰り返し読んでる。このセンテンスを気に入ったからじゃない。頭に入ってこないからだ。

おれは集中して読書するってことがからっきしダメみたいなんだ。誰かの話し声が聞こえたらもうアウト。そっちにばっか気がいって、目の前に広がってる無限の宇宙から無意識に離脱しちまう。耳栓なんか何の役にも立たない。蟻んこが角砂糖を運んでる時の掛け声ほどのデシベルで十分なんだよ、おれの読書を中断させるにはな。なんでこの世界にはこんなに沢山のアックリーがいるんだろう。わざわざ読書中の人間に話しかけてくるやつがいるなんて、悪意を感じずにはいられないだろ、なあ。

体調と環境の合致。これが必須条件だ。最高の読書のためにはな。体調は自己管理だ。自分でなんとかするさ。じゃあ環境だよ。図書館なんて問題外の遥か彼方の外のカイパーベルトくらいに的はずれな意見だって自覚してくれよ。あそこはめちゃくちゃ騒がしいからな。第一に人が多すぎる。自宅はまだましだけどな、法人化された利己的な奴等が急に玄関をノックしないって保証があるのか。そう、ねえんだよ。

でもな、ついさっき気づいちまったんだ。最高の環境に。それは刑務所さ。よく映画に囚人が牢屋で読書してるシーンがあるだろう。あれさ。ねえおれの頭の上にタングステンでできたフィラメントなんかが発光してるはずなんだけど眩しかったらごめんよ。どうやったら刑務所に入れるんだろうな。

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